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45. 三上 あおい

「もう放してよ…。まだみっくんは正確には彼氏じゃないんだからね?ちゃんとあの約束は考えてよ?」


 見たくなかった。彼があの子を抱きしめている姿なんて…。それだけでも気分が良く無いのに、抱きしめられたあの子が彼に対して放った言葉、そして態度が許せなかった。

 腹が立った。

 なんでこんな子に彼は執着するのだろう。

 なんで私じゃないんだろう。


 その後も繰り返される傲慢な態度。馴れ馴れしい口調。いくら幼馴染でも、彼の方が年上だし、もっと敬意を払うべきなのに、あの子はそうじゃない。




 球技大会で、男女共にバスケでは2-Eが優勝した。

 あの子が怪我さえしなければ女子バスケの優勝は1-Cだったんじゃないか、そんな話をコソコソしているクラスメイトがいた。結果的に私が勝って、うちのクラスが優勝したのに…なぜそんな話をするのだろう。


 男子の決勝の時だってそうだ。

 あの子は自分のクラスが3位決定戦を同時にしていると言うのに、自分のクラスの応援ではなく、2-Dの生徒に混じって、彼の応援をしていた。

 なぜみんなあの子の肩を持つんだろう?なぜあの子を受け入れるんだろう?


 球技大会の優勝を祝って、クラスで打ち上げにきたのは良いけれど、颯太と友晴の周りがやたらと盛り上がり、そこでもなぜかあの子の話で持ちきり。

 試合中でさえ、友晴はあの子を構うし、それに対してあの子は無視をしていた。

 それをなぜみんな笑っていられるのだろう?あの態度をなぜ友好的に受け止められるのだろう?

 なぜあの子だけが特別扱いされるんだろう?


 居心地が悪くて、廊下に出た結果、見たくないものを見てしまうし、今日は本当にツイていない。

 クラスメイトが騒いでいる部屋に戻るのも嫌で、トイレに行ったりして適当に時間を潰していた。

 流石にそろそろ戻ったほうが良いだろうと廊下に出た時、あの子にバッタリ会ってしまった。

 顔を見た途端、今まで心の中に留めていたものが溢れてしまった。


「充を弄んで楽しい?」

 口を突いて出た言葉に、自分でも驚いたが、彼女はもっと驚いていた。

「え…?」

 呆気に取られたのか、間抜けな顔で私を見ている。

「だから、充を弄んで楽しいのかって聞いてるの。」

 先程よりも口調が強まる。

 彼女の表情も一変する。

「何を根拠にそんなことを仰るんですか?楽しいも何も…弄んでなんていません。」

 動揺するかと思いきや、彼女は私の目を真っ直ぐに見ている。

「とてもそんな風には見えない。だったらなんであんな酷い扱いするわけ?中途半端な気持ちで充に近づかないでくれない?」

 もう止まらない。

「だいたい、彼氏じゃないとか意味が分からないんだけど?だったらベタベタしないでよ?嫌だったらキッパリ突き放せばいいでしょ?好きでもないくせに!」

 彼女の大きな瞳から、大粒の涙がこぼれる。それでも、私をじっと見つめている。

「なんで勝手に私の気持ちを決めつけるんですか?中途半端?中途半端にしたくないからまだ彼氏じゃないんです。これは私とみっくんの問題で、先輩には関係ありません。」

「関係無い?そっちこそ勝手に決めないでくれる?充を好きな気持ちはあなたなんかに絶対負けない。だから、充を拒んだり、冷たくあたったり、彼氏じゃないとか平気で言うあなたがムカつくの。私はあんな酷いことはしない。もっと充を大切にする。好きじゃないくせに、充と一緒にいるのが許せない。周りがあなたを特別扱いするのはあなたが充の彼女って事になっているからでしょ?それが気分良くて突き放せないだけじゃないの?充が側にいなくても、高梨 颯太の妹って事でチヤホヤしてもらえるんだから良いじゃない?充の事好きじゃないくせに…」

 彼女は涙を流すばかりで何も言い返してこない。

「すみません。失礼します。」

 それだけ言うと、彼女は去っていった。

 言いたいことを言ってスッキリした。何も言い返さないところをみると、図星だったのだろう。

 そんなあの子に充は渡さない。どうにかこちらを振り向かせてみせる。




「あのさ、三上って愛情の裏返しって言葉知らないの?」

 友晴だった。

「葵ちゃんイジメて楽しい?そんなことして惨めにならないの?」

 昨日だって、友晴は彼女の肩を持った。今日だって試合中彼女にアピールしていた。そして、このタイミングで現れるあたり、こうとしか思えなかった。

「そんなに彼女が好き?だったらさっさとあの子口説き落としてよ。」

 友晴は呆れたように笑う。

「そんなこと言われてもね?彼女、俺なんか眼中にないもん。みっくん大好きで仕方ないって感じ。充には本当に勿体無いくらい良い子なのにね?」

 そんな嫌味を言うと友晴も去っていった。




 翌日、終業式が終わると珍しく充が教室にいた。

「葵ちゃん、今日は用事があって一緒に帰れないって。」

 そう言って少し不機嫌そうな顔をしていた。


 そんな彼に私はある話を持ちかけた。

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