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回復支援て前衛でしたっけ?その3

はあぁぁ。緊張したぁぁ。ギルド長室を後にし、アリアさんに引き摺られながら、僕は額についた汗を拭った。


「あのぅ。そろそろ放してもらえません?」


僕はアリアさんをチラ見してそう言うと、


「あっ!ごめんごめん。」


アリアさんは掴んでいた袖の手をぱっと放してくれた。


「ありがとうございます。」


「じゃあ用件も済んだ事だし、約束通りご飯食べに行きましょ。ミシェルの奢りで。」


アリアさんは満面の笑顔で僕に言うと今度は腕を掴みぐいっと引っ張りながら繁華街へと向かって歩きだした。


またかぁぁぁ!!!そう心の声で叫ぶ。


◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇


翌朝。いつもの様に安宿のベットの上で目を醒ますと、例の如く昨日の夜の記憶が無い。あぁまたアリアさんにやられた。僕は瞬時に理解した。2回目ともなると流石に自分の置かれている状況を理解するのに然程時間は掛からない様に思えてくる。そして・・・布団の中でモゾモゾと動く物体が。大体の予想はつくが一応確認の為そぉっと布団を捲るとそこには全く知らない男の人が気持ち良さそうに今も寝ている。


えっ!?誰!?はっ!?何で!?僕の布団の中で寝てるの?僕は咄嗟にベットから出て部屋の表札を確認する為、宿の廊下に出た。ホッ、確かに僕が借りている部屋だ。じゃあ一体あの僕の部屋のベットで寝ている人は誰なんだろう。

部屋の前でそんな事を考えていると、


「あらっ?ミシェルおはよう。そんな所に突っ立って何してるの?」


アリアさんは部屋の前に立っている僕に気付いて声をかけてきた。アリアさんにしては珍しくこんな朝早くからどうしたんだろう?


「あっ!アリアさん!おはようございます。丁度良かった。ちょっとアリアさんに聞きたい事があるんですけど。」


「どうしたの?昨日の事?」


「良く分かりましたね。それもそうなんですけど、朝起きたら僕のベットに知らない顔の男の人が寝ているんですけど・・・」


「あぁ~ってミシェル~あんた本当に昨日の夜の事覚えて無いんだね。」


部屋の前で僕とアリアさんが話していると、部屋の扉がガチャリと開いて中から先程まで寝ていた男の人が出てきた。


「ふあぁ~あぁ~。ったく朝っぱらから部屋の前でいちゃついて朝からお盛んだな。」


男の人は寝ぼけた顔をしながらボリボリと頭を掻いて大きな欠伸をしている。


「なっ!?そんな事ある訳無いでしょ!何処見てイチャついてる様に見えるわけ!?第1私がミシェルみたいな年下選ぶ訳無いでしょ!」


アリアさんは何故か頬を赤らめながら思い切り否定している。


アリアさん・・・そんなに否定しなくても・・・軽く傷付きます。


「ふ~ん。そうか。まぁ良いけどな。軽い冗談のつもりだったんだが。」


「わ、分かってるわよ!そんな事。ちょっと乗って上げただけよ!」


焦るアリアさんをしり目に男の人は淡々としていた。


「ちょっとぉ。ミシェル本当に昨日の事覚えて無いわけ?本当お酒弱いわねぇ。あんた。」


「っというか。アリアさんまたグラスを取り換えたんですね!」


「あっ!バレた?」


「あっ!バレた?じゃ無いですよ!2度目ですよ!2度目!お酒弱いの分かってるなら悪戯するの止めて下さいよ。」


「ごめんごめん。次はしないから。それよりミシェルを此処まで運んでくれたのはあの男の人よ?」


「あっ!そうだったんですか?ありがとうございます。ご迷惑お掛けしました。」


僕は男の人にお礼を述べた。


「良いって。気にするな。それより昨日は激しかったな。中々寝かせて貰えず大変だったぜ。お前の尻柔らかくて良かったぜ!」


男の人はニッと笑い爽やかな笑顔をしている。


「はっ!?えっ!?どういう事!?」


「ちょっと!!ミシェルどういう事よ!!」


アリアさんが物凄い剣幕で僕に詰め寄る。


「えぇ!?ぼ、僕にも何が何だが分からないですよ!」


アリアさんは僕の襟元を両手でギリギリと締め上げる様にして問い詰める。


「あ・・・アリアさん・・・し、締まってます・・・く、首・・・く、ぐるしいぃ・・・。」


あっ、何だろう・・・幻想的な風景が目に浮かぶなぁ・・・とても綺麗な場所だなぁ・・・それに何だが気持ちも良くなって来たなぁ・・・。


「くくくっ・・・おいおい。そこら辺で止めておいてやれ。坊主堕ちそうだぞ。それにしてもお前ら面白いな。そこまで真に受ける奴今時いないぞ?」


「えっ!?冗談!?あっ!ご、ごめん!」


ハッ!と我に還ったアリアさんは僕を締め上げてた手を放した。僕はその場でヘタリこむ。


「ゲッゲホッ・・・ゲホッ・・・。ひ、酷いですよ。いきなり僕の首締めるだなんて。危うく違う世界に旅立つ所でしたよ。(色々な意味で)」


「だからごめんてば。それよりも、ちょっとあんた!どういうつもりよ!」


アリアさんはキッと男の人を睨みつける。


「何?俺のせいか?俺は本当の事を言っただけだぜ?それを何を勘違いしたか知らないが早とちりしたのはお前だろう?」


「そ、それは・・・。」


アリアさんが言葉負けしている。


「夜激しいってのは坊主の寝相の悪さが激しかったから中々寝かせて貰えなかったんだよ。まぁ尻柔らかいってのは本当だがな。酒場で酔っ払って宿に連れて帰ってやるのに担いだからな。お陰でまだ眠いぜ。」


男の人はそう言って大きな欠伸をしている。


「ご、ごめんなさい。勘違いして。ミシェルもごめんね。」


あっ、アリアさんがしおらしくしてるの初めて見た。


「取り合えず俺は朝飯でもお前らにご馳走になってから行くわ。それでチャラって事で、な!」


男の人は僕の方を見て笑みを浮かべている。


「はぁ・・・分かりました。昨日態々宿まで連れ帰って貰いましたし、それ位でしたらご馳走しますよ。」


「お!ラッキー!じゃあ早く食堂に行こうぜ!この街にはまだ来たばかりだからさぁ。ロ銀も尽きかけてきた所で余り良い飯食べて無かったから丁度良かったぜ。はぁ~腹へった~。」


男の人はそう言うと嬉しそうに食堂の方へと向かっていった。


「何アレ。まるでたかりやみたいじゃない!」


アリアさんの怒りにまた火が点きそうだ。


「まぁまぁ。僕が送って貰ったのは事実ですし、それ位のお礼はしないと。そもそも!アリアさんが、僕のグラスに悪戯しなければこうはならなかったんですからね!」


「またそう言って根に持つ。本当は私が送ろうとしたのよ。(また一緒に寝ようと思って。)そしたらあの男が突然来て、女に運ばせるなんてもっての他だ!何て言っていきなりミシェルを担いで行っちゃったのよ。私も大丈夫ですからって言ったんだけど、あの男良いから良いからって。で、結局そんなやり取りを宿までしながら来たって訳。まさか、一緒にミシェルのベットで寝るとは思わなかったわよ!」


アリアさんはぐぐっと強く拳を握っている。


「は・はは・・。」


僕は苦笑いするしか無かった。


「おーい!お前ら早く来いよ~!」


男の人は食堂から大声で僕達を呼んでいる。


「チッ!煩いわね!言われなくて行くわよ!何なのあいつ!」


アリアさんのあの男の人に対する心象はすこぶる悪い物になっている気がする。


僕とアリアさんも食堂へと行き、3人で遅めの朝食を食べたが、その場の空気は最悪な物で終始アリアさんは無言で食べ、時折男の人を睨みつける始末である。そんな事は意に返さず男の人はガツガツと朝食を食べていた。僕はというとそんな二人の間に挟まれ食欲も湧く訳も無く

食べないならと、男の人に自分の朝食を食べられ、それを見たアリアさんがまた怒るといった具合で。もう独りにさせて下さい。と心の底からそう思うのだった。

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