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繋がる絆  作者: 結城由良
12/13

大団円

ということで畳む!

 数日後、アイラの元へ父親が弟と妹を連れてやってきた。これから、魔術師の島で暮らすのだという父親に、アイラは驚きつつ喜んだ。


「えっと…お母さんは?」


 アイラの問いにマルキスはさびしそうに笑った。


「お母さんは、心を病んでしまってね。実家へ戻って療養することになったんだよ」

「そう…」


 複雑な思いだったが、ほっとしたのも確かだった。


 父親が新しく開いた小物の店、それを手伝いながら母親代わりに弟や妹を育てる日々に、アイラ自身がゆっくりと癒されていった。


/*/


「≪錬成≫」


 床に描いた魔法陣が光り、中央に置いた材料が一つにまとまっていく。


 光が消えるとともに、中央にはでき上がっていた「魔術師の杖」が出現した。課題は成功した。


「やったー!できたー!」


 できあがった「魔術師の杖」を手に跳ねるアイラ。


 ばん!と実習室の扉が開いて、招かねざる客が飛び込んできた。


「あいらちゅああああん、おめでとおおお!」


 涙と鼻水をまき散らして抱きつこうとする残念すぎる人を、アイラはひらりと避ける。ここ1年ですっかり慣れたらしい。


「避けるなんてひどいよう」


 すかった挙句、床に盛大なスライディングキスをかましたルシウスが、えぐえぐと文句を言った。


「乙女に抱きつくのはセクハラです」

「セクハラです!」


 遅れて姿を現したマリエルが、冷やかに評する。アイラがそれに唱和した。


「ともあれ、錬成成功おめでとう。それを提出しますか?」

「はい、お願いします」


 できた「魔術師の杖」をマリエルに渡すアイラの表情は緊張していた。


「水系魔術の増幅効果は中といったところですね。錬成は安定してますね。そうねぇ」


 マリエルがにっこりと笑った。


「80点と言ったところかな。合格です。おめでとう」


 緊張に固まっていたアイラの顔が、ぱあっと明るくなった。


「ああああ、ありがとうございます!」


 杖ごとマリエルの手を握り締め、跳ねる。


「マリエルばっかりずーるーいー。僕が採点官もやりたかったのにー」


 そしたら、アイラに手を握り締められるのは僕だったのにーと、床にのの字を書いていじけているルシウスに、マリエルが呆れた。


「そういうことばっかり言ってるから外されるんですよ。いい加減アイラ離れしてください」

「してください!」


 えーっと口を尖らせるルシウスに、2人は顔を見合わせて笑った。


/*/


 家でもお祝いが行われた。父親が作った料理に、買ってきた焼き菓子。


「アイラ、1級合格おめでとう」

「「おねーちゃんおめでとー」」


 家族のお祝いの言葉に、アイラが頬を染める。


「ありがとう。これもみんなのおかげだよ」


 ぎゅうと弟と妹を抱きしめて、嬉しそうに笑った。その様子を目を細めて父親が見ていた。


「アイラはこれからどうするんだい?魔術師にはなるんだろうけど、その後は何をしたいんだい」


 父親がふとアイラに尋ねる。


「うん、あのね。魔術師の島には先生が不足してるんだって。これからもっと魔術師候補の子どもたちが増えていくんだけど、その子どもを教える先生が増えないんだって」


 だからね、とアイラが続ける。


「私、初学者の塔で先生をしたいな、と思ってるの。あ、まだ、思ってるだけなんだけど」


 照れて、手に目を落とす。父親の微笑みが深くなった。


「とてもいい夢だね。アイラにとても似合ってる。アイラならきっとなれるよ」

「うん!」


 晴れやかな笑顔は、とてもまぶしかった。


/*/


「アイラちゃん!その夢は必ず僕がかなえさせてあげ…あた、あた、あたたた」

「覗き禁止。この痴漢。セクハラ男。変態。ロリコン」

「マリエルちゃん、やめて!それマジで死んじゃう…!!!」


 水の塔で惨劇があったとか、なかったとか…

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