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54. 富山 郁美

「年内にちゃんと約束守らなかったらあんなアホ見限って次行きなよ?私的には意外と友晴先輩がオススメ。」

「ノリちゃん!?一体何があったわけ…?」

「簡単に言えば、一昨日春樹くんと友晴先輩と3人でシメて…じゃなくて色々アドバイスしてきたわけ。なのにまだわからないとか救いようのないアホでしかないよ。マジでムカついたわ。何があったかは、ハナちゃんは知らない方が良いから言わない。不幸がうつるよ?ハナちゃんは早坂とイチャイチャしてたら良いからさ。」

「ノリちゃん…春樹くんが言ってた葵の前で名前を出すなってそういう意味じゃないと思うよ…?」

「いいの、春樹くんは甘いのよ。あんなアホは、あの女にでもくれてやれ!」

「ノリちゃん…葵が泣いちゃうよ…。」

「…ハナちゃん…まだなんとか大丈夫。」


 バイトが終わる山ちゃんを待つため、バイト先の大型スーパーのフードコートで時間を潰していた私と彼氏の健太の耳に、入ってきた会話。

 姿は確認していないので分からないが、会話に出てくる人の名前からおそらくそのうちの1人は昨日数年ぶりに再会した友人だと思われる。




「あれ?葵じゃん?」

「あ、山ちゃん。バイト終わったの?」

「うん、ここでサノケンと郁美と待ち合わせしてたんだけど…葵の昨日言ってた予定って?」

「そうそう、友達が遊びに来てくれたの。クラスメイトだよ。」

「あ、いたいた。」


 私たちのすぐ後ろまでやって来た山ちゃんに見つかり、私たちも合流する。


「すごく近くにいたのに全然気付かなかったよ。紹介するね。私のクラスメイトのハナちゃんとノリちゃん。こっちは、昨日久しぶりにあった小学校の時の友達。仲良くしてた山ちゃんと、いくちゃん。それからサノケン。いくちゃんとサノケンは付き合ってるんだって。」


 昨日よりも、服装も髪型もお化粧にも気合が入っている葵ちゃんは可愛かった。葵ちゃんの友人2人もとても可愛い子たちだった。


「青藍って女子のレベル高いんだな…。ねぇ、ミス青藍が超可愛いって聞いたんだけど、写真持ってない?葵は普通の子だって言うんだけどさ、学祭に行った俺の友達が絶賛してて…メイド姿の写真とかあるわけないよねー?」


 ここにも救いようのないアホがいた。昨日葵ちゃんに引かれたというのに、初対面の葵ちゃんの友人にまでそれを聞くか?


 すると、ノリちゃんと紹介された色白のボブの子がニヤニヤした顔で答えた。


「持ってるよ?私、ミス青藍とは仲良しだもん。見たい?」

「ノリちゃん!?ダメだよ…見せちゃダメ!」


 なぜか慌てる葵ちゃん。私に気を遣っているのだろうか?

 そんな葵ちゃんを無視して、ノリちゃんが健太に見せてくれたスマホの画面。


「これ…友達が絶賛するの分かるけどさ…。マジかよ!?」


 健太の驚きっぷりはすごかった。どんな美人だろうと固まる健太の手元を覗き込む。


「これ…葵ちゃん…?」

「そうそう。メイド姿の葵。因みにこんなのもあるよ?」

「これ…ハルだよね?」

「そうそう。春子ちゃん。1人だと結構可愛いんだけどね、葵と一緒だとやっぱりキツイよね。」


 ニヤニヤ笑いながら見せてくれた写真は、メイド姿の葵ちゃんと女装したメイド姿のハルのツーショットだった。


「それからね、これがミス青藍の写真ね。」


 次に見せてくれたのはウェディングドレス姿で、颯太くんと腕を組む葵ちゃん。


「そりゃミス青藍になれるわ…。」


 いつの間にか後ろから覗き込んでいた山ちゃんがため息混じりに言う。あまりの可愛さに見惚れているに違いない。


「因みに、ミスターでは春樹くんが3位だったよ。」

「ミスター青藍ってやっぱりかっこいいの?」


 興味本意で聞く。


「あぁ…顔だけは良いかもね。中身はポンコツ。彼氏ヅラしてるくせに葵のことちゃんと考えてないただのアホ。いっぺん死ねばいいのに。」

「ノリちゃん!ちょっと言い過ぎ!」

「あ、ごめん…つい本音が…。葵、ごめん。」


 葵ちゃんは苦笑いしている。


「良いよ、変に気を遣われるよりもハッキリ言ってもらった方が良いもん。」


 ふと山ちゃんを見ると凹んでいた。気持ちは分からなくもない。数年ぶりに再会した葵ちゃんがやっぱり好きで、頑張ろうとしている彼にとって、葵ちゃんが学校のミスコンで優勝したとかハードルが上がっただけでしかない。しかも、ケンカ中という彼氏らしき人が学校1のイケメンとか微妙だ。




 それから世間話を少しして、葵ちゃん達と別れた。

 未だ山ちゃんは凹んでいる。


「まさか、友達が絶賛してたのが葵だったとは…。」


 健太も放心状態。


「ミスター青藍ってどんな人なんだろうな…。」


 ぼそりと呟く山ちゃん。


「山ちゃんが来る前の話ってさ、きっとその人の事だよね…。」

「俺もそう思う…。」


 これは山ちゃんにとって悪い話ではない。そう判断した私と健太は山ちゃんに3人が話していた事を掻い摘んで話すことにした。


「多分…ケンカの原因は女絡み。年内に約束がどうとか言ってたよね?」

「ノリちゃんは別れたほうが良いって言ってた…でも、他に葵狙いの先輩がいるっぽいよな?」

「山ちゃん、相手がどんなに顔が良くても、大事なのは中身だよ?ミスター青藍は中身がイマイチっぽいし。」

「葵がさ、ノリちゃんオススメの先輩に行っちゃう前に、葵の心を掴むんだよ!葵がこっちにいるうちが勝負!」


 私も健太も熱が入る。山ちゃんには幸せになって欲しい。山ちゃんの前の彼女は健太が山ちゃんの小学校時代の写真を見せたせいで、別れてしまった。なのに、健太を怒ったりせず、笑って許してくれた。


『きっと彼女は俺のこと、そんなに好きじゃなかったんだよ。早めに分かって良かった。ありがとう。』


 罪悪感があるからだけじゃなくて、本当にいい奴だから。山ちゃんにも幸せになってもらいたい。


「山ちゃん、初詣に葵ちゃんを誘おうよ?」

「初詣…?」

「1年の計は元旦にあり、って言うじゃん?先輩に先越される前に葵ちゃんにとりあえず会っておこう!」

「誘いにくかったら皆で行こうって誘ってさ、春樹も一緒なら来やすいだろうし。それで、2人になれるように俺と郁美で頑張るから…いけそうなら告白!」

「それ…早くない…?」


 私と健太の勢いに山ちゃんはちょっと引いているかもしれない。


「知らない仲じゃないしさ、ちょっと強引な位で丁度良いよ!」

「そうそう、ちゃんと誘えよ?」


 山ちゃんは少し考えていたが、深呼吸をして言った。




「別に、告白するかはその場の雰囲気で決めたら良いんだもんな…とりあえず誘ってみる。春樹も一緒にって。」

ノリちゃんは葵の天邪鬼というか、素直になれないところを逆に利用して、かなりキツイことを言っています。この人もなかなか素直じゃない&毒舌なのですごく失礼な事を言っているようですが、実は葵とみっくんにうまいこといって欲しいいと思っています。

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