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ハコニハ  作者: 緑猫 龍
第一章
4/8

第三話 神様の娘 ニムエ回

 『三度の飯より休日』の俺にとって至福の三日間が始まる予定だった。

 なのに……。

 


 二時間前、P.M.四時半

 


「ぐはっ」

「おはよう……」

 


 お腹にすごい衝撃で何かがぶつかり起こされた。

 重い目蓋を擦りながら目を開けるが、辺りが暗くぼんやりとしか見えない。

 俺の視界には毎日見ている木目の天井ではなく、何か人の様な輪郭が見える。上の方は薄い蒼で、下の方はなにかふわふわとしている。

 


「えっ?!」

 


 俺の目はいつも通りの仕事を始めだした。

 目の前には、俺の腹の上には、女性が馬乗りになっていた。

 


「あの、すいません。どなたですか……」

 


 俺は答えを知っていた。だか、あまりにも信じられなかったので思わずそう聞いてしまった。

 


「私は……クエリ。ツキノヒカリガミ、キミと……タイヨウノキガミ、シロミの一人娘」

 


 このとき、俺の三日間は怠いものへと変わることが確定した。

 

 

「ご飯美味しい」

「そうでしょそうでしょ」

 


 クエリが来たということで母親が小躍りしながら、腕を振るった。

 まぁ、喜ぶのも仕方がないとは思うが……。ツキノヒカリガミを見たものには幸せが訪れる、なんて言い伝えがあるからな。あくまで言い伝えに過ぎないが。

 

 

 日が昇り始めた頃、俺がいつも二度寝を決め込む時間帯に、にわかに外が活気づいてきた。俺はもう朝食も食べ終わり、これから起こるであろう、災難に備えようとしていた。

 


 ピンポーン

 


 そこに悪魔の鐘。どうやら時間切れみたいだ。この時間帯のインターホンはシオンのものであることが確定している。いつもは「寝てた」とか「気づかなかった」って言って堂々と居留守を使っている。

 が、今日はそれも使えない。母親が起きているから、確実に最後の砦が開けられてしまう。

 


「おはようございまーす」

 


 やっぱりシオンだ。二階の俺の部屋まで声が聞こえてくる。

 なにやら玄関で母親と立ち話をしているらしい。内容までは聞こえないが、「本当ですか?!」とか「えっ?!」とか時折驚きの声があげているのが聞こえる。その反応だけで、母が何を話したのか大体わかる。

 


 ドタドタドタ

 


「クエリ様はどこ!」

 


 ……やっぱり。

 


「いやいや人の部屋にノックもしないで入ってきて、ってもう聞こえてないな」

 


 一家が月光神げっこうしん信者である黒崎シオンにとっては、クエリは文字どおり神なのだろう。そのクエリ様が俺のベットの上に座っている。

 


「感動のとこ申し訳ないけど、今日は何しに来たの」

「……」

「聞こえてますかー」

 


 あれっ? 返事がない。

 あっ、白目剥いてる。感動で気絶してるよ。

 


「何が幸福が訪れるだよ。早起きさせられるし、いつも通りシオンはくるし、気絶してるし。……俺は不幸にしかならないんですけど!!」

 


 俺の叫びは空しく家に響き渡った。

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