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繋がる絆  作者: 結城由良
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繋がる絆

戻りましたが、ある意味ハード展開続行です(´・ω・`)。

「それからもシンシアには随分お世話になったんだよね」


 ほら、僕って攻撃一辺倒で、治癒系魔法も防御系魔法も使えなかったからさ、とルシウスは笑った。


 そのシンシアという女性が、アイラのひいおばあちゃんだと言う。ルシウスの語る過去があまりに波瀾万丈すぎて、アイラはどう反応したものか戸惑っていた。


「だけどさ、僕に付き合うことで、自分の子ども探しの方はうまくいかなかったんだよね。シンシアはちゃんと付き合いながら探しているって言ってたけど、逃げたり隠れたりしてたら、やっぱり時間取られちゃうじゃん。結局、最後まで見つからなくてさ…僕、それでもずっと探してたんだ」


 シンシアが死んでも、その子どもの行方を探していたと、ルシウスは語った。


「何度も戦争があったから、死んじゃってるとは思ったんだけどさ。僕が諦めたらシンシアに悪い気がしてね」


 だから、アイラを見つけた時は、涙が出るほど嬉しかったのだ、と言った。


「ちゃんと生き延びて、アイラのお父さんを生んで、アイラを育てながら天寿を全うしたって聞いて、よかったなあって」


 シンシアも天国で喜んでるよね。だけど、僕が報告する前に再会しちゃったんだろうけどね。とルシウスが困ったように笑う。


「まあ、だからね」


 アイラは僕を頼ってくれていいんだよ、とルシウスは言った。


「アイラは子どもなんだから、もっと甘えていいんだよ」


 それは、シンシアが僕に言ってくれた言葉だったから。


「でも…わたし、魔法使えなくなって、だからここにいちゃいけなくて…」


 ひぐひぐと泣くアイラの頭をぽんぽんとルシウスが撫でる。


「魔法が使えようと使えまいと、関係ないさ。僕がアイラを守るのはそんな理由じゃない」


 それに、とルシウスがほほ笑む。


「魔法だけがアイラのいいところじゃない。一生懸命なところ、親切なところ、たくさんいいところを持ってる。できることはこれから増やしていけばいいんだよ」

「私は、何も、返せ、ない…ひぐっ」


 んーとルシウスが苦笑する。


「アイラは返さなくていいんだ。アイラに僕が返すのは、シンシアからもらったものなんだから。もし、それでも何かを返したいと思うなら、それはアイラがもっと強くなって、どこかで困ってる子を見かけたら、その子に返してあげればいい」


 急がなくていいんだよ、とルシウスはアイラの頭を撫でた。


「…もっと強くなって?」

「うん。大人が子どもを育てるのは、自分に何かを返してもらうためじゃない。自分が子どものころに大人からもらったものを、次の世代に返してもらうために育てるんだよ」


 まあ、自分のことしか考えてない大人も多いけどね、とこれは心の中だけで考える。


 泣き続けるアイラの頭を、ルシウスは撫で続けた。


/*/


 泣きつかれて眠ってしまったアイラをおんぶして戻ってきたルシウスを、管理人のおばさんは責めるように見たが何も言わなかった。ベッドに寝かす手伝いをして、ドアを閉める。


「…あの子は大丈夫かい?」

「大丈夫ですよ。僕が守ります」


 にっこり笑うルシウスを、やはりうさんくさそうに見るおばさんであった。


/*/


「マリエル、頼んでいた結果は出てるかい?」

「こちらに」


 水の塔の執務室に戻ってくるなり、口を開いたルシウスに、書類を差し出す。


「さすがは、名補佐官のマリエルちゃん。仕事早くてかっこいいね。そんなあなたにしびれるあこがれるう」

「なんですか、それは。しばかれたいんですか」


 いつもの漫才をしながらも、書類をめくって中身の確認をするその目は鋭い。


「現地への移動経路の確保は?」

「借り上げた建物に、転移陣を設置済みです。いつでも、移動可能です」

「了解。転移陣のコードを。移動する」

「面会の手配をいたしますか?」

「頼む」

「はい」


 てきぱきと指示を出すと、マリエルから転移陣のコードを受け取る。即座に、転移魔法を詠唱しようとして、ちょっと考えた。


「着替えてくるから、面会の手配しといて。そうだね、父親だけ呼んでおいて」

「了解しました」


/*/


 小一時間後、ルシウスは、パスク村――アイラの生まれ故郷の村で、アイラの父親と向かい合っていた。衣装は珍しく、塔の長としての正装である。きんきらで重たくて動きにくいので好きではないのだが、権威をちらつかせたいときには役に立つ。


「こちらで調査した結果です。ご覧ください」


 恐る恐る受け取った書類をめくるにつれて、アイラの父親――マルキスの顔が青ざめていく。


「うすうすは、お気づきだったのでしょう?」

「…はい」


 読み終わったのを見計らって声をかけると、マルキスはがっくりと肩を落とした。


「奥さまが、アイラ嬢を、いやアイラ嬢だけ(・・)を嫌っていることもご存知でしたよね」


 うう、と呻く。


「どうされますか?奥さまを選ばれるなら、アイラ嬢は正式に私の養子として迎えます。その場合は、今後一切の関わりを持たないことをお約束していただきます。手切れ金はお渡ししましょう」

「そ、そんな…」


 やつれた顔をすがるようにあげるマルキスを見るルシウスの目は冷ややかだ。


「アイラ嬢を選ばれるなら、魔術師の島に住居と職を用意しましょう。ただし、奥さまとの縁は切っていただく。ああ、奥さまには手切れ金をさしあげますよ」


 どちらを選ばれますか?と、ルシウスは内容とは裏腹の爽やかな笑みを浮かべながら再度聞いた。

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