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40. 横山 花恵

「ねぇ、葵はどうするの?」

「……。」

「葵?」

「早瀬…おーい?」

「ちょっと…葵、何ボケっとしてるの?」

「…え?ごめん、それで…何だっけ?」

「球技大会。どっちに出るの?」

「出ないという選択肢は無いんでしょうか…?」

「早瀬さん、バスケでお願い!1人足りないから!」

「ほら、颯太先輩も春樹くんもバスケ経験者だし…葵ちゃんも子供の頃やったりしなかった?」

「バレーにしようよ?早瀬さんがいたら応援に期待できるしさ?」

「葵、一緒にバスケにしようよ?太一が練習見てくれるって言ってるし…ね?」

「と言うわけで、早瀬 葵、バスケに決まりましたー!」

「え?まだ出るって言ってないよ?」

「良いから、一緒に頑張ろう、ね?」

「うん…。」


 2学期の期末テストも終わり、あと10日程で冬休み。

 冬休み直前には、2日間の球技大会がある。男子はサッカーとバスケ、女子はバレーとバスケを各クラス1チームずつ、クラス対抗のトーナメント形式で行われる。

 その球技大会に、私と葵はバスケで出場する事になった。葵は半ば無理やりだけど…。


 バレー部の亜梨沙ちゃんは、葵がいると男子の応援が期待出来るからと不純な動機で葵にバレーをさせたかったみたいだけど、葵の兄2人は元バスケ部で、太一情報によると、葵もバスケ経験者らしいので、バスケに出なくちゃ勿体無い。

 それにしても、ここ数日、葵の様子が時々おかしい。何か考え事しているみたいな感じで、話しかけても気付かなかったり、溜息の回数がやたら多かったりする。


「恋の悩みじゃないの?」

 なんてノリちゃんはニヤニヤしながら言うけれど、何か知ってる風なのに聞いても教えてくれない。明らかに何か知っていて、思い悩む葵の様子を楽しんでいる。それどころか

「ハナちゃんは早坂とイチャイチャしてたら良いんだよ?」

 なんて茶化されるし…。


 ノリちゃんも最近様子が違う。葵を見てニヤニヤしているし、しょっちゅうスマホで誰かとやりとりをしている様子だし…。

 それに対して、新しい彼氏候補?と聞けば、そんなんじゃなくてやりとりをしているのは『ある意味同志』だと言う。


「ほら、少女漫画読んで満足しちゃう感じ?リアルでそんな感じの恋をしている友人が近くにいて…自分の恋愛よりも周りの恋愛を生温かく身守る方が楽しくなっちゃったわけ…ハナちゃんと葵を見てると連載漫画読んでる感じ?それでお腹一杯。自分の恋愛なんてどうでも良くなっちゃった。」

 なんて言われた。


 葵はそんなノリちゃんの様子には気付いていないらしい。でもまぁ、授業はいつもちゃんと聞いてるみたいだし、充先輩は毎日教室まで葵を迎えに来るから、2人の仲が悪いとかではなさそう。一体何を考えているんだろう?


 高等部の球技大会は結構盛り上がるそうだ。うちのクラスは、夏休みに花火をしたり、葵の件があったり、学祭の模擬店の成功なんかで、結構まとまっている。雨降って地固まるってやつ?

 実はクラスをまとめてるのが太一だったりするんだけど。


 もともと、顔も運動神経も良いから、太一はモテていたらしい。中等部から仲がいいのに知らなかった。そして葵の件で性格までめちゃくちゃ良いと太一の株は更に上がり、それに加えて学祭の執事姿がカッコ良いと更に更にモテる様になってしまったのが私の最近の悩み。彼氏がモテるとか…不安すぎる。


 私は最近、何故か同性にモテる…恐らく太一と一緒にした執事のコスプレのせい。未だにメイド姿の葵と執事姿の私のツーショットの写真が密かに出回ってるとか恥ずかしすぎる…。


 充先輩が、いろんな生徒を当たって片っ端から葵の画像を消去したせいで、学祭から1ケ月以上経った今でも欲しがる人がいるとかいないとか。




 そんな話は置いといて、球技大会前の日曜日にバスケに出場するメンバーで練習をする事にした。現役バスケ部の太一と田中くんを中心に、補欠を含めたメンバー12人中、都合のつく8人が集まった。男子5名女子3名。女子は私と葵と、バスケ部のマネージャーの真美ちゃん。実は真美ちゃん、田中くんの彼女だ。

 そして、その他に2名やって来た。

 クラスのメンバー以外が参加するのも想定の範囲内だった。

 しかし、やって来たのは予想外の人物。

 てっきり葵と一緒に充先輩が来るものと思っていたら、違ったのだ。充先輩もクラスのメンバーで練習しているらしい。


「颯ちゃんも一緒に良いかな?ついでに、友晴先輩もついて来ちゃったんだけど…。」

「葵ちゃん、ついではないでしょ?酷いなぁ…。」

「早坂、友晴が男子教えてくれるってさ?」

「すげぇ助かります!友晴先輩、こいつらよろしくお願いします!!」

「颯太…太一も…俺は葵ちゃんに教えに来たんだけど?」

「私、颯ちゃんがいい。」

 葵はそう言って颯太先輩に抱きついた。


 そんな感じで、葵は颯太先輩と、真美ちゃんは田中くんと、私は太一と、残りの男子3人は友晴先輩の指導の元練習をした。

 葵と一緒に出来ないと分かった途端の残りの男子3人のテンションの下がりっぷりには笑ってしまった。葵目当てだったんかい?


「早瀬…結構上手いな…。」

「そりゃ、俺が仕込んだからな。バスケ始めて2年位は春樹と充よりも葵の方が上手かったし。」

「悔しいけど、ある時あっさり2人に抜かされちゃったんだよね…。あの時は男に産んでくれなかったママを恨んだわ…。」

 なんて葵が笑って言っていたけれど、本当に上手かった。中1まで部活でもしていたらしい。ブランクが3年あるとは言え、たまに遊びでバスケをする時も相手が、高梨・中沢兄弟だというのだから体が動きを覚えていて、友晴先輩の教えている男子たちよりも遥かにうまかった。


 途中から、女子3人は連携の練習やミニゲーム形式で颯太先輩・太一・田中くんチームを相手に練習をした。

 そして最後に、1-C男子チームvs女子プラス先輩2人チームで試合形式での練習をしたのだが、現役バスケ部主将率いる私達が勝ってしまい、太一と田中くんがマジで凹んでしまった…。

「俺と颯太が組んだら、女子混成でもまだお前らには負けねぇよ?」

 多分、現役バスケ部の太一&田中くんと、颯太先輩&友晴先輩の力の差は先輩達が上とはいえ、そんなに大きく無かったと思う。

 こちらの勝因は間違いなく葵だ。

 葵と颯太先輩の連携も見事だったし、私と葵だって結構いい感じだった。


「葵ちゃんとハナちゃんもいい感じだし、結構良いとこまで行くんじゃない?とは言え、うちのクラスは現役バスケ部主将が女子にもいるし、優勝は男女ともにうちのクラスだけど?」

 バスケ部の主将である友晴先輩に褒められた。素直に嬉しい。

 規模は小さいが、高等部は女子バスケ部がある。中等部には女子バスケ部は無いのだが、現女子バスケ部の部長はバスケが好きで、中等部時代は男子バスケ部のマネージャーをしながら、ごくたまにではあるが男子の練習にも混じっていた位バスケが好きな人らしい。




「太一のお陰で随分上達したよ!ありがとう。近くで太一のプレイ初めて見たけど…すごくカッコ良かった…。」

 私が照れながらそう言うと、太一も珍しく照れた。

「花恵が上手くなって嬉しいよ。早瀬が颯太先輩と友晴先輩連れて来てくれたお陰で、花恵に付きっ切りで練習できたし…田中もなんか嬉しそうだったよな?」


 田中くんと真美ちゃんは、終始イチャイチャしていて、とても見ていられなかった。見てるこっちが恥ずかしくなる感じ。まさか田中くんのあんな姿を見ることになるとは夢にも思わなかった。普段の2人とのギャップが大きすぎる。


「それにしても早瀬は上手かったよな?昔は春樹と充先輩よりも上手かったとか…まぁ、颯太先輩と慈朗先輩に習ってたらそうなってもおかしくないけど。花恵との連携もいい感じだし、試合の組み合わせ次第では優勝狙えるんじゃねぇの?」

「本当に?頑張るね!だから太一たちも優勝狙ってがんばって!」



 それから、2人で球技大会の後に控えている冬休みに思いを馳せ、クリスマスとか初詣の話をしながら帰った。

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