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55. 桜井 紀子

「ふーん。高梨家と中沢家、本当に隣なんだね。」

「うん。小学校から帰ると、うちじゃなくてそっちにただいまって帰ってたし、ご飯もいつもそっちで食べてた。」

「今、この家にはお父さんが1人で住んでるの?」

「多分そうだと思う…彼女がいるとか聞かないし。いてもここには連れて来てない気がする。」


 昨日、春樹くんから連絡をもらって、予定がなければ葵に会いに行って元気付けて欲しいと言われた。


 ハナちゃんと一緒に葵の実家の最寄り駅に行くと笑顔の葵が待っていた。

 葵は私たちが思っていたよりも元気そうで、私もハナちゃんも安心した。

 途中、大きめのスーパーマーケットに寄り、そのフードコートで軽く昼食を取って、葵の友人と会った。どうやら昨日、彼らに再会してかなり気が紛れたようだ。

 優しそうな好青年風の山ちゃんと、お調子者でノリが良いサノケン、そしてサノケンと付き合っているという小柄で明るいいくちゃん。

 山ちゃんはおそらく葵の事が好きだったとかそんな感じ。もしかしたら今も好きなのかも。




 葵に案内されて家に入る。男の人の一人暮らしとは思えない位きちんと片付けられて、掃除の行き届いた家だった。葵によると、業者にハウスクリーニングを頼んだ後だそうで、普段は家の掃除と洗濯を家政婦さんに頼んでいるらしい。葵は家政婦さんの存在を知らなかったらしく、今朝、知らない人が家に来て驚いたと笑いながら話してくれた。


 リビングに通され、彼女の父が女の人を家に連れて来ていないだろうと言った理由がわかった。

 リビングの壁の一面が子どもたちの写真で飾られていた。3分の2以上が葵。

 産まれたばかりの頃の写真から、割と最近の写真まである。

「これって…学祭の時のだよね?」

 ハナちゃんがびっくりしている。そこにはドレス姿の葵の写真。引き伸ばされ額に入った状態で飾られている。

「それ…私もびっくりを通り越して引いた。颯ちゃんがメールで送った写真で作っちゃうんだよ?うちのパパ。おかしいよね…。」

 春樹くんに、父親が葵を溺愛している話を聞いていたが、まさかここまでだとは思わなかった。




 葵がお茶を淹れてくれて、私とハナちゃんが買ってきたケーキを食べる。

「ハナちゃん、クリスマス早坂くんと過ごしたの?」

 意外にも葵がハナちゃんに聞いた。

「うん…でもお互い部活だったから、終わってから一緒に買い物して、イルミネーション見て…って感じかな。」


 葵に何があったのか詳しくは知らないものの、クリスマスに何かトラブルがあったであろうことについては気付いているハナちゃんが気まずそうに答える。


「もしかして、それ…早坂くんからのプレゼント?ペアリング?」


 そんなハナちゃんとは対照的に、明るくニコニコと尋ねる葵。


「え…うん。クリスマス前に一緒に選んで、イブに一緒に取りに行ったの。」


 このリア充め。羨ましいぞ。


「良いなぁ…私もそういう風にすれば良かったよ。」


 ここで自虐ネタ…葵、笑えないからやめてくれ。


「ノリちゃんは何してたの?」


 困ったであろうハナちゃんが私に話をふる。


「部活でクリスマスコンサート。会場はカップルだらけで軽く苛立ちを覚えたよ。そのあと、顧問が部員にケーキおごってくれたから良いけど。」


 それはそれで楽しかったから良いんだけどね、どうせ独り身だし…と付け足して笑う。自虐ネタには自虐ネタで返す。


「そうなんだ。私は、みっくんバイトだったから、家中の掃除して、25日に颯ちゃんとデートしたよ。そこで見たくないもの見ちゃって、勢いで家を出てここにいるの。」


 聞いてもいないのに、葵は話始めた。


「ごめんね。こんな話して。ノリちゃんは知ってるんだよね。一応不幸がうつらない程度にハナちゃんにも言っておこうと思って。」


 葵は無理して笑っている様だ。


「ノリちゃん、みっくんに会ったんだよね。何か言ってた?それにしても、ノリちゃんとハルと友晴先輩って珍しく組み合わせだよね。」

「焼肉同好会。偶然会って結成したの。友晴先輩がノリで充先輩呼んで焼肉奢ってもらった。例のブツは焼肉に化けてなくなったから。」


 葵に一応報告。一部はフィクション。友晴先輩とは偶然だけど、春樹くんとは偶然じゃない。葵は笑っていた。


「有効利用してくれてありがと。見たくなかったから助かるよ。…みっくん元気?」

「不貞腐れてて、凹んで項垂れてた。友晴先輩、例のやりとり全部聞いてたらしいよ。それで、全部話して、事実を知って撃沈。さらに私たちにぼろっカスに言われて、その後は知らない。」


 葵の表情が曇る。しかし、またすぐに笑顔を作り、口を開く。


「そっか…じゃあ多少は私の気持ち考えてくれたかな?」


 葵はこんなに充先輩が好きなのに…自分の方が好きな自信があるとかであんなことするなんて、女の嫉妬って本当に怖い。


「考えてもらわない困るでしょ?さっきも言ったけど、それでもわからないなら、見限るべき。葵が辛い思いするだけ。今回の件で友晴先輩見直した。あの人、意外と葵と合うと思うよ。葵が大好きな颯ちゃんにタイプ近いし。クセは随分強いけど…。」


 友晴先輩が葵の事をどう思っているのかハッキリ聞いたことは無いが、おそらく何らかの形で好意は抱いているはずだ。そしてあの人なら葵がその気にさえなれば、付き合うとか余裕だろう。…出来たら葵は充先輩と上手くいって欲しい。いや、充先輩と付き合うべきだと思う…でも充先輩にはもっとちゃんと葵を見て欲しい。そうじゃないと私と同じになってしまう気がする。充先輩を見ていると、なんだか昔の自分を見ているようだから…それじゃあダメなんだって事、気付いて欲しい。


「私…実はあの人苦手なんだよね…。颯ちゃんとは全然違うよ?」


 案の定葵は拒否。まぁそう言うだろうとは思っていた。

 でもなんだか先程よりは葵の顔はスッキリした様な気がする。




 その後、DVD鑑賞して見終わる頃には外は真っ暗。

 私はハナちゃんと2人、帰路についた。


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