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38. 早瀬 葵

「早瀬…お前中沢 充に一体何したんだ…?」


 期末テストも先日無事に終わり、採点された答案が続々返ってくる。今ちょうど終わった授業でも、数学の答案が返って来て、テスト問題の解説と復習をしたところ。

 私の成績は思っていたよりも遥かに良くて、びっくりした。間違いなく慈朗ちゃんに教えてもらったお陰。

 その授業終わりに、数学担当教師に声をかけられた。この先生はミツのクラスの担任。でもなんでそんな事を聞くんだろう?


「何したって…何もしてませんけど?」


「いやいや、そんなはずはない…。中沢の成績があり得ない位上がったんだよ…テストの合計の順位が200位近くも上昇とか…生活態度だって10月位から急に良くなってるし…夏休み明けにはいくら注意しても直さなかった髪も黒くなってるし…最近おかしいだろ?本人は愛の力だとか意味不明な事言ってるし…。お前、あいつと付き合ってるんじゃないのか?」


 よくもまぁ小っ恥ずかしい事を先生に向かって言えるものだ。


「あぁ…確かに今回はちゃんと勉強してたみたいですね。慈朗…先輩に教えてもらってたみたいですし。兄の成績考えたら、不思議でも無いんじゃないでしょうか?」

「だからそれが1番不思議なんだろう?なんであいつがテスト勉強したんだよ…良いことなんだけど…200位近く上げたくせに、酷く落ち込んでたんだよ…全く意味がわからねぇ…。」


 きっとギリギリで30位以内に入れなかったとかなんだろうな。先生が私に声をかけちゃう位の成果をあげているのだから、クリスマスはデートに誘ってみよう。


 もともと、成績に関係なくそのつもりだったし。それに、この間ノリちゃんに言われたように、遼ちゃんの代わりで良いから付き合ってと言われた件についてちゃんと気付いて反省してくれさえすれば、付き合っているって事にしても良いと思ってる。付き合ってるって事になっても、今との関係性は全く変わらないけど…。せいぜい「彼氏ヅラするな」とは言えなくなる位?それと、ミツが私を「彼女」と言うのを許可する位?それ以上はまだ早い。ごく稀に一緒に寝るとか、時々、ほっぺにキスする位なら許しても良いかもしれないけど…。


 昼休み、期末テストの成績上位者の結果が張り出されたというので見に行く。

 私の名前は…あった。前回よりも結構上がって17位。やった!素直に嬉しい。

 なんだろう?2年生がやたら騒いで人だかりが出来て2年生のは確認出来ず。

 先に3年生の結果を見てみよう。慈朗ちゃんはもちろん学年1位。ずっとキープしてるとか凄すぎる。


「うわっ…あり得ねぇ…マジかよ?」

「まぁでも、兄は頭良いしな…家系的にはあり得るだろ?」

「あいつ最近すげぇ調子良いよな…。付き合ってる女のせいじゃねぇの?あげまんってやつ?」

「そうかもな…彼女の名前もあるしな…それにしてもすげぇよな…中間テストより200位近く上げるとか…。」

「でもなんで本人は凹んでるんだよ…。」

「知るかよ…。」


 2年生の結果が貼られていた掲示板の前で、話していた人たちがいなくなる。

 颯ちゃんは10位。流石!!

 しかしよく見ると…颯ちゃんの名前のすぐ下に、あり得ない名前を見つけてしまった…。


『11位 中沢 充』


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇー!?」

 思わず叫んでしまった。音量はかなり抑えたつもり。その場にいた人にはめっちゃ見られたけど…。

「葵、何叫んでるんだよ?」

 春樹に声をかけられる。

「あ…あれ…。」

 2年生の成績上位者の表を指差す。

「颯太すげぇな。まぁでもいつも通りじゃん?」

「違う、その下!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 春樹が叫んだ。凄いでかい声で。

「充が11位!?あり得ねぇ…前回は確か200位くらいだったぞ?それが11位とか…マジあり得ねぇ…。」

 近くにいた人だけじゃなくて、廊下を歩いてる人にまで振り返られてしまった。

「それがみっくん本人は落ち込んでるらしいんだよね…。」

「…わかる気がする。おやすみのチュウを狙ってたんだろ…きっと。それを颯太に阻止されたって…颯太も大変そうだな…。」


 春樹は随分音量を抑えて話してくれた。

 確かに…颯ちゃんにやたら絡んでそうだな…。


「まさか本当にここまでするとは思わなかったよ…ちょっと成績上がったらクリスマスはデートしてあげるつもりだったし、例の件反省すれば、成績に関わらず付き合ってあげるつもりだったんだけど…。颯ちゃんのためにも何かご褒美あげないとだよね?」

「だな…このままだと颯太が被害被るな…。それか、あれじゃね?球技大会で優勝したらおやすみのチュウの権利をやるとか…。」

「それ良いかも。おやすみのチュウじゃ聞こえが悪いから、1日1回ほっぺにキスする権利にするかな。」

「それは唇にさせてやれよ…。」

「そこまで甘やかしたら調子に乗るから、ほっぺが丁度良いの。おやすみのチュウもほっぺのつもりだったし。」


 唇へのキスを毎日許してしまったら、舌が入ってきて襲われるのも時間の問題。それは絶対避けるべき。


「まぁ…充なら仕方ないか…。」

 春樹は苦笑い。おそらく私の意図を正確に把握したのだろう。流石。




 その日、放課後にやってきた充は案の定魂が抜けていた。

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