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79. 横山 英恵

 先日、新年を迎えたばかりだと思っていたのに、もう1月も最終週だ。

 2月に入ればスキー合宿もある。それが終われば、年度末の試験があって、卒業式。

 3学期はあっという間。




 現在、HRの時間。

 スキー合宿の大まかなスケジュールの説明と、スキースクールのグループ分けの説明が行われ、当日着用するゼッケンが配布された。


 葵、ノリちゃん、太一は赤いゼッケン。

 私はオレンジのゼッケン。


 うちのクラスは、担任が体育教師という事もあり、スキー合宿には全員が参加する。

 これは、とても珍しい事らしい。


 基本は全員参加が望ましいとされてはいるが、参加費が結構高いので、強制ではないし、スキー自体が怪我の多いスポーツなので、実質は任意参加の行事なのだ。


 クラスのほとんどが、グリーンかブルーのゼッケン。

 スキースクールのグループ分けは、自己申告ではあるが、スキーの腕前で分けられている。


 赤いゼッケンがグループA。

 パラレルターンが出来て、上級者コースも滑れる人。

 太一は、ご両親の趣味で子供の時からシーズンに数回スキー場に行っているみたいだし、葵もそう。

 ノリちゃんも、おばあちゃん家がスキー場の近くらしい。

 3人のスキーとかボードの話は難しくてついていけなかった。


 グループBは、ステムターンが出来る人やパラレルターンが出来るけれど、自信がない人。オレンジのゼッケンだ。

 中等部でも、スキー合宿はあったので、ある程度の運動神経があって、真面目にやっていれば習得出来たはず。

 私と、真美ちゃん、田中くんと男子数名がこのグループ。


 グループCは、プルークボーゲンが出来る人。黄色のゼッケン。中等部も青藍だった子が多い。


 グループDは青いゼッケン。スキーを1度でもやったことのある人がここ。スキーはないけど、スノボはした事あるって人もここ。


 グループEはスキーもスノボも未経験の人。

 意外に多い。


 だいたい女子は、仲良い子同士相談して、実力と関係無く希望グループを申告するケースが毎年多いらしい。

 滑れる子が、滑れない子に合わせて申告する分には大きな問題はないけど、その逆だと悲惨だ。

 まともなレッスンが行えず、グループ全員に迷惑をかける事になるのだから。

 中等部の時、実際に経験しているので、その大変さはよく知っている。

 何をするにしても遅くて寒い中皆を待たせる羽目になるのだ。ただでさえ、うまく滑れない、リフトに乗るのにも一苦労で辛いのに、寒さで苛々した皆に冷たい視線を向けられて、直接だったり間接的に文句を言われ、その子は泣き出してしまい、その後のフォローも大変だった…なんて太一の話を聞きながら思い出してしまった。



 スキースクールについての話が終わると、宿の部屋分けになった。

 配られたしおりによると、うちのクラスは1番大きいホテルらしい。

 人数が多いので、クラスによって宿泊先が違い、当たり外れがあるとかないとか…。それも、何をもって「当たり」とするかに個人差があるので、なんとも言えないけれど、私としては「当たり」な気がする。

 ゲレンデから近いし、部屋にお風呂もついている。部屋についてるから大浴場は使っちゃいけないらしいけど…。うちの生徒で溢れかえっては、一般の宿泊客に迷惑がかかるからという理由らしい。

 同じホテルに泊まるのは、2年生の全てのクラスとうちのクラスか…。これって絶対、充先輩の仕事だよね。


 部屋分けは基本4人一組。

 4人のうち、役員との連絡係も決める。決まったところから、役員である太一に申告。

 自前の板やブーツを持ち込む場合は、宅急便で事前にホテルに送ることが出来るので、そうする人も同時に申告するよう太一が説明する。


 確か、葵も、ノリちゃんも自分の使うって言ってたっけ。

 ふと、ノリちゃんを見ると、無表情で、ただ一点を見つめている。


「ちょっと、ノリちゃん?太一の話聞いてた?」

「……。」

「ノリちゃん、どうしたの?やっぱ変だよ?」

「え!?あ、ゴメン。聞いてなかった。」


 私は太一が先程説明したことをノリちゃんに説明した。

 それにしても…最近、ノリちゃんの様子が変だ。

 少し前は、葵が充先輩とギクシャクしていて、2人が仲直りした途端こうだ。


「ハナちゃん、ノリちゃん、真美ちゃんと私で一緒の部屋で良いよね?」

「じゃあ、私、連絡係するね。」

「ありがとう!よろしくね。」

「ノリちゃんと葵、スキー送るんだよね?ついでだから太一に伝えてくるよ。真美ちゃんはレンタルだよね?」

「うん、ありがとう。ハナちゃん、よろしく!」

「…………」

「そう、レンタルだよ。」


 ノリちゃんは会話に入ってこない。どうしたのだろう?






 ***


 その日、ノリちゃんは授業が終わるとあっという間に部活に行ってしまった。


「葵、最近ノリちゃん変だよね?」

「ハナちゃんもそう思う?」

「何か聞いてない?」

「心当たりが無いわけでは無いんだけど…よくわからないんだよね。ノリちゃん話してくれないし。だからさ…そっとしておいた方がいいかな…って。」


 心当たり…という言葉が気になったけれど、葵も知らないらしい。

 葵が何か言いかけた時、やってきたのは春樹くんだった。


「葵ー?ノリちゃんってもう帰っちゃった?」

「ハル?ノリちゃんなら部活に行っちゃったよ?すごい勢いで…。なんか約束でもしてた?」

「いや…そういう訳じゃないんだけど…。」


 なんだかおかしい。もしかして、ノリちゃんの様子がおかしいのも彼が関係しているのだろうか?


「葵ちゃーん!帰ろー?」


 そこにやってきたのは充先輩だった。


「あれ?春樹じゃん?どうした?そんな微妙な顔して。……もしかして、ノリちゃんに振られちゃった?」

「充、煩い。」

「もしかして…図星?」


 あっけらかんとそう尋ねる充先輩に、葵と春樹くんがため息を吐く。

 流石双子、息がぴったりだ。

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