part2
夕食は黙々と進んだ。と言うか、魔術師さんが大量の料理を凄い勢いで迫力を伴いながら食べるので、会話する余裕が無かった。
気付けば夕食は終わって居た。
「あ、そうだ。君って毎日御風呂入らないと駄目なタイプ?」
突然食事の後片付けをして居る魔術師さんに訊かれた。
「僕は湯槽に毎日入らないと駄目って程じゃないんだけど、せめて身体を拭かないと堪えられないんだよね」
そう言いながら魔術師さんは御湯を沸かし、そして布を其の御湯に浸した。
「此れで身体を拭く位は毎日してるんだ。そうしないと気持悪くてね」
そして魔術師さんは……服を脱ぎ始めた。私は目を逸らす。
「一応君の分のアツシボも有るよ。使う?」
「アツシボ?」
聞き慣れない言葉だ。
「熱い御絞りの事。雀荘用語」
「雀荘?」
「東洋の麻雀ってゲームをする為の御店……ってとこかな」
「はぁ」
良く分からない。
「で、使う? 身体拭いて置かないと気持悪くない?」
確かに汗も掻いたし此の儘だと気持悪い。
「使います」
「了解。投げるよ」
魔術師さんが私に“アツシボ”を投げて来た。
私は魔術師さんの方を向いて“アツシボ”を受け取る。
魔術師さんの裸が目に入った。しまった。目を背けなくては。恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。
……でも、一瞬丈見えた魔術師さんの身体は迚も綺麗だった。真っ白で、体型はスラリとして居て、括れが有って、体毛なんか全く無くて、膨らんだ胸が有って……ん? 膨らんだ胸?
思わず魔術師さんの方を見直した。其の肢体は、明らかに女性の物だった……。
此の人は、女性……? 僕って言ってたのに……?
呆然としながらも、取り敢えず身体を拭き始める。先ず、袖を捲って腕から。と、
「ん、君は服を脱がないのかい? 服を着た儘じゃ拭き辛いだろう。脱ぎなよ。なに、心配は要らない。他の誰かに見られる可能性は殆ど無いよ」
「え、いや、でも」
「若しかして僕の事を気にして居るのかい? 女同士じゃないか」
矢っ張り女性だったのか……。
「良し、僕は拭き終わったし君の身体を拭いてあげよう。服も脱がしてあげるよ。じっとしてて」
「えっ!?」
抵抗する間も無く私は産まれた儘の姿へと化して居た。
そして身体中を熱目の布で拭かれて居た。
「お、鎖骨の上に黒子発見。色っぽいねぇ」
魔術師さんが言った。だが黒子? 今迄生きて来てそんな所に黒子が在るなんて知らなかった。
其れを魔術師さんに言ったら、
「まぁ、自分じゃ気付き辛い位置だしね。そう言う物だよ」
と返された。
何と無く腑に落ちない物を感じながら、為されるが儘に身体を拭かれ続けた。
「お、脹脛にも黒子発見」
魔術師さんが楽しそうだった。
「此の黒子、中々に大きいな」
ぶっちゃけそんな事如何でも良い……。
「あれ、無反応?」
魔術師さんが突然不思議そうな顔を向けて来た。
「無反応って、何の話です?」
「今僕、君の脹脛の黒子を思い切り抓ったんだけど。痛くなかった?」
中間試験一週間前、颯奈夜です。
話としては折り返し地点、あたりです。 あとは完結に向けて勢い良く行ければいいのですが。
どうぞ展開をお楽しみに。
ではまた。