第二話 目標とするモノ 緑龍回
俺は昨日の帰りにシオンが言っていたことを思いだしつつ、一緒に学校で話していた。
「絶対ホントだって! 名前や伝わってる容姿まで同じ人が発見されたんだよ?」
「クエリ様の両親、ねぇ……」
神の箱庭論。
『ツキノヒカリガミ』と呼ばれる月光神キミの娘が自分の家族のために、そして自分の恋人のために、俺たち生き物の住んでいる世界を創ったとされる空説。この世界が出来てからずっと伝わり続けてきたおとぎ話の一つであり、最も有力な説としても有名だ。
しかも、最近月光神キミとその妻と思われる家族が発見されたそうで、場所は隣街の『ゼスト』である。場所も近いからか、この街はさらに活気に溢れている。と言っても、理由はそれだけではない。
「しかしお前、テンションが気持ち悪いな……」
「だって! あの! クエリ様のお義父様とお義母様がこの街に来るんだよ!? そりゃあアゲアゲにもなるでしょー!」
キャーッと騒ぎながらいつもよりハイテンションなシオン。ルビや漢字がおかしいのは気のせいだろうが、周りの人たちも少しウキウキしてる様だ。
何故かと言うとシオンの言った通り、明日の朝に俺たちの住んでいる街『フロッガ』に来るらしい。しかも、この世界を創ったクエリ様の親であるキミとシロミが来る記念日として、大規模な祭が開かれる。その影響で明日から三日間(金・土・日)は休みなのだ。実に素晴らしい。『三度の飯より休日』な俺としては、最高の気分だ。
「……まぁ、お陰様で明日の学校は休みだしな。ありがたいよ」
「え……そこ?」
途端にシオンが、生ゴミを見るような目でこちらを見つめてくる。因みにシオンは大のクエリ様一家ファンで、彼女の家のあちこちにクエリやキミの姿を模したぬいぐるみが置いてあったりする。
「……まぁいいわ。アンタが昔っから休日中毒なのは知ってるから」
「そうか。それなら安心だな」
「一体何がどう安心なのよ……」
軽い雑談を交わしていると、いきなりシオンがシリアスな雰囲気を醸し出して質問をしてきた。
「で、話変わるけどさぁ……アンタ、まさか本当に冒険者になるつもり?」
「…………」
「黙るってことは肯定ってことで良いのよね」
「……ああ。そうだ」
「まぁそりゃあそうよね。あなたのお父さん、冒険者だったんでしょ? てことは『パパの思いを引き継がなくちゃ!』的な使命感に燃えてるってワケ?」
無言で答える俺に対して、シオンは「ハァー……」と大きくため息をつき一呼吸置いてから、大きな声で叫んだ。
「あのねぇ! アンタがいなくなるとどうなるかわかってる!? アンタのお母さんが一人っきりで過ごす事になるんだよ!?」
「いや、でもほら、母さんも応援はしてくれているわけだし──」
いきなりの大声に戸惑ったが、その場しのぎのつもりで適当に返す。
が、しかし。
「応援もクソも無いでしょ! あの人たちはアンタが『冒険者になりたい』とか言うから仕方なく賛同してるだけ! わかる!? まぁアンタみたいな能天気を説得しても無駄でしょうけど!!!! もうアンタなんか知らない!」
言いたいだけ言って、それじゃ! と言い残し、シオンは教室を出ていってしまった。ポツンと残された俺には「え、夫婦喧嘩?」とか「うわー見るに耐えねぇ……」とか「プギャーリア充ザマァ(笑)」とか、散々な目線が送られてきた。実に悲しい。
こんな事件が起きても、結局は一緒に帰った。気まずい雰囲気が皮肉にも、夜の街灯の灯りとマッチしていた。
そんな前日を迎え、記念祭がやってくる。
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オマケ
一緒に帰ってるシオンの脳内
(うあ~……やってしまった……。帰り道一緒じゃん! うう、恥ずい……)




