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37. 高梨 春樹

「なぁ、春樹ぃ、葵ちゃん紹介してよ?それで今度どっか遊びに行こうぜ?」

「もれなく充付きだけど?」

「それはどうにかしろよ?」

「じゃあ充にお前が頼めよ?葵とデートさせてくれって。」


 最近、この手の話が妙に多い。原因は、青高祭。

 1日目、クラスの模擬店で俺と葵はメイド役をした。その時の葵の姿が可愛い過ぎると一気にファンが増えた。しかも、2日目のミスコンでミス青藍になってしまったものだから、さぁ大変。その時のドレス姿も可愛い過ぎる、マジ天使!となってしまった訳で。

 しかも充のアホが以前放った一言が密かに噂になって葵の価値を一気に高めてしまった。


『葵ちゃんはまだ清き乙女だもんね!』


 充に対するしょっぱい対応がその信憑性を高めている。

 遼太郎に食われて無い限りそれは事実だろう。




「春樹くん?何その顔。葵の今までの苦労がわかったんじゃない?」


 笑いながら話しかけるのは、葵の友人。

 葵が辛い思いをしている時、葵を支えてくれた、葵がノリちゃんと呼ぶ友人。


「まぁそんな感じ。充の名前出したら、大抵諦めるから良いけど。葵は颯太と俺、下手したら充と慈朗もだったんだもんな…。そりゃウンザリするわけだわ。」


 溜息をつく。ここ数週間ですらウンザリなのに、葵の苦労はこんなもんじゃなかっただろう。女子にはバレンタインなんてイベントもあるし。「受付窓口」とはうまいこと言ったもんだ。しかも、これから解放されたら、今度はイジメにあっている。


 そんな事を考えていた時、視線を感じてノリちゃんの方をみたら、俺の顔をじーっと見つめている。


「なんかついてる?」

「ううん。近くで見るとやっぱり葵そっくりだなぁと思って。葵の方が睫毛長いし、葵の方が下唇がふっくらしてるな、って観察してた。」


 イタズラっぽく笑うと、彼女は何かを思い出したように話し始めた。


「そうだ、春樹くんにこれお願いしようと思って来たんだった。葵、スマホ忘れて帰っちゃったんだよね。渡してもらえないかな?ついでに、忘れたのに気付いて戻ってきたら悪いから充先輩に連絡してもらえると嬉しいな。多分一緒だと思うよ?」


 葵のスマホを受け取り、充に電話をかける。


「葵、気付いて無かったって。ノリちゃんありがとう、だってさ。」

「いえいえ、どういたしまして。ところでさ、今から時間ある?色々聞きたいと言うか、葵の友人として充先輩には物申したい事が色々あってさぁ…。兄としての春樹くんの意見も聞きたいなぁと。」

「あぁ…そりゃそうだよな…。うん、ぜひ。俺も葵の友人の意見を聞いてみたい。」




 学校じゃなんだからと、駅の近くのコーヒーショップで話をすることにした。


「で、兄としてはどうなの?」

「急にそうくる?友人としてはどうなわけ?」

「まどろっこしい。見ていてイライラする。」


 葵から聞いてはいたが、可愛らしい見かけとは裏腹に毒を吐く。彼女は中等部から青藍だが、クラスは1度も同じになったことないし全く接点が無かった為、顔と名前以外は良く知らない。


「まぁね、葵も意地張ってるとこあるし…。遼太郎も結構思わせぶりなこと散々してきたし?充と遼太郎似てるしな…。そこ気にしてんだろ?」

「葵の気持ちは分からなくも無いの。そりゃ似てるから好きになったって思われるのは仕方ないかもしれないけど…本人が言っちゃう?兄に似せるから付き合ってって?」


 彼女がうちに遊びに来た日の夜、葵は充に言われた事にショックを受けた。俺たちは皆知っていた。


「ノリちゃんも聞いちゃった?あれは無いよな…。でもまだ引きずってるの?実はあの日、夜中から翌朝まで葵と充一緒に寝てたんだよ…。…あ、そういうことは絶対ないから。…純粋に同じ布団で寝るだけ、マジで。てっきり充が謝ったもんだと…。葵には俺が言ったって内緒な?」

「は!?一緒に寝たって…充先輩意外に紳士だね……あんな良い身体した葵と一緒に寝て襲わないとか尊敬するわ…。私がもし充先輩だったら間違いなく…じゃなくて、葵は思いっきり引きずってるよ?それどころか、充先輩の気持ちさえ疑われてる。」


 なんかそれも納得できてしまう。充の言動に原因があるのだ。


「充の好きは軽いからな…。」

「昔からの惰性じゃ無いかとか、遼太郎さんへの当て付けじゃ無いかとかまで思われてるよ?」

「あぁ…分からなくもないわ、それ。充って肝心な時にちゃんと言わないくせにさ、普段必要以上に好き好き言うからな。」

「自分の言動に責任を持て!と言って殴ってやりたい。」

「わかるわ…それ。」

「葵は相当充先輩の事が好きだと思うの。でも、充先輩の言動のせいで、自分の気持ちにも、充先輩の気持ちにも、自信が持てないみたい。見てるこっちが辛いよ…。どうにかならないかな?葵には、充先輩自身に、葵が充先輩に言われた事で傷付いてる事、それはどんな言葉で、どうして傷付いたか考えさせろと言ったの。」

「それ、絶対必要だと思う。」

「と言うわけで、葵がちゃんと言えるか不安なので、春樹くんからも、充先輩に考えるようお伝え下さい。じゃあ、そんな感じでまたね。なにか進展あったら教えて。私も何かあれば教えるから。」

 俺とノリちゃんは連絡先を交換して別れた。




 帰宅すると、珍しく充が必死で勉強していた。

「充が勉強?明日は槍でも降るのか?!」

「フフフ…期末テストで学年30位以内に入ったら葵ちゃんがクリスマスデートしてくれて、20位以内に入ったら付き合うことを前向きに考えてくれて、10位以内に入ったら毎日おやすみのチュウをしてくれて、3位以内に入ったらおはようのチュウもOKって約束してくれたんだよ?そりゃ頑張るしかないし!!」


 その程度で頑張れる充ってすげぇと思う。葵、相変わらず厳しいな。

 学年ベスト3の成績でもキス止まりかよ?


「ベスト20に入っても無条件で付き合うわけじゃないからね?付き合うかどうか考えるだけ。なんで付き合ってあげないかは今までのみっくんの言動に責任があるんだからそれについては順位関係無くちゃんと考えてよ?」

「葵、充の成績分かって言ってんのかよ?」

「うん。ギリギリ補習受けなくて良い位でしょ?」

 学年30位以内に入る事ですら不可能に近い成績と分かっていて、出された条件…鬼だ…。

 例の言動については順位関係無く考えさせるつもりらしい。


 頑張れ、充!




 ノリちゃんに一応報告。充に例の件考えさせてはいるものの、かなり抽象的にしか伝えていないので道のりは長そうだ、と。

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