回復支援て前衛でしたっけ?その1
ギルドへと帰る道中。
「アリアさん。」
「ん?なぁに?ミシェル。」
「あの・・・僕、少し考えてたんですけど今回の様に多数のモンスターを相手だと正直これからの依頼も厳しくなってくると思うんですよね・・・。
どう思います?アリアさん。」
「ん~。私的にはまだ平気だと思うんだけど?
(まだミシェルと二人で良いんだけどな・・・。)
そんなに心配なら1度ギルドマスターのマギーさんに相談してみる?」
「えっ?マギーさんですか?」
「それはそうよ。パーティーメンバーを追加するならギルドマスターの許可がいるのは当然じゃない。私達が勝手に決められる訳無いでしょ。それに、最初私達の事だってパーティーを組む様に言ったのはギルドマスターのマギーさんだったでしょ。忘れた?」
「そうでした・・・。はあぁぁぁ。マギーさんに頼むのかぁ~憂鬱だなぁ~。」
「ミシェル、マギーさん苦手だもんね。」
「そうなんですよ~。だって!ギルド【星屑】のマスターですよ!若くしてギルドマスターに就任した女傑ですよ!?僕なんかあの身体から滲み出ているオーラで身体が萎縮してしまって借りて来た猫みたいに何も話せないですよ。多分。」
「そうかなぁ?全然気さくで話易い姉御肌のお姉さんって感じじゃない?」
「それはアリアさんだからですよ!」
「ちょっとそれ!どういう意味よ!」
「特に深い意味は無いですよ。アリアさんの物怖じしない性格が羨ましいなと思って。」
「失礼ね!まるで私が場の空気が読めない痛い子みたいじゃないの!」
「えっ?違うんですか?」
「こらーッ!」
アリアさんは拳を振り上げ僕を追いかける。
「ごめんなさいぃぃ。」
僕はアリアさんに殴られまいと両手で頭を防御しながら走って逃げた。
今日は逃げてばかりだな僕。
◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇
日が傾きかける頃、僕達はギルドへと到着した。僕は鈍い痛みが残る頭頂部を右手で擦りながら、もう片方の手でギルドの扉を開けて中へと入って行った。
先ずはソフィーリアさんに討伐依頼の報告を済ませ、それからギルドマスターにメンバー追加の件をお願いしよう。
僕達は討伐受付へと行きソフィーリアさんに依頼の報告と魔石の提出をした。
「ソフィーリアさん、お願いします。」
「あっ!お二人共!お疲れ様です。討伐依頼の報告ですね。
今回はゴブリン3体の討伐と追加討伐による報告ですね。魔石は1、2・・・全部で5個ですね。
はい。確かに。ではこちらの魔石はお預かりしますね。これで討伐完了の手続きは終了です。
お疲れ様でした。後は換金窓口の方で今回の報酬をお受け取り下さいね。今回はこの間みたいに怪我だらけじゃないので安心しました。ミシェル君はその左頬の傷は大丈夫ですか?」
ソフィーリアさんはそう言って僕の左頬を手で擦ってくれた。
「だ、大丈夫です!少し矢がかすっただけですから!本当大丈夫です!」
耳が熱い。僕は自分でも分かる位、赤面しているのが分かった。それにしてもソフィーリアさんの手柔らかいなぁ。そう思っていると突然、右のお尻に激痛が走った。
「痛ッた!!!」
不意に僕の後ろにいるアリアさんの方を見ると無表情のまま僕のお尻をつねっていた。
僕のその反応に、擦っていた手を引っ込めるソフィーリアさん。
それを見て漸く僕のお尻をつねっていた手を離すアリアさん。でも顔は無表情のままだ。
何とも言えない重い空気が流れる。この重い空気を打破してくれたのはソフィーリアさんだった。
「ほ、本当ミシェル君の傷が大した事が無くてホッとしました。これからも気を付けて下さいね。お二人共。お疲れ様でした。」
「あ、ありがとうございます。これからも頑張りますね。じゃあまた。」
ソフィーリアさんは何かを感じたのか苦笑いしていた。
報告を終え討伐受付を後にした僕はというと、アリアさんに向かって
「いきなり痛いじゃないですか!」
「何が?」
「何が?って僕のお尻をつねる事ないじゃないですか!」
「だから?何?」
「だからってええッ!?兎に角謝って下さいよ!僕、何もしてないじゃないですか!?」
「嫌よ!絶対に嫌!」
「そんなぁ~理不尽だぁ~!!」
何故だか分からないけれど、アリアさんの怒りはまだ治まりそうもなかった。
僕は半ば諦めて換金窓口へと報酬を受け取りに行った。
「ゴブリン3体の討伐に追加討伐2体で全部で銀貨3枚と小銀貨6枚の報酬になります。では、こちらに受け取りの署名をお願いします。」
僕は受け取りの署名をし、報酬を受け取った。
「アリアさん!報酬貰いましたよ。」
「あっそう。」
アリアさんは不機嫌なままだ。どうしようかな。このままだと、ギルドマスターにメンバーのお願いをしようにもアリアさんは手伝ってくれそうにもない。ご飯にでも誘って機嫌直してくれないかな?そう考えた僕はアリアさんに声を掛けた。
「アリアさん!この後、ギルドマスターにメンバーの件をお願いしようと思っているんですけど、それが終わったら一緒に食事にでも行きませんか?」
「食事?ミシェルと一緒に?」
「はい。僕で良ければですけど・・・。」
無表情だったアリアさんの顔が一気に綻んだ。
「行く!もう~ミシェルったら~しょうがないわね~私と!食事に行きたいだなんて。そんなに行きたいなら一緒に行ってあげるわよ。」
「はは・・・宜しくお願いします。」
はあぁぁ・・・。疲れた・・・。でもアリアさんの機嫌が直って良かった。後はギルドマスターの所へと行こう。僕は機嫌が直ったアリアさんと一緒にギルドマスターがいる2階の部屋へと足を運んだ。




