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繋がる絆  作者: 結城由良
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残念すぎる美青年

三題噺「見習い魔術師の少女」「魔術師の杖」「魔術師の島」を使って適当に書き始めたので、作者にも行方がわかりません!


うは、データ整理してて、「魔術師の島」と書くべきところを「魔術師の塔」と書いてしまっていたことを発見><

すんませんすんません。

修正しますた(2011/08/18)。

 くすんだ赤茶の髪と茶色の瞳の少女――アイラは、その小さな――16歳という彼女の年齢にしては少々未発達なそれをかなり気にしていた――胸を不安と期待でどきどきさせて、石でできた通路を急いでいた。走るのは禁止されているので、できるかぎり早足で。


 いくつかの角を曲がり、通常は彼女のような見習い魔術師が来ることはない区画に入る。この区画は、しんと静まり返っていており、空気が重い。見習いのおぼろげな感覚でも、ぴりぴりとした魔力の圧力を感じる、そこはそんな場所だった。


 その圧力に幾分顔をこわばらせつつ、ひとつの大きな扉の前で止まる。がっしりと重厚な、樫でできた扉、そこについたノッカーに恐る恐る触れ、こんこん、とノックをした。


――開いています。お入りなさい。


 中から響く声――それは心に直接響く「心話」であったのだが――に、アイラはびくびくしつつ、扉を開けた。その重そうな外観にもかかわらず、扉は軽々と開いた。


 部屋の主は、書類から顔を上げ、おずおずと扉から入ってきた少女を見て、顔をほころばす。なんというか、おびえる小動物のようで、かわいい。そう思った主であったが、その感想は心にしまっておいて、やさしく問いかけた。


「見習い魔術師2級のアイラ、ですね?」

「は、はいい!」


 しかし、なるべく優しくした声音にもかかわらず、少女はしゃちほこばって、答える声も裏返っている。主の笑みが苦笑になった。


「楽にしてください。今回は昇級筆記試験合格おめでとう」

「あ、ありがとうございます!!」


 とはいえ、そのアイラの反応は主――この水の塔の長であり、世界でも数少ないS級魔術師であるルシウスを前にしては、無理もない反応とも言える。目を白黒させて、ぐるぐるしているアイラをこれ以上追い詰めてもかわいそうと思ったか、ルシウスは事務処理を進めることにした。


「アイラさん、これからあなたには昇級実技試験に挑戦していただきます。期限は3日。銀の月15の日正午までに、あなたがこれから使う魔術師の杖を確保してきてください」


 言い渡された課題にアイラの表情が引き締まった。


/*/


 ルーシャジア大陸の西側近海に浮かぶ「魔術師の島」には、五大要素(火、土、木、水、風)のそれぞれを専門とする5つの魔術師の塔がある。今回見習い魔術師1級への昇級を受けるにあたって、アイラはその適性から水の塔へ向かわされた。3級、2級と基礎と汎用の魔術を学んできたが、1級からは適性を考慮した専門化が進んでいく。所属も、初心者の塔から各塔へ移される。昇級試験に合格すれば。


 昇級試験に決まった時期はない。何しろ魔術師の適性を持つものは少なく、また3級から2級と進んでくるものも多くはない。見習いとはいえ2級を修められたというだけでも、貴重な存在なのである。そのため、本人が準備ができたと思えば、指導魔術師(メンター)に申し出て、随時受けることができる。昇級試験としては、筆記試験が5科目に、実技試験1科目が課せられていた。アイラは3日にわたる筆記試験をなんとかクリアして、実技試験の課題を受け取りに来たのであった。


「魔術師の杖、ですか」

「そう。これまでの基礎汎用魔法の杖では、これからの専門魔法の行使には魔力ロスが多くなるからね。水系魔術に特化した魔術師の杖を用意しておいたほうがいい」


 呟くように反復したアイラの言葉に、ルシウスはうなずき、説明を加えた。


「つまり、水系魔法の増幅効果があるものが望ましい、と」

「そういうことだね」


 よくできました、というようににっこりと微笑むルシウスに、アイラはそばかすの残る頬をぱぁっと染めた。絹糸のような金の髪に整った容姿のルシウスの微笑は、特に男性経験の少ない少女にとっては殺人的である。


「水系魔法の増幅効果の強度が高ければ高いほど、評価も高くなる、と思ってくれてかまわない」

「……わかりました。製法や材料についての制限はありますでしょうか?」

「材料としては基本的にこちらで用意してあるものを使用してもらう。製法に関しては特に制限はないが、水の塔の第三実習室を使用すること。設備としては、今までのものと同等以上のものだと思うよ。材料もそこに置いてある。鍵はこれだね」


 すい、と近づくと、アイラの手をとり、ルシウスは手に持っていた鍵をそこに握らせた。


「▼□☆◎■△!!!」


 声にならない悲鳴(?)をあげてのけぞるアイラに、ルシウスはいたずらっぽく笑ってみせた。


「行き方は鍵に記録してある。使い方はわかるね?」

「わっわかりまっ!!」


 アイラは撃沈した。


/*/


 心臓に悪い!悪すぎる!!!


 まさしく文字通りよろけながら、ルシウスの執務室を辞去してきたアイラは、通路でひとしきりぜーはーぜーはーと息を荒くしながら文句を呟いていた。ただでさえ、S級魔術師の威圧に負けそうなのに、あののほほんとした美貌は反則である。「自覚のない女殺し」「残念すぎる美青年」など、主に女性魔術師の間で囁かれるルシウスの2つ名をしみじみと実感したアイラであった。


 とはいえ、ずっとそこで萎えているわけにもいかない。3日時間があるとはいえ、準備なども考えるとおちおちしていられない。アイラはため息をつきながら、渡された鍵――装飾のついた10cm程度の棒を正面にかざして、呪文を唱えた。


≪導線現出≫


 鍵に篭められた呪文が発動し、その鍵が開けるべき扉までの道筋が淡く輝く線として空中に出現した。それを辿っていけば、第三実習室までは行けるだろう。


はあ、


 と、もう一度大きなため息をついた後、頭をぶるっと振ったアイラは色々忘れることにして、足を踏み出した。


「ため息をつくと幸せが逃げちゃうんだゾ?」


 その様子を≪第三の眼≫で見るともなく見ていたルシウスが、にやにやしながら呟いたなどということは、アイラに知る由もなかった。

ルビの振り方修正。

タイトル修正。

2011/08/18

美男子→美青年に統一(たぶんどうでもいいけど気になった)

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