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吸血鬼の慟哭  作者: 不田 颯奈夜
第三章
16/24

part4

 真面目な声色を出して先生が問う。

「今、私は先生に黒子の様な物を抓って貰いましたね?」

 私は先生の問いに答える為に、問いを返す。

「ああ、確かに抓ったよ。思い切りね。でも、君は無反応だった」

「はい。感覚が麻痺して居るんです」

「麻痺、か……。君は其れを態々確認した。麻痺の原因に疑わしい物を知って居て、其れで在る確証を得ようとした、と言った所かな? ……いや、欲しかったのは其れではない確証、だね?」

 先生が私の心の核心を突いて来た。

 其の通りだった。

「はい、確かに私が欲しかったのは、私が疑って居る物が原因ではない確証、です」

「そうだよね。……扨、まどろっこしい話は此処で止めにしようか。君の麻痺の原因は、何だい?」

 先生が、単刀直入に、問うた。

 隠す事も無い。先生に病の事がバレても私は隔離される事は無い。そう、何の躊躇いも無く答えられて当然なのだ。

 でも、何かが邪魔をした。

 何故か、私の中に躊躇いが生まれた。

 ――気付いてるでしょ? 其の躊躇いの正体に。私《君》の口を重たくして居る物に。

 うん、気付いてるよ、深層意識《私》。矢っ張り目を背けたいけれど、私は無理にでも直視しないといけない。

「流行り病です、先生。私の麻痺の原因は、恐らく……いや屹度、村で流行って居る、私の母の命を奪った、流行り病です」

 口に出して、はっきりと口に出して、私は自分の病を認めた。母と同じ様に死ぬかも知れない。そんな恐怖に向き合った。

「矢張りそうか……症状は感覚の麻痺なの?」

「はい。主な症状は幾つか有りますが、特徴的な症状は、躯に出来た黒斑の部分の感覚の麻痺です。黒斑は最初は黒子位の大きさですが、どんどん其の範囲を広げて行きます。そして最後には、躯の殆ど全体に広がって……罹患した人は死に至ります」

「成る程。感染媒体は分かって居るの?」「いえ、全く。如何やって他人に感染って居るのか、其れが分かって居ないので“謎の病”なんて呼ばれたりして居るんです」

「ふーん」

「実際、長時間一緒に狭い部屋の中で働いて居た二人のうち片方丈が罹患したのにもう一人はピンピンして居た、と言う例も在れば、矢張り長時間一緒に居た家族が全滅、なんて例も在ります。一人暮らしで仕事も一人な人が罹患した例も在るし。訳が分かりません」

「成る程。罹患者の致死率は分かる?」

「百パーセントだと聞いて居ます。原因も分からないから治し様が無い、とか。行われて居る治療は対症療法のみみたいです。

 尤も、罹患者と分かった時点で最近は領主様の元に隔離されて居るから、本当に罹患者が全員死んで居るのか、或いは本当に治し様が無いのか、分かった物ではないですけど」

 私の話を聞き終えた先生は、

「そっか……」

と丈呟き、顎に手を遣って考え込み始めた。そうして暫く経ち、突然、

「……ああ、そうだ、怖がる必要は無いよ。僕が“先生”って呼ばれて居るのはね、副業で医者の真似事をして居るからなんだ。君の病も、治して見せるよ」

先生は優しい声で、私を安心させる様に言い放った。

「扨、全ての鍵は領主の元に在りそうだな。……一週間、僕は準備に時間を費やす。買い揃える必要が有る物も有るから、明日は僕を村の方へ連れて行って呉れ」

「村の方へ案内するのは構いませんが……一週間、何の準備をするんですか?」

「決まってるじゃないか。最初に僕の目的も話したし。吸血鬼狩りに、領主様の邸に乗り込むのさ」


 お久しぶりです。中間試験が明けました。颯奈夜です。

 第三章、終わりかな(多分)。

 次から第四章に入る予定です。

 第四章で完結予定。どうぞ皆様お楽しみに。


追。Twitterで小説大会に参加中です。絶賛執筆中。運営の方の許可が取れればそちらのURLを貼るかも。

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