3. 中沢 充
「うー、生殺し?葵がいるのに絡めないとかつらたん。」
「充が絡んだら本気で殺されそうだけどな。」
「葵のあの格好どうにかならないかねぇ?似合わない。スカート長すぎだし。」
「それってさ、ハルの趣味でしょ?あれはあれでダサ可愛で俺は好き。葵、短いスカートも持ってるよ?履かないだけ。履いてるとこ一度見せてもらったけどめっちゃ可愛かった☆」
「地味に見せたいんだろ?髪型も眼鏡も顔隠したいって言うか、春樹の逆にしてるんだろ?お前らそっくりだもんな。」
「確かに。春樹が茶髪だから黒髪。デコ出してるから、前髪は目元ギリギリの長さで眼鏡か。っつうか視力悪かったっけ?」
「あれ、伊達眼鏡。UV対策だってさ。ミツ、知ってた?」
「勿論!」
昼休み、屋上で昼食を取りながら葵について話す。
入学から2ヶ月が経つが、俺たちは彼女との約束を律儀に守っていた。が、その我慢の限界はそう遠くなさそうだ。少なくとも俺は。
「なぁ、ハル。お前葵の隣のクラスだろ?どんな感じだよ?」
春樹だけが同学年なので、葵を見かける機会が多いはず。そう思い俺は質問した。
「まぁ、普通に楽しそうにしてるんじゃ無いか?そうそう、バスケ部で一緒だった太一、早坂 太一が同じクラスで席も近いぞ?結構仲良さそうだし。名簿が続いてるからかな?」
「ハル、早坂に絡みに行こうぜ!」
「はぁ?葵怒らないか?」
「約束したのは、葵と他人のフリをすることだろ?早坂と絡むのは問題ない!」
「充、葵の機嫌損ねるなよ?」
「葵怒らせたら怖いからな…俺らまで葵んち出禁になる様なことするなよ?充、帰りにジュースよろしく〜!」
兄2人の忠告を受け止め、春樹と俺は1-Cの教室に向かった。
「葵…何それ…?」
「早瀬、すげぇ微妙なの飲んでるな…。」
「自販機でお茶買ったはずなのにこれが出て来たの…。」
そう言って、葵はキワモノ系の炭酸飲料を飲んでいた。
「おしるこ風味のクリームソーダ…。」
「早坂くんも飲む?」
そう言って早坂に飲みかけのペットボトルを渡し、葵はお茶を飲み始めた。
「飲みかけ…良いの?」
早坂が戸惑ってる。絶対間接キスだとかやましいこと考えてただろ?まさか早坂は葵が好きなのか?
「あ、早坂ってそう言うのダメなタイプ?」
葵の隣の席の友達が聞く。
「私は気にしないから良いよ。嫌なら無理しなくて良いし。」
「じゃあ、お言葉に甘えて…あれ?充先輩?それに春樹?」
「すげぇな、おしるこクリームソーダって。」
早坂からペットボトルを奪い、一気に飲み干す…つもりがゲロまずい。どうにか8割飲んで、春樹に渡す。
「なかなかファンキーな味だ…。」
目で、全部飲めと、春樹に訴える。
「ゲロまじぃ…。」
「マズイなら全部飲まなくても…。」
早坂が残念そうな顔をする。絶対間接キス狙ってただろ?そうはさせるか、俺の大好きな葵だからな!
「ごめん…先輩とこいつが全部飲んだ…。」
早坂が葵に申し訳なさそうにペットボトルを返す。
「良いよ、こんなくそ甘い飲み物私も飲みたくなかったし。」
そう言って葵は席を立ち、ゴミ箱にペットボトルを捨てる…かと思いきや、同じクラスの女子が葵に頼んでそのペットボトルをもらって行く。
廊下がキャーキャー騒がしい。正直うんざりだ。俺と春樹が飲んだペットボトルどうする気だよ?と思うが、まぁ俺もやってること変わらないなと思うと笑えてしまった。
「ハナちゃん、私トイレ行ってくるわ。」
冷ややかな目で俺をちらりと見て葵は出て行ってしまった。
「せっかくの間接キスが…。」
その場に残っていたのは、そう呟く早坂と、頬を赤らめてこちらを見るハナちゃんという葵の友人だった。
放課後、葵の家に行くと案の定怒られた。
「用も無いのに教室に来ないで…学校では出来るだけ顔を合わせたく無い。」
ショック…。
「いや、早坂に用事が…。」
「早坂くん、何しに来たんだろうって言ってたけど?」
機嫌が悪そうだ。
「あの後、結構面倒だったんだからね。知り合いなのかとか聞かれるし。…早坂くんに助けてもらったから良かったけどさ、女の子達、先輩までやってきてペットボトルでも揉めてたし…。」
この日、この直後に俺たちが葵の家から追い出されたのは言うまでもない。
5年程前、あずき味のペ◯シとかありましたよね…。