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11.侵入者

 最近のキサラギは順調であった。懸念されていた砦襲撃の件も、シェラとの話し合いだけで無事に解決した。

 今もキサラギは快晴の空の下で、鼻歌混じりに【シュナイト】へと新装備の取り付け作業をしている。降り注ぐ暖かな陽気は近くに迫る夏の到来を感じさせた。

 機体の上部からキサラギは新しくなった【シュナイト】を見下ろす。

「よし、これで固定は完了だ」

『お疲れ様です。マスター』

「ああ、リートもご苦労だったな」

 お互いに労いの言葉を掛け合う。キサラギは機体から飛び降ると背後に眠る相棒の新たな姿を視界に収める。

 【シュナイト】の黒を基調としたボディはそのままだが、間接部の補強以外にも“魔神”を意識した改造が施されていた。頭部に増設された二本のアンテナは、まるで角のようで単眼式のカメラと相まって伝説の“魔神”を見事に演出している。

 角や間接部はミスリルの銀色を残しており、機体色の黒によく映えていた。

「しかし、これはどうみても悪役だな」

『はい。少なくとも正義の使者には見えません』

 キサラギの視線は新しく両腕部に装着された無骨な手甲へと向けられる。自動盾を流用し作られた手甲は、その色を残した赤色で機工戦騎の豪腕を堅固に覆っている。

『攻防一体式手甲――“シュライ”』

「有り合わせの材料で作ったにしては、よく出来ていると思うぞ」

 肘の部分からは二本の刃が飛び出し、以前よりも禍々しさを増していた。キサラギの要望通り“魔神”を演出する上で文句の付けようのない出来栄えである。

「へぇー中々に強そうじゃないの」

 様子を見に来たシェラが【シュナイト】を見て感嘆の声を漏らす。あの晩からシェラはキサラギ達の様子を頻繁に確認しに来るようになっていた。

 驚き半分、呆れ半分といった様子のシェラにキサラギは待ったを掛ける。

「違うな。強そう、なんじゃない。本当に強いんだ」

「あーはいはい。わかってるわよ」

 適当に流されてしまう。最近のシェラは慣れたのか、キサラギの言うことに一々と騒がなくなってしまった。

「ちっ、つまらん反応だ」

 キサラギとしては大袈裟に反応される方が、傍から見ていて面白かったのだが、シェラがもう慣れてしまったのなら、それは詮無いことだろう。

 不満げなキサラギを無視してシェラは要件を伝える。

「朗報よ。リートの仮説が証明されたわ」

『そうですか……それではやはり――』

「ええ、リートの睨んだ通り“どうりょくろ”の不調や“つうしんしょうがい”は“魔素”が原因と見て間違いないわ」

 シェラは細かな原理は理解していないので言葉のニュアンスは変だったが、彼女にはリートの提供したデータを“錬金術師”の立場から検証して貰っていた。

「そいつは凄いな。さすがは自称“天才”だな」

「ふん、間違うわ。自称じゃなくて本当に“天才”なのよ」

「くっ……」

 皮肉で返すシェラにキサラギは唸る。

「ふふん……」

 シェラも優越感たっぷりの挑発的な笑みでキサラギを見詰め返す。

『私にすればどちらも似た者同士です』

「「違う!」」

『ほら、息もぴったりです。説明を続けてください』

 リートの仲裁で二人は一先ず互いの矛を収める。

「論より証拠を見せた方が早いわ」

 シェラに促されキサラギは彼女の研究室へと足を運ぶ。相変わらず室内は雑然としているが、この数日で既に何度も通っているので驚きもしない。

「アレを見てちょうだい」

 シェラが指差す先には二つのガラス容器、一見して中は空っぽだがそうではない。

「この二つの容器には、それぞれリートのナノマシンが幾つか入っているわ」

 キサラギが注視していることを確認すると、シェラは左の容器を指差して短く呪文を唱える。

「光よ」

 初歩的な光の呪文で容器の中が淡く発光する。しかし限られた空間内では直ぐに“魔素”が枯渇してしまう。直ぐに光は弱くなり、やがて完全に消えてしまった。

「これで左の容器の中は“魔素”が存在しない空間になったわ。後は内部のナノマシン同士で交信をして貰う。その結果を比較すれば一目瞭然よ」

 言ってシェラは紙に出力された実験結果を見せる。当然ながらセルディオに印刷機など存在しない。半ばシェラの私物と化している携帯用端末で印刷したのだろう。

 結果はシェラの言う通り明白だった。“魔術”を使って空間内の“魔素”を取り除いた方が、ナノマシン同士の通信が円滑に進んでいた。

「なるほど、これは決まりだな」

『はい。どうやら“魔素”には信号の伝達を妨げる性質があるようです』

 機工戦騎に使われている動力炉は、主戦場である宇宙空間での使用を前提として設計されている。“魔素”が満ちるセルディオでは、その性能を十全に発揮することが出来ないのだろう。

「しかし原因がわかったのは良いが解決策はあるのか?」

「密閉された空間に限定すれば、初歩的な“魔術”の行使で“魔素”を取り除けるわ」

「よし、無理だな。うーん、他に何か良い方法は無いものか……」

「ちょ、ちょっとキサラギ! 幾らなんでも諦めるのが早過ぎるんじゃない?」

「そうは言ってもな。俺は“魔術”なんて使えない。習得する芽も無い――ってのは、お前の言葉だぞ?」

「そうね。天才に二言は無いわ」

「なら他の方法を考えるのは当然だろ」

「はんっ! 天才の頭脳を見くびらないで欲しいわね」

 盛大に見得を切ったシェラは、白衣のポケットから黒い腕輪を取り出す。やはり表面に“刻印”らしき無数の文字が刻まれている。漆黒の台座の上には青空のように真っ青な宝石が埋め込まれていた。

 色こそ違うが以前に見せて貰った“魔晶石”の腕輪にそっくりだった。

「コレは?」

「ふっふっふっ……よくぞ、聞いてくれました。それは私の天才的な頭脳が生み出した成果にして、我が数十年に及ぶ研究の結晶! ルシフェラ・セリクスを並ぶ者なき偉人と称すに相応しい――」

「あぁー能書きはいい。つまりコレは何だ?」

「“翻訳”の腕輪よ」

「“翻訳”? それは初めて会った時にブライが掛けてくれたアレか?」

 今でこそ忘れがちだが、セルディオの住人とキサラギの間には言語の壁が存在する。

 初日にブライが掛けた“翻訳”は消費魔力も少ない簡単な“魔術”だ。術者の力量によって多少の違いはあるが効力は大体で三日程度である。

「あんたは気付いてないかもしれないけど、三日経った時点でブライが“翻訳”を掛け直していたのよ?」

 キサラギの場合は丁度そろそろ切れる頃合であった。

「そしてこれにも“魔晶石”が使われているの。周囲から“魔素”を吸収、装着者に術を掛け続けるようになっているわ」

「なるほど、確かにコレは便利そうだ」

「はい、コレはキサラギにあげるわ」

「良いのか?」

「ええ、“翻訳”なんて日常的に使うのはセルディオでもキサラギだけよ」

 シェラの口調は一見して素っ気無い風だが、“魔術”の汎用化を目指す彼女の研究内容を考えれば、“翻訳”なんて使用頻度の低い術を選んだりはしないだろう。

「そっか……なぁ、シェラ」

「何よ?」

「ありがとうな」

 今度は自然にお礼の言葉が口に出せた。シェラがキサラギ達の存在を当たり前に感じるように、キサラギもシェラ達との生活に愛着を持ち始めていた。

 親しき者には感謝の言葉を――それはとうの昔にキサラギが忘れた言葉だった。

 一方でシェラはキサラギの殊勝な態度に少し戸惑っていた。

「ふ、ふん。私の頭脳に感謝しなさい」

「ああ、そうだな」

 口調が照れ隠しなのだろう。そう思うとキサラギは表情が綻ぶのを自覚する。

 これまでのキサラギの人生で気安い仲の者など皆無であった。それは孤児として生まれ育ったからには仕方の無いことであり、特にキサラギも気にしたことは無い。

 しかしシェラとは雇い主と傭兵の間柄であるが、同時に歳の近い同居人でもある。

(これはこれで悪くはない、か)

 自称“天才”の口煩い少女だが、他人を気遣う優しい人格はキサラギには眩しくて、それとは別に好ましくも思っている。

 二人に自覚は無かったが、それは“友人”と呼べる関係だった。

『ふふ……』

 そんな二人のやり取りをリートは微笑ましく見守る。手の掛かる主人に初めて出来た友人に彼女は心から感謝した。

 

 

 同じ頃に“魔の森”では帝国の調査隊が【シュナイト】の落下地点の調査を進めていた。

 そこは荒野の中でも際立って破壊の爪痕が深い。ユリ達はこの場所こそが彗星の落下した地点だと考えていた。

「まったく、“魔神”の力とは恐ろしいもんじゃ」

「アルフォンス様はコレが“魔神”の仕業だとお考えなのですか?」

 既にユリも同じ結論に達しているが、彼女はそのことを表情に出さない。未だに飄々とした態度の老騎士は、あくまで軽い態度を崩さず問いに答える。

「これ程の破壊じゃ、無関係ということはあるまい」

「ならば伝説の通り“魔神”は天上界から来たのですか?」

「それはわしにも分からん、が……“魔神”の住処は案外近くにあるかもしれん」

 何気ないアルフォンスの言葉に調査隊の面々に緊張が走る。“魔神”の調査と言っても彼らはまだ“魔神”と遭遇していない。森に入ってから大した発見も無かったので、このアルフォンスの言葉は彼らに“魔神”が持つ脅威を思い出させるには十分だった。

「その根拠をお聞きかせください。アルフォンス様」

 調査隊の大半はアルフォンスが連れて来た西天騎士団の者である。彼らは知勇兼備の精鋭ばかりだが、ユリが連れて来たハイゼンベルグの兵達はそうではない。

 ユリは彼らの為にもより単純な説明をアルフォンスに求めた。

「理由は単純じゃ、この大穴を見るに“魔神”は空を飛べんのだろう。飛べるのなら地面に激突するような真似はせん、違うかのう?」

「確かそうですね。グラナ砦の時も空から襲撃されたと言う報告聞きません」

「そして“魔神”のような巨体が山を登れば嫌でも痕跡を残す。なら“魔神”の通り道は一つしかあるまい」

「つまり“魔神”はこの森の奥に潜んでいる、と?」

「確証は無いがのう」

 そう言うアルフォンスの顔は確信に満ちていた。

 調査隊は彼の推理に従って“魔の森”の奥へと進路を変える。

 薙ぎ倒された木々を避けながらユリ達は進む。本来なら凶暴な魔物と深き森に阻まれる険しい道も難無く通ることが出来た。

 既に森の生態系は激変しており、微かに残る森には魔物は棲んでいない。そのことに気が付くとユリは隣で隊列の中央を歩くアルフォンスへと声を掛ける。

「アルフォンス様」

「うむ、卿も気付いたか」

「はい。いかに森の規模が縮小したとしても魔物が一匹も居ないのは不自然です」

「そうじゃな。わしも小型の魔物すら見掛けんのは変じゃと思っておった」

「それに微かにですが“魔術”の痕跡を感じます」

「ほう? わしには“魔術”は畑違いじゃ。卿の意見を聞こう」

 最年少の“宮廷魔術士”であるユリは“魔術”に対して特に鋭敏な感覚を持っている。

 その感覚が先程から告げているのだ。

「この先……恐らくあの木を境に感覚を狂わせる“幻惑”の結界が張り巡らされています」

「ほう、“幻惑”の術か。差し詰め魔物除けと言ったところじゃのう」

「かなり巧妙に隠蔽されています。術式も相当に複雑な物でしょう。術者はかなりの凄腕です」

「卿にそうまで言わせるとはのう。術者は随分と大した奴のようじゃな」

「はい。しかし術の規模や式の複雑さに対して術の選択に違和感があります」

「違和感じゃと? それは一体どういう意味かのう」

「“幻惑”は初歩の“魔術”です。感覚が鋭敏な者や知能の発達した大型の魔物には大した効果が望めません。規模こそ大きいですが、侵入者や魔物除けには信頼性に欠けます」

 話し合いながらも二人は隊を止める。精鋭ばかりの調査隊とはいえ、わかっている危険に無防備に飛び込む程に無謀ではない。

「どうしますか? アルフォンス隊長」

「行くしかあるまい。他に“魔神”の居場所に心当たりはないわい」

「わかりました。それでは私はこの場に残り結界を解きます」

「そうかのう? 初歩の術ならば気合で抵抗出来るんじゃが――」

「残念ながら私の部下は西天騎士団のような音に聞く精鋭揃いではありません。常時結界なら内部の“魔素”も希薄です」

 常時結界とは読んで字の如く常に発動するタイプの結界だ。常時結界は術者を中心とした円周状に結界が展開される。

 必然的に空間内の“魔素”は術者によって使用されているものであった。

「私は結界の解除を優先します」

 そして“魔素”の薄い空間で魔術士が戦闘を行うのは困難だ。それ故に魔術士がこのような事態に遭遇した場合は結界の解除が最優先とされる。

「わかった。なら部隊を半分にしよう。わしは先行して内部の様子を探る。卿は結界を解除、その後に残りの者を率いて調査――どうじゃ?」

「はい。ならばコレをお持ちください。合流用の目印です」

「ふむ、ではお互いの武運を祈っておるぞ」

 目印の布を腕に巻くとアルフォンスは部隊の半分を率いて結界の中へと進む。

 その場にはユリとハイゼンベルグの兵達、そしてもう半分の西天騎士団員達が残された。

 

 

「む? これは侵入者ですか」

 屋敷の台所でブライは迫る異常を感知した。屋敷の結界に侵入者探知ようの術式も組み込まれており、結界を越えて何者かが屋敷に入ってくれば、彼に伝わるようになっていた。

「まったく、誰かは知りませんが無粋な者が居たものです」

 彼の格好は執事服の上に淡いピンクのエプロンと、完全な料理スタイルだった。目の前の机には今しがた焼き上がったばかりの焼き菓子が並んでいる。

「それで数の方は――ッ!?」

 ブライのような達人ともなれば、敷地内に侵入する者達の大まかな数位は把握出来る。

 その数の多さに彼は戦慄した。

「くっ、この数はただの賊ではない!」

 判断してからのブライの行動は迅速だった。素早くエプロンを脱ぎ捨てると彼は駆ける。

 その間に“魔術”で虚空より愛剣を取り出し腰に帯びることも忘れない。

「お嬢様は確かこの時間はキサラギ様の様子を見に行っている筈です」

 シェラの屋敷は上から見ると凹の字型をしている。【シュナイト】の置かれた裏地へ行くには廊下を突きって窓から外に出るのが一番だ。

 しかしブライはあえて中庭を目指す。ここまで近づけば気配などを読まずとも知覚することが出来る。

 中庭には若い魔族が四人、まるで周囲を窺うように立っていた。身に纏う鎧から彼らの所属が帝国であることを見抜くと、ブライは密かに胸中で舌打ちする。

「失礼ですが、どちら様でしょうか?」

 そんな内心は微塵も感じさせずにブライは優雅な一礼で彼を迎える。所属が帝国である以上は連中に対して迂闊に手を出す訳にはいかない。

「な、何だ? この爺さんは……」

「物凄い速さだったぞ」

「あ、ああ……団長みたいだった」

 危険を承知で“魔神”の調査に来ていた調査隊は、礼儀正しく執事に出迎えられ目に見えて戸惑っていた。

「わ、我らは“ヴァーリス帝国”の調査隊である。この地には“魔神”の調査で参った。何か知らぬか?」

 さすがは西天騎士団員――帝国が誇る精鋭なだけはある。湧き上がる疑問を押し込めて、彼らは己の職務を全うしようとした。

「調査隊……ですか?」

 それに対してブライは彼らの言葉に自分が犯した失敗に気付く。

(私としたことが! 帝国が調査隊を送り込んで来ることは、情報として知っていた筈なのに……不覚です)

 今直ぐに主の下へ参じて誠心誠意に詫びを入れたかったが、今は無理だった。

 帝国の調査隊――つまりは“魔族”の進入を許してしまった以上、彼らをシェラの下へ行かせる訳にはいかない。シェラの容姿を見れば彼らは気付いてしまう。

 彼女はまた追われる身となるだろう。

(冗談ではない!)

 そんなことは彼女の従者として――否、少女の親代わりの身として許せなかった。

 ならばブライの選ぶべき道は一つである。

「残念ですがお引取りください」

 鋭い眼光が騎士達を貫く。ブライはその場に立っているだけだ。彼は腰の剣には手さえ掛けていない。

「「「「なっ……」」」」

 しかし彼らは身動き一つとれなくなる。帝国の剣と呼ばれた天下の西天騎士団が、枯れ木のような老躯に完全に呑まれていた。

 だが、彼らを驚かせていたのはブライから発せられる重圧が彼らのよく知る人物に比肩する程のレベルだったからだ。

「お引取りください」

 ブライは淡々と同じ台詞を口にする。今度は腰の剣に手をやり軽く鍔を鳴らす。

 騎士達は動かない。ある意味ではその行動は正解である。ブライは口では退けと言っているが、背を見せれば瞬き一つの間に三人は斬り伏せてやるつもりだった。

 屋敷の場所を知られた以上、一人たりとも生かして帰す気は無い。

「ほぅ? これは意外な場所で懐かしい奴に会ったのう」

「ッ!?」

 ブライは素早く身を伏せ転がる。数瞬遅れてブライの頭部があった空間を、一振りの白刃が通過した。

「はっはっはっ! ブライよ。腕は鈍ってないようじゃな」

 歯を剥いて笑うアルフォンスにブライの鉄面皮が歪む。忌々しそうに吐き捨てる名はブライにとっても旧知の名前だった。

「貴様は……アルフォンス・アルノルト」

「そう嫌そうな顔をするな。お互いにしぶとく生きておったのじゃぞ? もっと喜べ」

「会うなり斬り掛かって来るような奴がよく言います」

 ブライの額に青筋が浮かぶ。彼にしては珍しい反応だ。この場にシェラが居れば目を丸くして驚いたことだろう。

「まぁ、そう怒るな。数十年振りに門弟同士が出会ったんだ。ここは一つ刃を交えたくなるのは剣士の性じゃよ」

「まったく、厄介な客が来たものです」

 ブライは油断無く立ち上がると腰から剣を抜き放つ。対峙するアルフォンスもゆったりと剣を構える。

「だ、団長」

「これは一体?」

「お知り合いなのですか?」

 西天騎士団の者達は常に無い程に活き活きとした団長に、口々に疑問をぶつける。

 しかし団員達の戸惑いをアルフォンスは一蹴した。

「お前らは下がっておれ。巻き込まれれば死ぬぞ?」

「「「「……」」」」

 彼らは黙って距離を置くと二人の老剣士の戦いを見守る姿勢を取った。

(本当に厄介な客が来てしまったものです)

 一筋の汗がブライの頬を伝う。それは彼の焦りを表しているかのようだ。

 落ちた滴が地に着くよりも早く――二人の剣が衝突する。

 かつてのライバル同士の対決が今再び火蓋を切った。


どうも、如月八日です。今回も完成した分を投稿します。

ご意見、ご感想は随時募集中です。

誤字などの報告でも結構です。お待ちしています。

次回の投稿も執筆が完了次第に投稿するつもりです。

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