20. 早瀬 葵
LINE 1分前
アンチ葵:11/3に乞うご期待(*^^*)
LINE 1分前
アンチ葵:ミスコンで公開処刑決定
LINE 1分前
アンチ葵:恥晒したいの?
LINE 1分前
アンチ葵:ミスコン出るの?
LINE 1分前
アンチ葵:早瀬 葵はビッチ確定。
LINE 1分前
アンチ葵:早瀬 葵は許せない。
LINE 1分前
アンチ葵:早瀬 葵は泥棒猫。
LINE 2分前
アンチ葵:タヒね。
LINE 2分前
アンチ葵:キモい。
LINE 2分前
アンチ葵:ブス。
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ミスコンの代表を押し付けられて1週間。平穏な日々が終わりを告げたらしい。
スマホの待ち受け。液晶に並ぶ文字の羅列。ついに向こうが動き出した。思っていたよりも、遅かったけれど、こうなったら何されるか分からない。
私だけなら良いんだけど…。ハナちゃん、ノリちゃん、早坂くんに迷惑をかけないことを祈る。
相手はかなり暇らしい。
初めは『アンチ葵』と言うアカウントだけだった送り主が、どんどん増えて行き、『Rina☆』『Erina☆』『Yuina☆』『Mio☆』『さき@充LOVE☆』『ミサ@充LOVE☆』『ちか@充LOVE☆』『桜子@充LOVE☆』『Anna☆』『まこたん☆』と、結局10人にまで増えた。
そうなると、四六時中罵詈雑言の嵐。
ユーザー名に『☆』がついてるとか、きっと揃えたんだろうな。明らかに中沢 充ファンと思われる『@充LOVE☆』とか、恥ずかしく無いのだろうか?
ついていけない。
お相手する気もさらさらありませんが。
アプリを開く気にもならず、放置して未読が1000件を超えることも少なくない。バッテリーの持ちが悪い。ブロックするとまた面倒そうなので、有る程度溜まったら未読のまま消去していた。1週間ほど放置していたのだが、向こうが痺れを切らしたのか、直接の嫌がらせが始まった。
慣れてるから平気だよ☆ははっ☆
そんな感じで振舞ってはいるが、地味にメンタル削られる。負けるな、葵。私には支えてくれる友人も幼馴染も兄もいるじゃないか。
ハナちゃん、ノリちゃんはまだ大丈夫そうだけど、早坂くんには迷惑をかけている。
バスケ部の先輩がすごく良い人だそうで、その先輩のお陰で、部活内で特に不自由していないから気にするなと言ってくれた。そんな早坂くんには後光が差してるよ…早坂くんが仏様に見える今日この頃。ハナちゃん&ノリちゃんが早坂くんがカッコイイ、男前だと絶賛しているが、本当にその通りだと思う。
攻撃してくる皆さんは、高梨・中沢兄弟の目を気にしているのか、先生の目を気にしているのか、やってくることは超地味だった。
登校したら机にコンドームが1個入ってるとか、椅子にチョークで落書きしてあるとか、エロ雑誌が置かれてるとか、まぁ実害が少なくてくだらないものばかり。
メインはLINEでの中傷で、直接のイタズラはあくまでオプションと言う位置づけらしい。
そんな感じで数日が過ぎた。
「ハナちゃん、ノリちゃん、早坂くん、そろそろ私のこと無視してくれないかな?」
「何言ってるの?何度も言ってるじゃん?平気だって。」
「そうだよ、そんなことしたら相手がつけあがるだけだって。」
「早瀬、気にするなって。」
今までに何度か私を無視する様にお願いしているが、みんなそう言って、ずっと今までと同じ様に接してくれてる。
そのせいで、私だけでなく、ハナちゃんとノリちゃんまでここ数日はクラスメイトから避けられ、部活でもあまり立場が良くなさそうだ。
「私のせいで、本当にごめんね。」
「もう謝らないで。次ごめんって言ったら怒るよ?」
何度か、私についてどんな事言われてるか聞いたけど、教えてくれなかった。嫌がらせしてくる人の中に4人も『充LOVE☆』な方がいらっしゃるので、間違いなくミツ絡み。
肝心のミツは、私の状況に気付いていない
ようで、毎朝ご機嫌で私の髪を結び、薄くメイクをして、香水をほんの少し付けてくれる。こんなのバレたら、間違いなく袋叩きにされるんだろうな…と思いつつも、ミツの機嫌が良いと、ミツには無駄に絡まれないので、ミツのしたい様にしてもらっている。
早坂くんの忠告で、髪型を変えた方が良いと言われたから変えて欲しいと言ったら、逆にこの髪型にこだわる様になってしまい、9月になってからずっと2つに分けたフィッシュボーンだ。まぁ、私も気に入ってるから良いんだけど。
今朝も例に漏れず、同じ髪型。うっすらメイクにグロスを塗られ、ほんのり香る程度の香水。
ミツは自称、『葵ちゃん専属のヘアメイク兼スタイリスト』らしい。拒否すると、
「師匠の言うこと聞きなさい。」
そう怒られる。
最近は学校では一切絡んでこないので、助かっている。多分颯ちゃんのお陰。
颯ちゃんは、結構早くから私の置かれている状況を把握していて、愚痴を聞いてくれる。颯ちゃんがどうにかしてくれると言ったけれど、お断りした。まだ大丈夫。そのうち収まるのなら、私と高梨・中沢兄弟の関係は秘密にしておきたい。
颯ちゃんは、その意図を理解してくれた上で、
「でも、隠すメリットよりも、隠さないメリットの方が大きくなったら葵を守る為に助けるからね?その後もちゃんとフォローするし、葵には俺らの事抜きにしても守ってくれる友達がいるから大丈夫だよ。」
なんて言ってくれた。
颯ちゃんカッコ良すぎ。マジで惚れる。兄だけど。顔はもちろん、内面から溢れ出るものが違うよ…。
慈朗ちゃんもハルも、気付いてるみたい。何も聞かずに、優しい言葉をかけてくれるのが嬉しい。
そして、なんだかんだ言っても、毎朝のヘアメイクでミツ癒されている私。
「柑橘系は元気が出る香りだよ?」
そう言われると本当に元気が出る。
今日は放課後、ハナちゃん、ノリちゃん、早坂くんがうちに遊びに来る。以前約束していた、3人に隠している事を打ち明ける為。
学校で話して、誰かに聞かれるのも嫌だったし、私の宝物を見せたい、そう思ったからこんなに遅くなってしまった。宝物を友達に見せるのは初めてで、なんだか朝から緊張する。
私は部屋の掃除と片付けをしてから登校した。




