part2
一つの大きな扉を開けた。其の先は大きな広間だった。広間は蝋燭で照らされ明るい。
そして、広間の奥には……一人の大柄な男が立って居た。
男が口を開いた。
「ようこそ、我が邸へ。私は此の邸の主で此の村の領主、
「自己紹介なんて要らないよ。僕の前に現れた時点で貴殿が何者かも、其の正体も直ぐに分かった」
先生が男の名乗りを途中で遮り、そして、
「吸血鬼だね、貴殿は?」
と言い放った。
「発して居る魔力が人間の物じゃない。直ぐに判ったよ。
ああ、生憎僕は名乗る気は無いよ。いやまぁ、名乗る気が無いと言うか、名乗る名が無いから名乗れない丈なんだけど。あ、其れと此れから殺す相手に自分の事を態々教えてあげるのも面倒臭い、と言うのも有るかな」
「確かに私は吸血鬼です。貴方は私を殺しにいらっしゃったのですね。教会のエクソシストの方ですか?」
「残念、外れ。一時的な雇われ吸血鬼ハンターさ。雇い主を知りたいかい?」
「そうですね、是非」
「貴殿の御仲間さ。吸血鬼社会の自治共同体から、掟破りの吸血鬼が居るかも知れないから調査し、若し掟破りが真実ならば其の吸血鬼を始末しろ、と依頼を受けたんだ」
「掟破り、ですか」
「吸血鬼社会の掟には、無闇に人間の血を吸っては為らない、と言うのが在るんだろう? 其れの事さ。貴殿は何人もの人間を邸に連れ込んで居るそうじゃないか。此の状況証拠だけで貴殿を始末する理由には十分為り得るよね」
「仰る通りです。端から見れば私は完全な掟破りの吸血鬼。始末の対象と為りますね。然し、私にも事情が有る」
「貴殿の事情なんて知らないよ。僕は依頼に従って貴殿を始末する丈だ。と、何時もなら此処で貴殿の首を落としに掛かって居るんだけどね。今回は僕にも事情が有ってね」
「事情? 其の事情とやらは貴方が背中にして守って居る少女と関係が在りそうですね」
私が話題に上り、動悸が更に高く為る。
「ああ、其の通りだ。貴殿に問う。此の村で流行って居る病に就いて、何か知らないか?」
「正直に御答えしましょう。全てを知って居る訳では在りません。然し、何も知らない訳でもない。私に付いて来て呉れますか? 御見せしたい物が有ります。見て頂ければ全てが解るでしょう」
そう言うと男は、領主様は、吸血鬼は、広間の奥に在る扉を開け、扉の向こうへと進んで行った。
「僕達も行くよ。怖がらなくて良い。彼の吸血鬼に今の所攻撃の意志は無い。少なくとも罠では無いと思う」
先生に言われて気付いた。私の躯は震えて居た。私の精神は状況を客観的に受け入れる余裕しか無かった。
私は……恐怖して居たのだ。男に、領主様に、吸血鬼に。
でも、私は決めたのだ。何もせずには死なないと。
「分かりました、先生。行きましょう」
割と早目に更新出来ました。颯奈夜です。
物語の核心に入って行きます。後数話で、本当に後少しで完結します。
そう間も無く次話も投稿するつもりです。どうかお楽しみに。
一つ、お知らせを。TwitterのIDを掲載しました。私のマイページ、だったかな?(←記憶が曖昧)をチェックして頂けたら。
それではまた次話で。