採集クエストは腰に響く。その3
卯月6日申の刻ギルド前にて。
あれ?早く着きすぎたかな。
アリアさんはまだ来ていないみたいだけど。
まぁ良いか、少し待っていれば直ぐ来るよね。
・・・・・・。
「ごめーん。ミシェル待った?」
アリアさんが手を振りながら意気揚々とこちらに向かって駆けてくる。
「待った?っじゃないですよ!僕、申の刻待ち合わせって言いましたよね?今もう酉の刻なんですけど?」
「あれ?そうだっけ?まぁ良いじゃない。女の子は色々準備があるのよ。余り細かい事言ってると女の子にモテないぞ。」
「モテないのは今、関係無いじゃないですか!
はぁ・・・もういいです。それより早くクエストに行きましょう。」
僕は溜め息を1つつきながらギルド内へと入って行った。
そんな僕の後から付いてきているアリアさんが、後頭部をマジマジと見ながら
「ミシェル、朝から溜め息なんかついてると禿げるわよ?」
「誰のせいだと思ってるんですか!それに禿げませんから!」
朝からそんな他愛も無い会話しながら、採集クエスト用の依頼掲示板へと足を勧める。
「どのクエストが良いですかね?」
「そうね。これにしましょ。」
アリアさんはそう言って1枚の依頼書を手に取って僕に見せてくれた。
「薬草3束の採集ですか?」
1束10本なので計30本の薬草採集だ。
「少し多くないですか?それともこんな物なんでしょうか?普通。」
僕は採集クエストはした事が無いので、多い少ないの程度がハッキリ言って良く分かっていない。
「一人でしたら少し多いかもね?でも今回は私達二人でするんだからミシェル、あんたの採集スキル獲得の為にも丁度良いと思うわよ。それに私のスキル経験上げにもね。」
そう言ってくれるアリアさんが、少し頼もしく思える。
「わかりました。お任せします。じゃあこの依頼を受注して来ますね。」
アリアさんから依頼書を貰い採集クエスト用の受付カウンターへと向かった。
「この依頼を受注したいので、お願いします。」
「ミハイルさんおはようございます。依頼の受注ですね?はい。承りました。依頼達成お祈りしておりますね。」
この物腰が柔らかい言い方の受付嬢は討伐クエストの受付嬢ソフィーリアさんと双頭を成す人気の受付嬢【マキナ=ハンプトン】さんだ。
この国では珍しく黒髪黒目の女性で、何でも出身は東方の方らしいのだが、詳しい事は分からない。本人も余り話そうとはしないし、
ギルドの暗黙のルールで冒険者及びギルドの職員の詮索は禁止されている。そもそも冒険者は皆人知れず色々抱えている者も多い。まぁだから冒険者になるのだが。僕も含めて。
そんな話を抜きにしてもマキナさんは不思議な魅力があり、男性冒険者の人気が高い。21歳と若いのに既に大人の女性ってが感じする。誰かさんとは大違いだ。
◇◇◆◇◇◆◇◇
【採集クエスト】
【目標】薬草3束の採集。
【場所】シルフの森。
【報酬】小銀貨4枚。
【期限】卯月7日夕、巳刻まで。
【失敗条件】期限切れ。
僕は採集クエストの依頼受注を済ませアリアさんの元へ向かった。
「お待たせしました。無事に受注して来ましたよ。今度もシルフの森ですけど、この前みたいな事はごめんですよ?」
「わ、私のせいじゃないでしょ!あれは!それに終わった話をいつまでも言わない!ほらっ!
さっさと行くわよ!」
「終わったって・・・僕まだダメージ残ってるんですけど?」
僕は火傷して包帯で巻いている腕をアリアさんに見せた。
「そんなの見なくたって分かるわよ!私がしてあげたんだから。ネチネチと性格悪いわよ。ミシェル。」
「性格の悪さをアリアさんには言われたく無いですね。アリアさんも人の事言えないですからね?」
二人の不毛な会話はシルフの森に着くまで続いた。