61. 山田 翔太
「本当に山ちゃん?整形でもした?」
「みっくんまでそれ言う?山ちゃんカッコ良くなったよね?」
「まぁ俺の方がカッコ良いけどね?葵ちゃん…他の男カッコ良いとか言わないで?俺、ヤキモチ妬いちゃうよ?」
そう言って葵の顔を覗き込み、葵の腕を自分の腕に絡ませたミツくん。
一瞬、意味がわからず戸惑う俺とサノケンと郁美だったが、ある事に気付いた郁美がミツくんに尋ねる。
「もしかして、ミスター青藍ってミツくん?」
「そうだけど?で、葵ちゃんがミス青藍なんだよねー?」
嬉しそうに葵の顔を見つめ、葵も恥ずかしそうに頷く。
「じゃあ、この前言っていたケンカ中の微妙な関係の人って…ミツくんだったんだ…。仲直り出来て良かったな、葵。」
俺は何とか頑張って言葉にする。
葵の友人の話ではどんな最低な男だろうと思っていたのだが、それがまさかかつての恋敵で、友人だったとは思いもよらなかった。
ミツくん相手では、俺の幼馴染みとしてのアドバンテージなんて全く意味を成さない。
性格だって、よく知っている。思い込んだら突っ走るところもあるが、明るくて、優しくて、笑顔の似合うムードメーカー。いい奴だ。
「葵ちゃんと俺、昨日から付き合ってんの。山ちゃん、葵に手出すなよ?」
「ちょっとみっくん、山ちゃんと話してただけじゃん?そういうことばかり言わないの。」
笑いながらミツくんをたしなめる葵。先日見せていた苦しそうな表情が嘘のように、幸せそうな笑顔で彼を見つめている。
「それに、山ちゃんモテるらしいからさ、私なんて相手にされないよ。」
「葵ちゃん、自分が可愛いってもう少し自覚した方が良いと思うよ?」
「はいはい。もう、みっくんは心配性なんだから…。」
2人の会話が辛い。俺の気持ちは葵には届くことはなさそうだ。
「今でも葵が好きなのは山ちゃんだけじゃなかったんだな…。」
サノケンが呟いた。
結局、葵、ミツくん、颯太くんの3人と、俺、ハル、サノケン、郁美の4人の2グループに自然と分かれて歩いている。
俺たちの前を仲睦まじく歩く葵とミツくん。颯太くんが時々ミツくんに突っ込みを入れ、それを笑っている葵。
「葵の友達にさぁ、顔だけは良いけど中身はポンコツで、彼氏ヅラしてるくせに葵のことちゃんと考えてないただのアホで、いっぺん死ねばいいとか、さっさと見限れって言われてたのがまさかミツくんだとは思わなかったよね。」
「しかも女絡みで揉めてたんだろ?」
郁美とサノケンはストレート過ぎる。
ハルもタジタジだ。
「ノリちゃんは充に厳しいから…まぁ、あながち間違ってないよ、充は実際残念なところもなきにしもあらずだし…。女絡み…確かにそうとも言えるけど、浮気とかじゃないから…充の事好きな女がまぁ色々やってくれて…気付かない充も悪いっちゃ悪いけど。」
ハルは俺に気を使っているのか、歯切れが悪い。苦笑いしながら説明してくれた。
「あれじゃあ山ちゃんに見込みないよね。ミツくんだけじゃなくて、葵もミツくん大好き!って感じだもんねぇ…。」
「てっきり、ミスターは浮気者の最低男だと思ってたからなぁ…。ミツくん相手じゃ山ちゃんに勝ち目ないよな…。顔も良いし、性格も悪くないし…何しろ年季が違うしな…。」
「もう10年以上だからな…マジですげぇよ…。山ちゃん、諦めろ…。」
「山ちゃん…煽ってマジで悪かった…。」
「本当にごめんね…。」
「謝るなって。葵が好きなのがミツくんで良かったって。ミツくんには俺、とても敵わないし、葵のあんな顔見れただけで十分だよ。そもそも俺はデブメガネだしな。」
俺は明るく笑ったつもり。自虐ネタは俺の十八番だ。
でも、ミツくんの隣で幸せそうな笑顔を浮かべる葵を見るのはやっぱり苦しい。胸が抉られるようだった。
「山ちゃん、無理すんなよ。」
「私も今度友達紹介するからさ。」
「まぁ、新年だし?気持ちも新たに行こうぜ?」
遠くで除夜の鐘が鳴り響く。
108の煩悩と共に、葵への気持ちも一緒に祓ってしまえたら良いのに。
俺のかつての初恋は年を跨ぐことなく終わりを告げたのだった。




