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朝倉さんとその他大勢

不意に朝倉さん。

作者: 辛島わさび

朝倉さんのキャラを私が把握したいがために書いた。主人公はだいたい私なのでしばらくは適当。

ゆるゆると書いていく。

 某牛丼店へ昼食を食べに行った時のことだ。

 小銭ばかりの財布から百円玉3枚を券売機に入れて並盛りのボタンを押す。店員が昼時にもかかわらず二人で切り盛りしていた。

 カウンター席に座るとすぐに店員が券を切りに来る。冬季だけ提供される温かいお茶が冷えた空気を切ってきた体に染みる。コップを机に置いたところで先程まで隣に座っていたおじさんが席を立った。入れ替わりに見知った顔が座る。

「やぁ、相田くん。君もお昼かい」

寒くないのだろうかと心配になるくらい短いスカートを穿いた朝倉さんが僕の左に座っていた。朝倉さんはその長い黒髪とスラッとしたスタイル、理知的な顔からしっかりしたイメージを持たれる。しかし、朝倉さんは自分のイメージをさして気にしない。

「牛丼、特盛りですね」

 店員さんが朝倉さんの注文を取りに来る。朝倉さんは店員さんの確認に応じることなく僕の方を満足気な顔で見ている。

「朝倉さん、どうしてここにいるんですか」

 無駄だと思いながらも喋らないわけにもいかないので答えを期待せずに尋ねる。

「どうして? 不思議なことを訊くんだね、君は。牛丼が食べたくなったから牛丼店にきたんじゃないか。何か他に理由があると思うかい?」

 朝倉さんは本当に分からないというふうな顔でこちらを見つめてくる。僕の頼んだ並盛りが来た。僕はタレを掛けて朝倉さんを待つ。

「あら、相田くん。待ってくれるなんて優しいのね。別に私は先輩でもなんでもないから先に食べてもらっても構わないのに。お先にどうぞ」

「いえ、いいですよ。朝倉さんの牛丼が届いてから食べても僕のほうが早く食べ終わるでしょうし」

 僕は朝倉さんとの会話を少しでも長くしたかった。朝倉さんとは廊下で挨拶をするか、講義でたまたま隣に座るときぐらいでしか会話をしないため、僕にとっては貴重な会話の機会だ。みすみす逃す手はない。

「朝倉さんはよくここでご飯を食べるんですか?」

 僕の方とは言うと普段は食堂で昼食をとるし、朝晩は自炊をしているためこうやって外で食事をすることは稀だった。だが、こうやって朝倉さんと逢えるのであればたまには外食もいいかもしれない。

「そうだね、今日はたまたまだよ。本当にたまたまお昼に牛丼が食べたくなった。それだけだよ」

 僕は少し残念にも思ったが、ほんとうに今日はお互いたまたま出会えたというのはどこか運命的なものではないだろうかと思ってしまったりもした。

 朝倉さんの頼んでいた特盛が届く。僕の頼んだものより圧倒的に質量をもった器が朝倉さんの前に置かれる。

「流石に特盛は大きいですね。大丈夫ですか?」

 僕は朝倉さん細い体に入るか、本気で心配になってしまって思わず尋ねてしまった。

「いや、実は朝食を食べていなくてね。このくらいの量の方が腹も満たされるだろう」

 言いながら朝倉さんは目の前の特盛りの牛丼に更に大量の紅しょうがを投下していく。ほとんど牛肉が見えなくなったどんぶりに朝倉さんは箸を差し込み、ほんの少量だけをすくい取って口へ運ぶ。朝倉さんの注文が来るまで待っていたのは正解だったようだ。僕もゆっくり咀嚼しながら牛丼をお腹の中へ入れ始めた。


 朝倉さんが食べ終わる頃には僕は牛丼を食べ終え、温かいお茶を三杯飲み干していた。

「流石にちょっと多かったね。でも、たまにはこういうところで食べる牛丼も美味しいね」

 ちょっとじゃないだろう、と内心ツッコミを入れつつ僕は朝倉さんと何を話すか待っている間に考えておけば良かったと後悔する。

「相田くん。都合が悪かったら無理しなくてもいいんだがこの後、食後の運動に二人でボウリングなんてどうかしら」

 本当に突然だ。幸運にも僕はこの後本屋に行くくらいの予定しか無い。それに、後日に回しても一切問題ないくらい緊急性がない要件だった。今、緊急性、重要度ともに高いのは朝倉さんとのボウリングデートの方である。

「え、良いんですか? 朝倉さん彼氏がいるじゃないですか」

 そう、朝倉さんには社会人の彼氏がいるのだ。朝倉さんが言うにはしっかりした人でまだ若いのに会社でも頼りにされているらしい。彼氏の話をする朝倉さんは、いつも僕をからかう時に見せる顔とは違っていて、僕はみっともなく妬いてしまった。

「いいんだよ。別にこれからホテルに行くわけじゃないだろう?」

 まただ。僕ははっきり言って朝倉さんの僕のことを誘うような発言が嫌いだ。会うたびにまた朝倉さんに焦がれる気持ちは強くなる。朝倉さんを想う時間は長くなる。

 そんな僕の気持ちを知らない朝倉さんは僕に笑いかけてくれる。

「朝倉さん。ボウリングはいいですけど負けたら罰ゲームですからね」

 僕はむかつきにも似た気持ちを朝倉さんに対する挑戦で晴らすことにした。体を動かせばこの晴れぬ気持ちにも少しは光が差すだろうか。

「ふふん。良いだろう、私が勝ったら夕食にも付き合ってもらおう」

 朝倉さんは自信満々という表情で笑い、店を後にする。

 僕も荷物を持ち、店員にごちそうさまと一言告げてから彼女の後を追った。

 空を見上げると、どうもこれから一雨来そうな重い雲が空を覆っていた。。


朝倉さん大食いなんですね。女の子がご飯食べてる時に髪を耳に掛ける仕草がたまらなく好きです。

あとは、頑張れ相田くん。

次は三人で会話劇やるかな。

やれるかな。練習だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公、めっちゃ朝倉さんにからかわれていますよね? ふたりの攻防戦?らしき会話が面白くて好きです。 微妙な関係の中で、楽しくやっている二人が羨ましい。 続編を書きそうなあとがきだったので、次…
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