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63. 早瀬 葵

「葵ちゃん、毎年恒例のアレいってみようか?」

「え?パパ今年もするの?」

「アレ聞いとかないと、正月が来たって感じしないもんなぁ。」

「おじさんまで…。」

「毎年1月2日の夜のお楽しみなんだから、さぁ、葵ちゃん…ここに座って…。」


 毎年、大晦日は中沢家で過ごし、元日は父方の祖母の家を訪れ、1月2日の夜は中沢家で再び酒盛りをするのが昔から定番のお正月の過ごし方。

 そして、いつの頃からか、1月2日の夜の酒盛りで、私がネタにされる恒例行事がある。


「さぁ、葵ちゃん、今彼氏とかいるのかな?」


 私に彼氏がいるのか?から始まって、好きな男はいるのか、この場にいる男なら誰がタイプか?なんて事を言わされるのだ。

 因みに、去年までの4年間は1月2日の夜にこの為だけに電話がかかってきていたりする。

 こちらとしてはいい迷惑だ。


 彼氏はいない、父はそんな答えを間違いなく期待しているし、それに満足すると単に私の男の趣味の傾向を聞き出したいのだという。兄弟とはいえ、颯ちゃんとハル、遼ちゃん、慈朗ちゃん、みっくんはタイプが違うので、参考になるんだと父と中沢のおじさんは言う。

 くだらなさすぎるが、言わないと色々面倒なので毎年渋々答えている。


さて、今年はどうしたものか?

今までは本当に彼氏なんていなかったし、好きな人も遼ちゃんだったし、この場にいる5人(父とおじさんは数年前から除外)の中で誰がタイプかは適当に答えとけば良かった。


美津子さんに口止めされている以上、言うわけにはいかないし、されていなくても、この2人に言ったら何かと面倒だ。間違いなくみっくんが被害を被るし、パパが激しく拗ねるに違いない。


助けを求めて美津子さんを見るが苦笑い。

みっくんも目が泳いでいる。




「彼氏…いると思う?」


仕方ないので賭けに出る。これで、いるわけないよね〜ってなったら万々歳だ。


「そろそろ出来てもおかしくない年だろう?高校生だし、青春真っ只中じゃないか?」


おじさん!空気読んでください!ここは「まだいないの?」とか「いるわけないよね?」って言うとこですよ?


「いやいや…皆が皆彼氏とか彼女がいる訳じゃないから…。」

「でも、葵ちゃん可愛いからモテるだろう?なんて言ったってミス青藍だからな!」


困った…おじさんの発言にパパの顔がだんだん険しくなっていく。


「慈朗や充も一緒に住んでる時点で、彼氏なんて作れるわけないだろう?」


颯ちゃんが助け船を出してくれた。


「それに、俺が許さねーよ。ミスコンの時だって俺や充が一緒だったから牽制になってる筈だし、その辺の奴に葵を口説く隙なんて与えねぇよ?充だって番犬みたいな役割してるしな。だから親父、安心しろ。」

「そうだな、颯太がいたら安心だな。葵ちゃんを悪い虫から守ってくれよ?充も頼んだぞ?」


颯ちゃんの言葉に父は安心したらしい。あっという間に上機嫌だ。


「ちなみに、この中だったら誰と1番付き合いたい?もちろん、颯太と春樹は血の繋がりがなかったと仮定して、だ。」


「1番は颯ちゃん。2番はみっくん。3番はハル。最下位は慈朗ちゃんと遼ちゃん。」


本当はダントツでみっくんが1番。でも、パパ達の手前、正直に言うのは躊躇われたから2番にしてみた。


「葵、こないだの事根に持ってる?」

「葵、俺も今日の事根に持ってるだろ?」

「遼ちゃんも慈朗ちゃんも、自分が1番じゃ無かったからってそう言うの辞めてくれない?」


 もちろん、遼ちゃんにこの前絡まれた事も、今日慈朗ちゃんにからかわれた事も影響している。2人とも、それを世間一般ではセクハラと言うのだよ?そんなセクハラする人達の評価が上がるわけないのです。


 颯ちゃんは嬉しそう。ニヤニヤしながらみっくんに絡んでいる。みっくんは颯ちゃんが1位だったのがやっぱり面白く無いらしい。膨れっ面で拗ねている。そんな姿も可愛い。


 慈朗ちゃん推進派のパパ達は残念そう。




「葵ちゃん。なんで俺が1番じゃないのー?」


 やっぱりきた。不貞腐れみっくん。これも何気に毎年恒例。

 洗い物をしていると後ろから抱きつかれる。


「そんな本当の事パパ達に言えるわけないでしょ?」

「じゃあ俺が1番?」


恥ずかしいけれど黙って頷く。

すると抱きついた手が強くなっていく。


「葵ちゃん大好きー!」

「みっくん、こんな事してたらパパに怒られるよ?」

「いつもだからいいもん…それに俺が一方的にこうして葵ちゃんが流してる分にはおじさん絶対俺たちが付き合ってるって気付かないよ?」


 確かにみっくんの言う通り。

 それに、大分飲んでいるパパ。死角になっているここならばこうしている事すら気付かないかもしれない。

 慈朗ちゃんも部屋で勉強しているし、遼ちゃんは友人に呼び出されて出かけたし、ハルはこたつで寝ている。

 颯ちゃんは私の隣で片付けを手伝って、みっくんの事を呆れ顔で見ている。


「建前だったとはいえ、充が俺を越えられないのはそういう所だな。だから慈朗にも見られるんだよ…。」

「!??」

「………。」

 昼間の出来事は颯ちゃんに報告済みだったようだ…。

 恐るべし、慈朗ちゃん。


 私はみっくんを引きはがし、真っ赤な顔で黙々と片付けをするのだった。

こんなお父さん…嫌だ(笑)

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