採集クエストは腰に響く。その4
再度シルフの森にて――――――。
またこの森かぁ。まぁEランク冒険者の僕達にとっては初歩の初歩。初心者用のダンジョンにギルドから指定されているけれど、それでも昨日みたいに危険に晒される事も無いとは言い切れず油断は出来ない。
至極当たり前だと思うけれどね。
冒険とは常に危険と隣り合わせという事を忘れてはいけない。
ってガサガサと草むらを漁りながら言うことではないよね。
「アリアさーん。探すコツとかないんですか?」
「そうね~薬草は結構ポピュラーだからそこら辺に群生してると思うからコツとかは特にないかなぁ。あっ!見っけ!」
アリアさんは着々と薬草を採集している。
「あっ!ミシェル薬草を見つけても全部取ってはダメよ。最低1つは残しておかないと次からその場所に薬草が自生しなくなるからね。」
「そうなんですね。わかりました。それにしても薬草採集って割と地味な作業ですよね?あちこち汚れるし、姿勢も低くですから腰に響きますし。」
「あのね~文句ばかり言わないの。採集クエストを何だと思っていた訳?簡単に済むと思った?こういう地味な作業が重要なのよ。私達冒険者が採集する事によって市場に色々な薬草や鉱石、道具の元になる材料が卸されるんだから、例え地味な作業でも手を抜いてはいけないのよ。」
「アリアさんが物凄くまともな事を言っています。ちょっと見直しました。」
「ちょっと!何よそれ!人の事何だと思っているのよ!それと軽く私の事、馬鹿にしてない?そんな事言ってないでちゃっちゃっと黙って手を動かしなさい。」
「馬鹿になんかしてないですよ。はい。わかりました。真面目に採集しますね。」
「分かれば宜しい。」
っと返事をしたものの中々見つからない物だ。
・・・・・・。
日が高くなる頃、漸く僕は幾つか薬草を採集する事が出来た。採集って難しいんだなぁ。と沁々と思いながら続けていると、ちらほらと薄い光を放っている箇所が目に付いた。
「アリアさん!何か光っている所があるんですけど?これって一体?」
僕はアリアさんに質問した。
「あらっ随分早かったわね。それがスキルよ。
光っている所を探してみて。其処に薬草が生えている筈よ。」
目を凝らして見るとやっぱり薄く光っている。
アリアさんに言われた通り光を放っている箇所を探してみると・・・あっ!あった!薬草だ!しかも群生している。
僕は群生している薬草を1つ2つ残して後は採集した。これで今ある分と合わせて全部で2束にはなる筈。アリアさんの分と合わせれば有に目標の3束は越えると思うから、残りは僕達の分として取っておけば良いよね。
それにしてもこれがスキルかぁ。もっと早く採集クエストをやってれば良かったと思う。
アリアさんのスキルは今どの位なんだろうか。
「アリアさん、今採集した分で2束になったんですけど、アリアさんの方はどうですか?」
「私?私はそうね~薬草は・・・3束でしょ。それとは別に痺れ草が1束、毒だ実が1束かな。ノルマは早々に達成したから自分のスキル経験上げに他の種類を採集してたわ。」
「凄いですね!因みに今、アリアさんの採集スキルってどの位何ですか?」
「私の今のスキル経験だと辺りを目で凝らして探すと何処に何があるのと、その種類が分かるかな。ミシェルはスキルが発動したばかりだから辺りがただ漠然と光ってる位でしょ?」
「はい。そうですね。目を凝らすと辺りが光ってるのが分かります。」
「そう。それが採集スキルレベル1って事ね。私は採集スキルレベル2になったから場所と種類が分かる様になったかな。さてと、ノルマも達成した事だし、ミシェルのスキル発動と私のスキル経験も上がったから帰りましょうか。」
そう言ってアリアさんは衣服の汚れを手で払いのけ軽く伸びをした。
「そうですね。僕もこれからは採集クエストも頑張ってスキル経験を上げますね!折角発動したんですから!ただ・・・余りやり過ぎると腰に響きますから程々に頑張りますね。」
僕も汚れを手で払いのけ腰の辺りを擦りながら、背伸びをした。
それにしても今日は全くと言って良い程モンスターに遭遇しなかったな。同じ森で散策してるのにこんな事もあるんだな。毎回遭遇しても困るけど。
「じゃあ帰りましょうか!」
「はい!」
僕達二人は土臭い香りを漂わせながらギルドへと依頼達成の報告しに行った。
余談だが、他の冒険者達から土臭いと嫌がられたのは外でもない。次に報告する時は水浴びをしてから行こうと心に誓う二人であった。




