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34. 高梨 颯太

「颯ちゃん、ちょっと内緒のお願いがあるんだけど良いかな?」


 数日前、葵に頼まれたお願い。それを即OKした俺は、今舞台袖からステージを眺めている。


 現在、ステージ上ではミスター&ミス青藍を決めるべく、出場者達が順に制服で歩いている。その中には、葵に嫌がらせのメールを送りつけていたり、スカートや髪を切った奴等が4人程いる。よくもまぁ平気な顔してステージに上がれるものだ。そのうちの1人は、俺に一緒にステージに上がってくれと頼んできた。何故そこまで俺に執着するのかもわからないし、その神経を疑ってしまう。もちろん断った。


 断ったはずの俺がここにいることに気づいて、先程驚愕していたようだが。


『ミスター青藍エントリーNo.21、中沢 充、ミス青藍エントリーNo.21、早瀬 葵!』


 体育館にアナウンスが流れる。充がステージの上手から、葵がステージの下手から中央に出て来て、充が差し出した手を葵が恥ずかしそうに握る。そして花道を2人で進んでいく。


 手をつないだ途端湧き上がる会場。


 制服を着崩してアレンジ…中には制服から酷くかけ離れてしまうような着こなしをする出場者も多い中、充と葵は逆に模範生のように、きっちり着ていた。それが逆に新鮮で目立っている。


「葵ー!!」

「早瀬ー!!」

「葵ちゃ〜ん!!」


 会場から葵を呼ぶ声。しかもあちらこちらから。女子だけでなく、明らかに男子の声で聞こえるそれにも、葵は笑顔で手を振って答える。

 それが面白くない充は、花道の先端まで行くと、葵の肩を抱いて俺のモノアピール。頬にキスをしようと試みるも、葵に拒まれ、観客から爆笑が沸き起こる。

 2人が戻ってくると、今度は私服での審査が始まった。


 充と葵の盛り上がりを見た他の出場者達も、手を繋いでみたり、腕を組んだりし始めたが、ペアの服装の系統が違いすぎたり、不自然さが目立って逆効果。


 再びステージに現れた充と葵は、テイストはもちろん、柄や色まで合わせ、更に葵の髪型やメイクまで充が仕上げているため、統一感というか、完成度が他の出場者とは違いすぎた。

 しかも、幼い頃から葵を見ている充は、葵に似合う服を選ぶことにかけては天才的。自称葵専属のヘアメイク&スタイリストを名乗るだけある。


 そしてアピールタイムと呼ばれる審査が始まる。

 決められた持ち時間で、ステージを自由に使える。

 慈朗はパントマイム。春樹は女装して口パクで踊っている。

 友晴は、後輩の早坂と2人でバスケのパフォーマンス&1on1。

 ギターの弾き語りをするもの、ボディビルの真似事をするもの、漫才を始めるものと様々だ。


 充はと言うと、女装の春樹を巻き添えにして、数ヶ月前に動画サイトで流行っていた、大ヒットミュージカル映画のワンシーンを口パクで再現…かと思いきや、2人で歌ってセリフを喋っていた。しかも、ちゃんとハモってるとか、喋り方を似せてきてるあたり、意外にクオリティが高い。

 相手が葵かと思いきや、先程の葵の服装に似せた春樹で、それが観客に受けていた。


 充まで終わると女子の審査に移る。

 和装で日本舞踊を踊るもの、オペラ歌手のような衣装でクラシックの名曲を歌うもの、バレエを踊るもの、手品をするもの…。

 そしてウェディングドレスでステージを歩く者が4人もいた。

 例の4人だ。誰かにエスコートしてもらうでもなく、無駄に派手なドレスを身に纏い、花道を歩き、ポージングして戻って来るだけ。取って付けたようなそれと、微妙なヘアメイク。しかも葵と服装が被るとは悲惨としか言いようがない。葵を酷い目に合わせたんだから、今日は思い切り惨めな気分を味わってもらう。


 ついに葵の番がやってきた。

 皮肉にも、葵もウェディングドレス姿。

 洋裁同好会のメンバーが製作したというそれは、先程の4人が着ていた物ほどの派手さはないが、よく見れば意外にも凝ったデザインで、清楚。葵にとても似合っている。

 髪もドレスに合わせてクラシカルな感じで纏め、メイクも色を抑えている。

 揃いのベールを被り、顔を覆う。

 俺も父親の服を借り、それらしい姿で葵の隣に立つ。


 葵と腕を組み、ステージに上がる。


『では最後の出場者です!エントリーNo.21、早瀬 葵、実の兄、颯太にエスコートされて登場です!!』


 最後の出場者ということで、会場も盛り上がる。

 青高祭1日目の昨日、葵はちょっとした有名人になっていた。もともと、例の1件ですっかり学校中に名前と顔が知れていたのだが、クラスの模擬店でのメイド姿が可愛いと違う件で話題となっていたのだ。

 あちらこちらから、呼ばれる葵の名前。ニコニコ笑顔で手を振る葵。

 花道の先端で、顔を覆っていたベールを上げる。


「葵ちゃん、結婚してー!!」


 充が叫ぶ。

 おぉー!!と歓声が上がる。


「俺が許さん!!」


 そう叫び返すと、会場中から爆笑が沸き起こる。


「じゃあ、俺と結婚してー!!」


 友晴が叫ぶ。


「もっと無理!!」


 俺がそう返すと再び会場中がどっと沸く。

 葵も笑っている。


 そして、葵が背を向け、手に持っていたブーケを観客に向かって投げると盛大な歓声が上がる。キャッチしたのは偶然にも、カップルで見ていた女の子で、彼氏と2人、周りの観客に冷やかされていた。俺と葵も拍手を送る。


 葵が後ろを振り向き、手招きをすると『ドレス製作者』と書かれたプラカードを持った春樹と、3人の女子生徒がやってくる。


『本日のドレスの製作者、洋裁同好会2年、渡部さん、吉田さん、中村さんです!』


 アナウンスの後、葵が両手を高く上げ拍手をすると、会場中も拍手に包まれる。

 拍手喝采を浴びた3人は恥ずかしそうだ。

 そして、春樹が持っていたプラカードを裏返す。『洋裁同好会、メンバー募集中!!』と書かれている。

 そして、葵と俺を先頭に、春樹、ドレス製作者と続き、ステージ袖に戻った。




 ステージ裏では、かつて俺が付き合ったていた結菜が俺と葵を睨みつけながら泣いていた。


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