ゴブリンの集団に襲われたら逃ましょう。その6
大通りにいるゴブリン達を討伐し、一息つくと短弓ゴブリンを討伐したアリアさんが小走りで僕の方へと駆け寄ってきた。
「ミシェルの方も片付いたみたいね。」
「えっ!?えぇ・・・。まぁ一応・・・。」
どどどうしよう・・・。内心焦る僕。
「何よぅ。随分歯切れの悪い返事するわねぇ。何かあった?」
アリアさんは怪訝そうな顔をしながら僕の方を見ている。
「実は・・・4体の内3体はこの様に倒したのですが・・・。」
「3体?1、2、3体そうね。あれ?もう1体は?どうしたのよ?まさか!?」
「スミマセンでした!1体逃げられました!」
僕はアリアさんに怒られるのを覚悟して深々と頭を下げて謝罪した。言い訳も考えたが余計にアリアさんの怒りを買いそうなので素直に白状した。
「そっかぁ。なら仕方ないわね。」
「へっ!?」
予想外の返答で思わず変な声が出ちゃった。
「怒らないんですか?多分逃げたゴブリン、仲間を呼んで来ると思いますよ?失敗したのに良いんですか?」
僕はアリアさんに恐る恐る聞くと
「何よぅ。別に怒る訳無いじゃない。討伐目標は完遂したんだし、私達の目標はゴブリン3体の討伐でしょ?後は追加討伐の分はまた別の話なんだからね。」
「あっ!そうでした。」
「ミシェルって時々抜けた所あるわよね~。ふふふ。」
「本当そうですね。あははッ。」
お互いの顔見合わせて笑っていると、路地からぞろぞろとゴブリンが大通りへと集まりだしてきた。10体以上はいるか?まだ増えそうな勢いだ。先頭はあの木の棒を持っていたゴブリンっぽい。
逃げたゴブリンが仲間を呼んで連れて来たのだ。
「アッ!アリアさんっ!どどどうしますか!?」
予想外の数で気が動転する僕に対して
「そんなの言わなくても決まってるでしょ!全力で逃げるのよ!!!じゃっ!お先~っ!」
アリアさんはそう言って僕の肩をポンっと叩き全速力で僕を置いて逃げて行った。
「そんなぁ~!!ズルいですよぉ~!!アリアさーん。置いていかないで下さいよぅ~!!」
僕は先に逃げたアリアさんを追いかける様にしてゴブリンの集団から逃走した。その様を見たあの先頭にいたゴブリンはギャアギャアと仲間に合図を出し僕の方を指差しながら指示を出している様に見えた。
ゴブリンの集団はここぞとばかりに僕達を追いかけてくる。そこからはもう大変の一言に尽きる。僕は息を切らしながら走り脇腹を痛いのを手で支えながら我慢して死に物狂いで逃げた。
僕は大通りから来た道を辿り、旧市街地区の入口までずっと走り通しだった。本気で走ったのはいつ振りだろう?と思わせる位走った。本当だったら近道でも知っていればもう少し楽に逃走出来たと思うが、如何せん初めて来た場所で全くと言って良い程土地勘も無い為、いざと言うときは来た道を辿るしか方法が思い付かなかった。地図って偉大だと本気で思う。
逃走中、唯一救いだった事は大通りにゴブリンの数が集中していたお陰か途中で遭遇する事無く逃げ仰せた事は不幸中の幸いと言った所だろうか。
だから次からは地図を書き記そう。多分、いや!絶対!と言って良いほどアリアさんはそんな事してくれないと思うから僕が地図を準備しよう!僕達の為に。寧ろ今回の様に逃げる時の為にも。
ってアリアさんは?何処だろう?僕を置いて先に逃げた筈だからいると思うんだけど・・・。
「ふぅ。何とか逃げ切れたわね。中々逃げるのも大変ね。まぁちょっとは恐怖感も味わえてゾクゾクして良かったわね!」
アリアさんは何故か僕の後ろから出てきて満足そうな顔をして僕に話かける。
「アリアさん!酷いじゃないですか!僕を置いて先に逃げるだなんて!」
「まぁまぁ。怒らない怒らない。先に逃げたのは謝るけど、軽い冗談じゃなぁい。その替わりと言っては何だけど途中からミシェルの後ろについて殿を務めてあげたんだからお互い様って事で。ね!」
「えっ!?そうだったんですか!?ごめんなさい!逃げるのに夢中で全く気付きませんでした。それでも僕を置いて逃げたのは酷いですけどね。」
「ごめんってば~ミシェル~。もう!相変わらず根に持つんだから。それよりも魔石は回収したの?」
「回収?しましたよ。アリアさんが回収した分と合わせて5個ですかね。僕らの討伐目標である3体と追加討伐で2体討伐しているので全部で5体ですね。僕達にしては上々の成果ではないでしょうかね。」
「それにしても、はぁ~。疲れたあぁぁ――――。帰ってゆっくり休みたいわね。」
アリアさんは両腕をグッと伸ばし背伸びをしている。
「そうですね。今回は僕の頬に付いた傷以外大した怪我も無く済んで良かったです。痛いですけど。後はあのゴブリンの集団がまだ追って来ないとは限らないので早い所離脱しましょう。」
「それもそうね。早く此処からおさらばしましょ。」
そう言って僕達は旧市街地区を後にした。




