ゴブリンの集団に襲われたら逃ましょう。その3
先ずはゴブリンを1体倒し、次を探そうと思っていたが、このまま死体を目立つ所に放置も出来ないので、死体の両脇を抱え目立たない様に廃墟と化している家の中まで引きずって行った。地面に擦った跡が残る血の軌跡を砂で消したが、まぁ分かるよねきっと。臭いも分かるだろうし余り意味があるとも思えないけど。
「アリアさんも少しは手伝って下さいよ!結構大変なんですから!」
「嫌よ!何で私が手伝うのよ?ミシェルがヤったんだからあんたが責任持って後始末しなさいよね。そ・れ・に!か弱い女の子の私にそんな事させる訳?」
はい!?はい出た!全くもう!この人は。相変わらずそういう事は一切しない人だな。
「はい。はい。わかりましたよ。僕が責任持って後始末させて頂きますよ。」
「分かれば宜しい。」
ニコッと笑顔を作るアリアさん。
ふぅ。まぁこんな物かな。僕はある程度後始末を終えパンパンっと手で砂を払った。
「次。行きましょうか。」
「そうね。さっきみたいな感じで、1体ずつ確実に討伐して行きましょ。」
僕達は次の討伐対象の確認をしながら旧市街で言う所の大通りへと出た瞬間。
ヒュンッと音の後に僕の左頬を何かが通り過ぎていった。
「えっ・・・!?」
思わず声が漏れた。
左頬に鋭い痛みが走り何かがつぅ――っと頬を垂れてくるのが分かった。僕は左手の指先で頬に触れ、頬に伝わる感覚の正体を確認した。
血だ。僕の血だ。何だ?何が起きた?
僕は自分の今、置かれている状況が理解出来ずに頭の中が混乱していた。
「ミシェル!そこッ!ゴブリンよッ!」
アリアさんが右斜め方向に指を差して叫んだ。
アリアさんが指し示した方向に目をやると廃墟の建物の二階の窓からゴブリンが短弓を構えていた。今まさに2射目が僕目掛けて放たれようとしている。
ヤバい!ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!
僕の膝は僕の意思とは関係無くガクガクと震え、無意識の内に死を連想してその場で動けずにいた。
そしてゴブリンから2射目が僕目掛けて放たれた。僕はその場から全く動けず立ちつくしていた。すると、アリアさんが僕の後ろの襟元を掴みグッと引っ張った。そのまま僕は膝に力が入らず腰が抜けたかの様に尻餅を突いた。
それと同時に放たれた矢は僕の頭の上を通過していった。
「何やってんの!!あんたは!!ボーッとして死にたいの!?ほらっ!逃げるわよ!!」
「ぐぇッ!」
そのままアリアさんは僕の襟元を掴んだまま凄い勢いで腰が抜けて立てない僕を引きずって路地に隠れた。
絞まってる!アリアさん!首絞まってるから!
「ミシェル!何やってんの!あのまま突っ立てたら良い的じゃないの!どうぞ射って下さいって言ってるようなものよ!」
アリアさんは掴んでいた襟を離し、僕に向かって怒鳴っている。
「ハァハァハァハァハァ・・・。」
呼吸が荒く息が苦しい・・・。上手く息が出来ない。苦しい・・・僕は胸を抑え過呼吸みたいな状態になっていた。
「しっかりしろ!ミシェル!」
そう言ってアリアさんはバンッと僕の背中を思い切り叩いた。
「ゆっくり大きく息をしなさい。そう。ゆっくり大きく。どう?落ち着いた?」
アリアさん僕の背中をさすりながら優しく声を掛けてくれる。そのお蔭か僕の呼吸も少しずつ楽になった。
「スミマセンでした。お蔭で楽になりました。ありがとうございますアリアさん。」
「本当?大丈夫?もう!心配させないでよね!
あんたに死なれたら私一人になっちゃうじゃない。そんなの嫌よ私。」
「本当ごめんなさい・・・ご心配お掛けしました。」
「もう良いわよ。其よりもこれからどうする?」
「そうですね。今、僕らが知ってる限りだとあのゴブリン1体だけですけど、まだ他にいると思います。なので、先ずは短弓を持っているあのゴブリンを先に倒します。勿論他にもいると思うので警戒しながらですけど。」
「そうね。やっといつものミシェルに戻ったわね。じゃあ反撃開始といきますか!」
「はい!今度は大丈夫です!」
僕達はゴブリン反撃作戦を開始した。




