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2. 早瀬 葵

「葵、次移動だよ〜?理科室遠いからもう行かなくちゃ遅れるって。」

「ごめん、すぐ行く〜!」

 モタモタしている私に、クラスメイトのハナちゃんが声をかけてくれる。

 青藍学園高等部に入学して1ヶ月半。

 友達もできた。トラブルもなく、平穏無事な楽しい高校生活を送っている。

 高等部は青藍学園中等部から上がってくる人が半数、残りが外部入学で、外部入学の私は特別肩身の狭い思いをするわけでもなくて本当に助かった。

 私の通っていた中学は、割と閉鎖的な街にあり、地元から進学する子が殆どで、クラスメイト皆が新入生だったのに、東京生まれなだけで、私は浮いていたのだから…。




「あ、噂の高梨兄弟と中沢兄弟。4人いっぺんに拝めるなんてめっちゃツイてるよ!今日もカッコ良い〜!」

 ハナちゃんの視線の先には4人の男子生徒。ハナちゃんの目がキラキラしてる…え?理科室こっちだと遠回りだよ?


「葵、こっちから行こう!ね?お願い!」

「う…うん。」

 できたら彼らを避けて暮らしたいが、ハナちゃんの勢いに負けて彼らの脇を通る。

 なるべく小さく、目立たない様に…。


「おいアオイ!さっきの世界史のノート貸してくれない?」

 聞き慣れた声に名前を呼ばれたかと思って、動揺してしまった…。声をかけられたのは私ではなく、青井くんと言う男子生徒だった。


 私は早瀬 葵。先程友人が高梨兄弟と呼んだのは私の実の兄で、中沢兄弟と呼んだのは兄弟同然に育った幼馴染だった。

 諸事情により、彼らとは他人のフリをしてもらっている。4人共大好きなのだが、無用なトラブルを防ぐため、地味で楽しい高校生活を送るためには必須なのだ。


「さっき、高梨先輩、葵の事呼んだのかと思ってびっくりしちゃった。」

 理科室に着いてハナちゃんがちょっぴり残念そうに言う。ハナちゃんは、青藍の中等部から高等部へと進学した子で、学校の事には私よりもずっと詳しい。私はずっと気になっていた事を聞いてみる。


「ハナちゃん、さっきの人達って何?」

 誰?じゃなくて、何?と聞いてしまって後悔した。

「そっか、葵は高等部からだもんね。うちの学校で1番有名なイケメン兄弟だよ?3年生の中沢 慈朗センパイと、2年生の中沢 充センパイ、高梨 颯太センパイ、それから隣のクラスの高梨 春樹くん。それぞれにファンクラブがあるらしいよ?今は充センパイ以外には彼女がいるらしいけど…。ねぇ、葵は誰派?みんなカッコ良いけれど、タイプが違うんだよね。クールで知的な慈朗センパイと、クールでセクシーな颯太センパイ、笑顔の貴公子とか王子とか言われて…ちょいワルな充センパイ、弟キャラで可愛い春樹くん。私は…颯太センパイ派かな?」


 そんなに目立つのか…。他人のフリしてもらって正解。中学時代に出回った写メなんて見られた日にはもうお終いだ。女の嫉妬は怖いからな。

 でも、なんて答えよう?

 そんな時、名簿が私のすぐ前で、席も近くよく話す様になった早坂くんが話に入ってきた。

「早瀬、辞めとけ…憧れるだけ無駄だ…。高梨兄弟も中沢兄弟も、真面目に付き合う気無いんだって。俺、中等部で4人とは部活一緒で結構仲良かったんだけど、春樹って実は双子でさ。親の離婚かなんかで、生き別れになった妹がいるらしいんだけど、その妹がすげぇ可愛くて、性格も良いらしくて。その子と同等かそれを超える女の子じゃ無いと真面目に付き合う気無いらしいぜ?4人とも。今の彼女達だって、遊びで良いからって頼み込んで付き合ってるって話だし。」


 笑えねぇ…人のことダシにしやがって…。生き別れて無いし…週末もうちに入り浸ってたくせに…。


「そもそも、タイプじゃ無い。高梨兄弟は生理的に無理。」

 実の兄弟と付き合うとかあり得ないしね!

「うそ?中沢兄弟は?」

「うーん……。微妙…?」

「もしかして、葵って彼氏いるの?」

「いないよ。」

「じゃあ、好きな人でしょ?」


 ドキリ。


 私には、ずっと好きな人がいる。でも、その人はもう大人で、私の事を子ども扱いする。4歳年上の20歳。産まれてすぐからの私を知っていて、オムツまで変えてもらっていたらしい…。それは中沢兄弟の1番上の兄、遼ちゃんこと中沢 遼太郎。

 思い出して溜息が出た。


「葵、図星〜!?」

「叶わぬ恋だよ。昔隣に住んでたお兄ちゃん。もう20歳。」

「お、早瀬の初恋?」

 先生が教室に入ってきたのでそこで話が終わる。隣に座ったハナちゃんがニマニマ笑っている。向かいに座る早坂くんまでそんな顔だ。


 後でハナちゃんとついでに早坂くんの恋バナも聞いてやる、そう決意した。

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