19. 高梨 颯太
「颯太くん？やっぱり気付くよね？ネタにされるって気分悪いよね？どんなこと書かれてるか知りたい？」
「中沢弟と一緒にすんなよ？全くあいつはアホ過ぎて引くわ。」
「だよね。妹ちゃん、結構打たれ強いのね？俺、驚いちゃった。気付いててあの態度でしょ？しかもハメられたとは言え、ミスコン出るし。さすがは颯太くんの妹ちゃんだね☆」
「良いからさっさと教えろよ？出処もわかってるんだろ？」
「まぁ、大体は。誰が首謀者かはまだわからないけどね。でもさ、これ颯太くんに教えたのが俺ってバレると、妹ちゃんと一緒に処刑されちゃうらしいんだけど？」
「こんな事するくらい脳みそ足りてないんだから気付かねぇよ。LINEのアカウントそのまま使うとかアホだろ？」
「気が済んだらアカウント作り直してお終いじゃ無いの？って言うかさ、妹ちゃんが全面的に悪者になるって信じて疑わないのが笑えるよね？あの子がビッチなら、この首謀者は人外だよ？」
「葵、清き乙女だからな。あいつのガードの固さは鉄壁だ。たった1名以外にはな。」
「ふーん。それって中沢長兄？みっくんも前途多難だね。」
「充に対しては特にセキュリティ強化してる感があるしな。で、早くURL送れよ？」
「ポチッとな。」
新学期始まって以来、学校で葵に対する悪い噂が流れているらしい。初日から薄々は気付いて様子を見ていたが、特に状況に変化は無いし、葵も気丈に振舞っていたので、敢えてアクションを起こさなかった。
葵には悪いが、もう少し我慢してもらう。葵を貶めた以上、徹底的にやり返してやる。そのためには時期尚早だ。
幸い、友人にも恵まれ、孤立はしていない様だし、葵としても俺たちの介入は望んでいない。変に今手を出したら、逆に状況が悪化する可能性もある。
まぁボチボチ情報収集をと思い、信頼できる奴に声をかけた。
結果、呆れてモノが言えないレベル。アホみたいなブログ開設までしやがって、どんだけ暇なんだと言いたくなる様なくだらない内容。それ以前に、ストーカーか？と言いたい。マジで気分悪い。
「颯太くん、教えてあげたんだから解説してくれる？」
「仕方ねぇな。まず、この6月に俺が貢いだってやつ。葵と父の日のプレゼント買いにいった。で、葵と出かけるて親父に言ったら、葵に服でも買ってやれって。だから出資者は父親。買い物した荷物くらい俺が持ったって良いだろ？」
「完全に嫉妬だね☆」
「で、浴衣デートは、花火大会の日に実家帰って、隣に遊びに行ったら、中沢母に無理やり浴衣着せられて、遼太郎にヘアメイクされて、まぁ色々あって、葵が辛そうだったから花火見る前に連れて帰った。」
「中沢長兄何したわけ？デートって言うより颯太くんは保護者なわけだね。」
「慈朗と行った本屋だって参考書とか問題集買っただけだしな。」
「健全だね☆」
「春樹とは、夕飯の材料買い出しに行ってソフトクリーム食べただけだろ？」
「今度、妹ちゃんのご飯食べたい。」
「全部終わって気が向いたらな。だから協力しろ。」
「んで、この1番酷いのは？」
「葵が顔赤くして怒るのが可愛いからってあのアホ時々からかうんだよ。どうせ、それが原因だろ？葵が必要ないって言った意味をこう解釈しちゃうんだからすげぇ想像力と言うか、どっちがビッチだよ？って言ってやりたい。」
「うわ、みっくん最低。これだから童貞は困るね☆」
「つうか、このおしるこビッチってなんだよ？おしるこってあれか？充が絡んでるあれだろ？」
「そうそう。太一が妹ちゃんの飲みかけのおしるこクリームソーダ飲もうとして、それが気に食わなかったみっくんが全部飲もうとしちゃった件。あの後、何人か血迷って、みっくんに幻のおしるこクリームソーダプレゼントしてたよ？1本もらったけど、くっそマズイの。10人で500mlやっと飲んだよ？話戻るけど、太一もこれ知った上で今まで通り接してるなんてすごいよね。超男前。そのせいで、妹ちゃんが太一も喰ってる事にされてるけど。まぁ太一だって顔も良いし、結局妬みでしょ？」
溜息しか出ない。
「それで葵と早坂が1-Cの代表押し付けられた訳ね。」
「まぁ、あのクラスならダントツで妹ちゃんだよね。太一も妥当じゃない？それに気付かないとか…どんだけアホなの？まぁ、仲良くしてるお友達は気付いてるみたいだけど？」
「友晴、ありがとな。」
「俺と颯太の仲じゃん？お礼なら妹ちゃんとのキスで良いよ？勿論、舌入れて良いよね？」
「マジで殴っていい？」
「これだからシスコンは困るねぇ。」
ゲラゲラ笑いながら友晴は部活に行った。良いやつなんだけど、時々冗談が笑えない。そんなとこも含めて魅力なんだけど。
思っていたよりも、相手はアホらしい。アホすぎて笑えない。そんな女と付き合っていたのかと自己嫌悪に陥るレベル。まだ主犯だと決まってはいないが、関わってはいるだろう。友晴にその女がURL送ってるんだからな。
春樹と慈朗にも転送。敢えて充には教えない。あいつ間違いなく突っ走るから邪魔だ。やり返すにはまだ早いし、葵の置かれている状況を悪くしかねない。良い奴なんだけどまぁ残念と言うか、葵が絡むと見境なくなる。
それだけ好きって凄いよな。
充には、その時になったら、思いっきり突っ走ってもらおう。
葵の為に。
