ゴブリンの集団に襲われたら逃げましょう。その2
城塞都市オデッセイより南に行く事数刻、旧市街地区がある。この旧市街は100年程前に今ある場所に都を遷都した為遺棄された都市なのである。
遷都により残った廃墟にモンスターが住み着いた為、この旧市街はダンジョン化したのである。所謂負の遺跡と言うべき場所なのである。
廃墟と言っても街の景観はそこまで損われてはいない様だ。ただ、誰も住んではいないので閑散としている。
旧市街地区に着いた僕達は辺りを見渡す。
「へぇ~ここが旧市街なんですね~。僕初めて来ましたよ。この石畳も立派だし、色々手を加えたらまた街として機能しそうですけど、何だか少し勿体無い感じがしますね。」
「私もここに来るのは初めてだけど、周りを見渡す感じ確かに街として使えそうだけど、交通とかの利便性を考えたらやっぱり今のオデッセイの都市が良いと思うわよ。ここはそういう意味でも不便だったんじゃないかしら?」
僕達は初めて来て見た旧市街についてああだこうだと良いながら街の散策を始めた。
何軒かの家の跡地を見ている最中そいつは僕の視界に飛び込んで来た。
いた!ゴブリンだ!僕達は辺りを見渡し今の所1体のみ確認した。向こうはまだこちらに気付いていない様子だ。
ゴブリン(小鬼族)と呼ばれている様に身体は小さく、僕ら人種で言う子供の10歳前後の身長位しかなく知能もそこまで高くない。1つ厄介な事はいざ戦闘になった時に仲間を呼ばれ集団で襲って来る事だ。流石に数で来られると対処が難しく、危険も大きい。なので単体で行動していた場合早期決着が望ましいとされている。
と、ギルドのモンスター別戦闘マニュアルにはそう記されている。
「だ、そうです。アリアさん!」
「だ、そうです。じゃないわよ!あんたそんな物わざわざ持って来てるの?ちょっとそれお姉さん引くわぁ~。」
「えっ!?だって・・・無いと困りませんか?初心者冒険者用にギルドから配布されてるんだから使わないと勿体無いじゃないですか!それにほらっ!色々役立つ事が書いてあって勉強にもなりますし。」
そう言って僕はアリアさんに持っている手引き書を見せた。
「別に見せなくても良いわよ。私も成り立ての頃ギルドから配布されて持ってるから。ただ、ミシェルみたいに普段から持ち歩いてたりはしてなかったわよ。いざっ!て時に読んでる暇なんか無いでしょ?だからこういう物は持ち歩くんじゃなくて覚えておくのよ。後は経験が教えくれるから。」
「そうですか?あると便利なんだけどな・・・。」
「その内、冒険者稼業が板についてきたら私の言ってる意味がわかってくるわよ。そう言う私もまだまだだけどね。話はこの位にしてあのゴブリンをヤるわよ!」
アリアさんはそう言って鞘から長剣をスラッと抜いて構えた。二人で決めた合図でアリアさんがゴブリンの後ろへと回り込めと合図する。
僕は出した手引き書を収納袋に中に入れ、アリアさんの合図を確認した後、ゴブリンに気付かれない様足音を極力抑えてゴブリンの後ろへと回り込んだ。
それを反対側で確認したアリアさんが、ゴブリンの前へと姿を出し気合と共にゴブリンへと走りながら向かっていく。ゴブリンはアリアさんに気付き慌ててアリアさん側へと注意を向けた。その瞬間、僕はゴブリンの後ろから短剣を心臓目掛けて思い切り突き刺した!
「キイィィィィィ!!!」
心臓を突かれたゴブリンは断末魔とも取れる叫び声を上げ力無く崩れ落ちた。
「ふぅ・・・。まず1体。」
僕は片手で額の汗を拭い一息ついた。
「お疲れ様!即興で決めた合図の割には上手くいったわね!この調子で次も気を抜かずに行くわよ!それと魔石の回収も忘れずにね。」
「わかってますよ!」
相変わらず人使いが荒いなアリアさんは・・・。
僕は渋々ながらもゴブリンの魔石を回収した。
ゴブリンの魔石は深緑色の魔石なんだなぁ。
小石程度の大きさだけど。
そんな僕達はまだその時は気付いていなかった。ゴブリンの最期の叫びは断末魔等では無く仲間を呼ぶ叫びだと。




