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42. 早瀬 葵

「太一ぃ!!走れー!!」

「田中くん!!頑張って!!」

「やった!!太一のシュートが決まったよぉ〜!やっぱかっこいい…。」

「うわ…ハナちゃんご馳走サマ。」


 球技大会2日目。

 1日目はグラウンドで男子サッカーの予選、体育館で女子バレーの予選、女子バスケの予選、男子バスケの1回戦が行われた。

 2日目の今日は、男子バスケの続きと、全ての種目も準決勝と決勝が行われる。


 我が1-Cは、サッカーが3回戦敗退、バレーは2回戦敗退、女子バスケも3回戦敗退となかなか準決勝まで進むことができなかった。

 残すは男子バスケのみ。

 現在3回戦が行われている。


 昨日、私は女子バスケの試合に出場していた。1回戦、2回戦と相手に大差をつけて順調に勝ち進み、迎えた3回戦。

 私とハナちゃんのコンビネーションも更に良くなって、気がつけば、相手に20点差をつけて順調だった。

 ところが、第3Q中盤、私の不注意で足を捻挫してしまい、コートを離脱。そのまま保健室から病院へ颯ちゃんが連れていってくれた。平気だと言っても、頭を打っているからと強制連行。

 レントゲン撮ったけれど、特に異常なし。足首も軽い捻挫。なのに帰宅したらミツが大騒ぎで大変だった。

 学校でも騒いでたらしい…。明日、どんな顔して私は登校したら良いんだろうか?


 試合の結果は負けてしまったらしい。唯一のバスケ経験者だったのに、後頭部でボールを受けるとか恥ずかしすぎるし、申し訳なくて、未だ引きずっている。

 私の代わりに入ったノリちゃんも、コートにいた他のメンバーも、クラスのみんなもそんな私を責めることなく、今日は温かく受け入れてくれた。

 それどころか、ハナちゃんたちには、「自分達のせいだ」と申し訳なさそうに言われてしまってなんだかか居心地が悪い。




 男子バスケ3回戦は、練習の甲斐あってか、早坂&田中のバスケ部コンビの実力のお陰か難なく勝利。

 次は準決勝。相手は…ミツのクラス。うーん。困った。どちらを応援しようか?

「葵、ちゃんと1-Cの応援するんだよ?」

「早瀬ー!ちゃんと応援しろよ?」

「試合中旦那の応援してたら怒るからね?」

 旦那って…。正確には彼氏ですら無いのに、旦那は無いでしょう?


 男子の準決勝前に、女子バスケの準決勝がある。

 とりあえず、試合前に個人的に応援して、一応試合中は応援出来ないことをお伝えする必要があるだろうな…。そんな事を考えていたら、ミツからの着信。呼ばれたので、会いに行く。



「葵ちゃーん!足と頭大丈夫?」

 頭大丈夫?って…心配してくれているのは嬉しいけれど、ちょっと聞こえが悪い。

「うん。ありがとう。普通に歩けるし、何ともないよ。」

「良かったー!」

「あのさ、先に謝っておくね。」

「なになに?」

「次の試合中、みっくんの応援は出来そうにありません…。」

「…ショック…。」

「ごめんね、でも、ちゃんと心の中で応援してるから!」

「って冗談。だよね、仕方ないよ。だからこうして葵ちゃん呼び出したの。試合前にちゃんと応援してもらおうと思って。」

 そう言うミツは超ご機嫌。なんか調子良さそう。多分、うちのクラス負ける気がする。早坂&田中コンビには悪いけど…。

「葵ちゃん、だからさ…チュウして?ね?お願い!」

 可愛い…可愛すぎる…。

 実は、私はミツの甘えたお願いに弱い。いつも、キツくあたるのは、そのためだったりする。ミツのお願いを全て聞いていたら、私もミツもダメダメになってしまう。それで良い訳が無いので、心を鬼にして冷たくしているのだ…一応。

 でも、今日は無理。可愛すぎる。お願いを叶えずにはいられない。

「ここじゃちょっと…。」

「じゃあ、お散歩しよ?」


 手をつないで歩く。

 今は、女子のバスケとバレーの準決勝が行われているし、グラウンドではサッカーの決勝が行われている。

 それに1日目で全ての種目が終了したクラスは自宅学習日なので、学校に人は少ない。

 1-Cの教室には誰もいなかった。座りたかったし2人でここで時間の許す限り話すことにした。


「みっくん、今日は調子良さそだね?」

「わかる?絶好調!次、早坂達には悪いけど絶対勝つから。決勝は多分颯太だろうな…友晴いるし。」

 もう一方の準決勝は颯太ちゃんのクラスと春樹のクラス。ミツの言うとおり、颯ちゃんが勝つと思う。

「優勝したら約束守ってよ?」

「うん、良いよ。でも学校ではダメだからね?」

「えー?そうなの?」

「そうでしょ?学校じゃなくても、人前ではやめてくれる?」

 何故か凄く残念そうにされてしまった。もしかして、ほっぺとはいえ、人目をはばからずするつもりだったのだろうか?

「じゃあさ、次勝ったら決勝の前にもっかいチュウして?ね?お願い。」

「仕方ないなぁ…。でもその前に…。」

 黙って、手招きする。不思議そうなミツの顔が近づく。

「目、瞑って?」

 そう言った途端、嬉しそうな顔して、目を瞑ってくれた。

 チュッ。

「特別サービス。」

 もちろん、周りに誰もいないことを確認して、唇にそっとキスした。

 誰もいないとはいえ、ここは学校。

 なんだろう、この背徳感。


「葵ちゃん…俺、優勝出来る気がしてきた!もう大好きー!!」

 今日は私もどうにかしてるみたいだ。学校で抱きつかれても全然嫌じゃない。っていうか、むしろ嬉しい。思わず、私もギュってしてしまった。

 甘やかしてばかりじゃいけないいけない。

「私のお願いもちゃんと考えてくれてる?」

「…え?あ、う…うん。考えてるよ?」

 目が泳いでいる。明らかに考えていなかったであろう反応。

「ちゃんと考えてくれなきゃ優勝しても約束は無効だからね?」

「うん、年内には答え出すから!絶対。」

 意外と期限が長かった…でも、適当に考えられるよりはじっくり考えてもらった方が良いので、良しとしよう。

「そろそろ戻った方が良いよね。」

「葵ちゃん、ありがと。俺、頑張るから、ちゃんと見てて。」

 再びギュってされる。


「うわぁ…良いなぁ…。トモくんも葵ちゃんにぎゅーってして欲しいなぁ…。」

 神出鬼没。友晴先輩に見られてしまった。この人、なんでこうも良い意味でも悪い意味でも絶妙なタイミングで現れるんだろう…。もちろん今回は良い意味な訳ない。

 一人称「トモくん」もナシだ。

 もちろんぎゅーしてと言うお願いは無視して、競技会場に戻った。


 ミツと手をつないで。


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