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28. 早瀬 葵

「呼び出すとか何様のつもり?」

「土下座すんのはテメェだろ?」

「学校でも色気づいてんじゃねぇよ、糞ビッチ!」

「なんだよ?その髪?調子乗ってんじゃねぇよ!」

「フリンジ付きスカートで登校しろよ!」


 嘲笑う声が教室に響き渡る。


「花恵もせっかくの忠告無視しやがって…テニス部に居られなくしてやるよ!」

「桜井、この女がどんなことしたか話したよね?この裏切り者!」


 急に教室にゾロゾロ入ってきた2年生とおぼしき10名のご一行様。私だけじゃなくて、ハナちゃんとノリちゃんの事まで罵り出した。どうやら、2人の部活の先輩の様だ。




「私に対してどんな恨みをお持ちか知りませんけど、彼女達は関係ないんで、汚い言葉で罵るのは辞めてもらえませんか?」


 私は本当に頭に来ると冷静になるタイプらしい。正直、自分でも驚いた。父や颯ちゃんとそっくりだ。


「は?自分のしたこと覚えて無いのかよ?」

「最低ー。」

「さすがビッチ。」

「高梨兄弟と中沢兄弟にちょっかいかけていた癖に!」

「全員に手を出すとかあり得ない!」

「あの、具体的にどの様な事を仰っているのでしょうか?」


 何を根拠にそんな事を…それに、私が相手をしたらハナちゃんとノリちゃんに向けられた矛先は私に向く。


「颯太に服とか靴とか貢がせていたの知ってるんだから!花火だって……見に行ったんでしょ…。」

「受験勉強で忙しい慈朗くんに低俗な漫画を買わせようとしてたでしょう?受験に失敗したらあんたのせいよ!」

「春樹くんに荷物持たせてソフトクリーム食べるとか何様のつもり?」

「充くんを体で誘惑しているのだって分かってんだよ?しかもゴムがいらないとか、ビッチ過ぎて吐き気がする!」


 妙に納得。自分の詰めの甘さを反省。ある意味自業自得ってやつですか…。


「えっと、全部心当たりはありますので否定はしません。が、大分事実を歪めて解釈していらっしゃる様ですね。」


「認めるのかよ!?」

「開き直り?良い度胸してるじゃねぇか!」


 どうやら冷静に返したのが余計怒りを買ったらしい。もうこうなったらこのまま相手をするしか無い。


「颯ちゃんと買い物に行ったのは事実ですが、服も靴も颯ちゃんが買ってくれたわけではありません。花火も行きましたけど、始まる前に帰りました。」

「颯ちゃん…って?馴れ馴れしく呼ぶんじゃねぇよ!?はぁ?ふざけんな?そんな言い訳通用するわけねぇんだよ!」


「慈朗ちゃんと本屋さんに行きましたけど、買ったのは参考書と問題集です。慈朗ちゃんの受験が失敗しても私のせいではありません。私以上に邪魔してる馬鹿がいますんで。」

「信じられない!あり得ない!なんでこんな女が!?」


「荷物はジャンケンで春樹が負けたんで持ってもらいました。ソフトクリーム食べたいって言ったのは私ですけど、半分こしようって言ったのはハルです。そもそも、この3人とはどう考えても下世話な話に結びつくようなエピソードでは無いんですが…。」

「………。嘘つかないで、ビッチの癖に!じゃあ充くんの話はどう説明するわけ?」


「充のコンドームネタはもはや鉄板ですよ?充のお友達に確認されてはいかがでしょうか?買わなくて良いと言ったのは、充に体を許す気は無いということです。私、貞操観念崩壊していない自信ありますよ?あんなふざけた会話でそこまで話を膨らませられる先輩方の想像力には驚きました。」

「そんなの信じられるわけない!そこの早坂 太一だって、友晴だって弄んでるくせに!どうせ全員とやったんだろ!?」

「えっと…友晴って誰ですか?早坂くんは親しくしている友人の1人で、そんな関係ではありません。」

「しらばっくれるなよ!今朝、友晴のエロい顔送ってきたくせに!」

「早瀬、友晴先輩って、昨日の…。」

「そうだったんだ。颯ちゃんのオトモダチとしか聞いてなかったよ。今度ちゃんとお礼言わなくちゃ。ありがと。」


 早坂くんに言われてやっと、颯ちゃんのオトモダチの名前を知った。私が先輩を無視して早坂くんと話しているのが気に食わなかったらしい。近づいて来て胸ぐら掴まれた。

 早坂くんが先輩の手を離してくれた。




「そもそも、言いたい放題仰ってますけど、私と高梨兄弟、ついでに中沢兄弟の本当の関係をご存知無いくせに先輩方の勝手な憶測で私だけでなく、私の大切な人たちまで侮辱するのはやめていただけませんか?

 どんな噂を流してくださっているのか存じ上げませんが、もし、颯ちゃんや慈朗ちゃん、春樹と充の名前とともに私の噂を流しているのであれば、それは私だけでなく、彼らをも侮辱していることにお気づきでは無いのですか?」


 口調は冷静だが、もう我慢の限界らしい。自ら、ただならぬ関係であると示唆してしまったのだから…。

 言ってから後悔した。あーあ、やっちゃった感が半端ない。


「高梨・中沢兄弟との関係?さっさと言えよ?土下座したら教えてやるとかふざけた事言ってんじゃねぇよ?」


「土下座だなんて一言も言ってませんが?本当に聞きたいんですか?聞いたら後悔しますよ?間違いなく…。」


 兄達との関係を隠すと決めたのは自分なのに、分が悪くなった途端、兄達との関係を出そうとしている自分が嫌だった。


「やっぱり言いたくありません。言ったら負けな気がするんで。」


 ここで言ったら自分に負ける気がする。虎の威を借る狐だ。そんなの嫌だ。


「どうせハッタリでなんでも無いんだろ?」

「馬鹿じゃねぇの?」

「ビッチがイキがってるんじゃねぇよ!」

「大体、なんだよ、その格好。調子乗ってんじゃねぇよ!」

「その頭、似合わねぇよ!昨日の切りっぱなしの方がお似合いだよ!」

「せっかく似合う様に切ってあげたのに…また切って欲しいわけ?」


 その時、教室のドアが開いた。

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