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繋がる絆  作者: 結城由良
9/13

ルシウス(4)―旅の仲間

これで、ルシウス回想編終わりです。お待たせしました^^;

――時は少々遡る。


「下流で回収できたのはこの衣服のみでした」


 斥候の差し出した濡れた上着を見て、パルジャンが頷く。


「≪追跡子≫に気が付き脱ぎ捨てたか。だが、この流域にいることは間違いあるまい。兵器とはいえ手負い、それほど遠くへ行ったとは思えない。近郊の村への聞き込みはどのような状況か」

「聞き込みに行った数部隊が帰ってきている。報告させよう」


 いくつかの村へ放った斥候から話を聞くと、その中のひとりからそれらしき子どもを見かけたという報告があった。


「金髪の少年を旅の治療師が運んできたらしいと、そこの村人から聞き出しました。その治療師が滞在しているという小屋への案内の手筈も整えてあります」

「でかした」


 隊長はパルジャンに頷きかけると、休憩をしていた部隊に号令を出した。


「目標を捕捉した。これより捕獲作戦を再開する。目標が滞在中と見られる村へ進軍、到着後の指示は追っておこなう。10分にて野営の撤去をおこない、進軍を開始せよ」

「おう!」


 野営地がにわかに慌ただしくなった。


/*/


 昼過ぎには小屋の包囲が完了した。隊長がパルジャンに作戦を相談する。


「投降を呼びかけますかい?」

「いや、前の結果を鑑みるに、反撃の機会を与えるだけだろう。奇襲攻撃で取り押さえた方がいい」

「なるほど。一緒にいるという治療師の女はどうします?」

「好きにしてくれていい」

「了解」


 振り返って部下に作戦指示を出す。


「正面扉、裏口、窓2か所から同時突入をおこなう。


 正面扉はA班、裏口はB班、前方窓はC班、後方窓はD班の担当とする。各班は突入1名、後方支援魔術要員2名で構成。面子の選定はガルに任せる。


 油断しているところを奇襲で総攻撃し、無力化を図る。が、無理はせず、反撃が激しいようならば一時撤退すること。


 手加減は不要。目標少年および一緒にいると見られる女性の生死は問わない」


 いけ、と伝令を走らせ、準備が整うのを待つ。じりじりとした時間が過ぎて行った。


/*/


「まずいね、囲まれている」


 窓からそっと覗き、複数名がじわじわと寄ってきているのを確認する。


「突入してくる気かね」


 服を着替えたルシウスもそれを視認して、難しい顔になる。迎撃して突破するにも数が多い。自分だけならともかく、シンシアは攻撃に耐えられない可能性が高い。たとえ自分ひとり逃げたとして、シンシアが捕まっては意味がない。


「裏口もダメだね。完全に囲まれてる」


 シンシアの表情も厳しい。が、子どもに不安を与えてどうする、と思ったのか、無理やり笑ってみせた。ルシウスの表情がさらに厳しくなるだけだったが。


/*/


 20分後、部下が配置についたことを確認して、合図を送る。


 扉と窓を吹き飛ばし、12名が小屋へ突入した。


 戦闘開始。


――の予想された爆音は響かず、1名が慌てた感じで正面から出て来ると、叫んだ。


「目標いません!もぬけの殻です!!!」

「なんだと!?」


 出入りは監視していたはず。いったいどこへ?


 パルジャンは小屋へ入ると魔力の残滓を探った。突入で乱れてはいるが、何かの魔術を使った跡はある――気づかれずに移動する…転移魔法か。しかし、転移魔法は転移陣へしか行けないはず。4号が知る転移陣はただひとつ…


「あそこか」


/*/


 ルシウスたちは、パルジャンの推測通り、研究施設へ戻っていた。すかさず、土の破砕魔法で使った転移魔法陣を破壊し、パルジャンが転移して来れないようにする。


 見張りが2名残されていたが、これもルシウスが弱めた雷撃で個別に倒し、縛り上げて部屋に放り込んだ。


 そのまま逃げるのかと思いきや、パルジャンの執務室に戻り、研究報告書や魔術書を手早く袋に詰め始めるルシウスに、シンシアは呆れた。


「子どもにしちゃしっかりしてるねぇ」


 と思わず感想を漏らすシンシアに、ルシウスが一瞬固まる。


「ええと、今まで言う機会がなかったんですが、そのですね」


 手を止めて、シンシアに向き直る。何事かと首を傾げるシンシア。


「こう見えても僕、18歳なんですよね」


 意味が頭に浸透するのに一拍かかった。


「はええええ?」


 間抜けな声が執務室に響き渡った。


/*/


 それが、2人での長い逃亡生活の始まりであった。


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