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1. 中沢 充

「お願いだから、学校では話しかけないでくれる?いっそ他人のフリして。もう、あんた達の告白とかバレンタインチョコの受付窓口はゴメンだし、平穏な高校生活を送らせて欲しい…。」


 久しぶりに会った1コ下の幼馴染の無茶苦茶なお願いに、俺たち4人は呆気に取られていた。

「いやいや、他人のフリって…葵とは血を分けた兄妹だし…。」

「っつうか、俺と葵は双子だし。」

 そう言うのは、無茶苦茶なお願いをした彼女の兄達。俺とタメの高梨颯太と、彼女とは双子で、兄と言っても数時間先に産まれただけの春樹。

「今は名字違うからバレないって!」

「まぁ、言いたいことはわからないけどねぇ?誰かさん達のせいで中学時代ビッチ扱いされて酷い目にあってた訳だし?」

 こちらを横目で見ながら俺の1コ上の兄、慈朗が言う。


「慈朗も人の事言えないだろ?葵ちゃん、学校の外なら今まで通りでも良い?」

「え?学校の生徒に見られるとこは無理。」

 俺の質問を葵はスパッと切り捨てる。もちろん俺たちは大ブーイング。

「はぁ?ふざけんなよ?せっかく同じ学校になったのに…。」

「葵、いつからそんなに冷たくなったんだ…。」

「葵ちゃんと同じ学校に通う意味無いじゃん!もっとこう…イチャイチャしたいって言うかさぁ?」

「ミツ、彼氏面したら殺すからね!」

「相変わらず充にはキツイね、葵は。」

 はぁぁ…葵が大きな溜息をつく。


「やっと解放されたんだよ?皆にビッチ扱いされて虐められた私の気持ちわかる?何とか2年半耐えてきたけどさ、メンタルかなりやられるんだから。近くにいたらビッチがうつるだの言われるし、知らない人から卑猥なLINEはジャンジャン来るし、結局友達って呼べる人もいないし最低だったんだから…。制服とか体操服だって何度も隠されたし…。まぁそれがあったから一人暮らし許して貰えたから良いんだけどね。」

 そう笑いながら話す彼女はすごいと思う。





 高梨家と中沢家は隣同士で、俺たち5人、時々俺の3歳年上の兄遼太郎も入れて6人…は小さい頃からいつも一緒で、本当の兄弟の様だった。

 一番年下の葵は明るくて活発で、自由奔放(今はかなり落ち着いたが…)、放っておけない性格で、俺たち5人は葵が大好きで、それはそれは可愛がった。


まぁ、俺だけ他の奴らとは『大好き』の意味合いがちょっと違うけど…。




 ところが、葵が小学校5年生の冬、高梨夫妻が離婚し、葵は母親と一緒に家を出て、高梨 葵ではなくなった。そして、彼女は中学進学と同時に、俺たちの住む街から新幹線で2時間程の地方都市へと移り住み、早瀬 葵となった。

 彼女は、その地方都市にある私立の学校へ進学した。余程成績が悪くない限りそのまま高等部へと進学できる。成績が悪くないはずの葵なのにそれをしなかった。


 彼女は4月から俺たちの通う青藍学園の高等部へ入学するのだ。




 葵は可愛い。可愛くて、オシャレが好きで、スタイルも良い。嫌でも目立つ。

 すると上級生に目をつけられる。

 初めはよくあるちょっとした嫌がらせだったそれは、中学に入学して半年程してエスカレートする。

 可愛い葵がモテない訳が無い。そして学校のアイドル的存在の2年生の男子生徒に告白されたのだと言う。葵は即断ったらしいが、相手は諦めずに何度もアプローチしてきた。

 彼のファンは当然面白く無いし、そんな時、たまたま俺たちが遊びに行き、5人で遊んでいるところを目撃&撮影された。俺と春樹が葵を囲み腕を組んではしゃいでいる写真。そんなものが校内で拡散されてから、彼女についたあだ名は不名誉なものばかりだったらしい。


 僕らの兄、遼太郎に密かに恋心を抱いている葵は、彼氏がいたことは無いし、勿論そういう経験も無い。清き乙女なのだ。初キスは、幼少の頃、俺たちのうちの誰かが奪ってしまっているらしい…(母親談)。誰かは定かでは無い。葵が幼稚園入学前の話だから誰が1番先にしたかだなんて誰も覚えていないのだ。





 葵が通っていた学校の中等部から高等部へ進学しなかったのはイジメも原因だが、それだけでは無い。家にも居場所が無かったらしい。

 葵の母は彼女が中学進学したタイミングで再婚した。思春期真っ只中の中学生にとって、母親の女の姿なんて微妙だし、母親よりも10歳も年下の再婚相手との関係だって微妙だ。

 母親は産婦人科医だったため、夜勤があると小児科医の再婚相手と2人だけと言うこともしばしばあったそうで、

「優しいし、とても良い人だよ。子どもの扱いに慣れてはいるんだけど、中学生の扱いには慣れて無いんだよね。」

 そう葵が言う様に、1対1ではギクシャクした関係だったらしい。


「ママだってママの人生があるし、私だって私の人生があるの。このタイミングで私が家を出た方が両方うまく行くんだよ?利害関係の一致。それに、ずっと一緒だったあんた達がいないとつまんないし?」





「じゃあここの合鍵くれたら他人のフリしてやるよ。」

 一通り葵の主張を聞いた後の俺の提案に、颯太も、慈朗も、春樹も賛成した。

「うん、良いよ。ママには颯ちゃんとハルに合鍵渡して時々来てもらえって言われてる。女の子の一人暮らしは危ないから、男の気配を漂わせとけだってさ。それが慈朗ちゃんとミツでも支障は無いと思うし。」

 そう言って葵は鍵を1つ取り出す。

「1個しか無いじゃん?」

「足りなかったら、そっちでどうにかして。一応来る前とか入る前には連絡してよ?それから私の部屋には勝手に入らないでよね?…約束。」


 こうして、再び5人でつるむ毎日が始まった。

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