7/24
part1
其れは、逃避行と呼べる逃避行だったのか。
私は昏い森の中を彷徨った。当ても無く。
若しかしたら私は何処かの方角に向かって居たのかも知れないし、同じ場所を行ったり来たりして居た丈かも知れない。
其の時の私の頭の中は、御医者様から逃げなくてはならない、と言う事丈が支配して居た。
だから、逃げた。
……否、途中迄は其の因果関係が成立して居たが、途中からは因果が瓦解し、手段が目的に化して居た様に思う。
逃げる為に、躯を動かして居た。私は唯、“逃げる”と言う行為に傾倒して居たのだ。
そして気付くと、黎明を迎えて居た。
私は本能的に安堵を覚えた。矢張り人間、周囲の見えない闇を怖れ、辺りを確認出来る明を好む様に出来て居るのだろう。
だが、理性が告げる。今の私が最も危険なのは、本能的に安堵を覚えた明の時間帯の方なのだと。
そう、辺りを確認出来る明。其れは則ち、他人に拠る私の捜索が容易に為ったと言う事。
本当の逃避行は、此れからだった。
二章突入です。part1は短め。
口上がなんか厨二ってるのはご愛嬌。
part2もお楽しみに!