忘れられている
世界の海で起きていた海面上昇は、最初は南極やグリーンランドなどの氷河が少しずつ溶けていただけだった事により、地球温暖化による水位の変化も少しずつ1年で1〜2センチ上昇しているだけだった。
だけどある日、南極やグリーンランドの少しずつ溶けていた氷河が崩壊し一気に溶け出した所為で、突然海面が1日で10数メートル前後も急上昇する。
その所為で海岸沿いに住んでいた多数の人たちが海に呑み込まれた。
国や自治体は急激な海面上昇により海に呑み込まれた被災者の救助を、敏速に行い始める。
自衛隊の隊員だけで無く、消防官や警察官など関係省庁の人員が動員され救助作業が開始された。
ただ長大な海岸線を有する日本では、民間人の有志を含めての救助活動も手が足りず難航。
世界中の海に面した国々全てが殆んど同時に同じ状況に陥った為に、近隣の国々に助けを求める事も出来ない。
うちは海岸まで迫り出した山の上に家を建てていたお陰で、急激に進んだ海面上昇による直接の被害は受けなかった。
直接の被害は受けなかったんだけど、街から海岸沿いに通じてた道路が水没したんで内陸部に逃げる事が出来ず、救助を求める。
そしたら今のところ安全が確保されているからって理由で、うちの救助は後回しにされた。
でも、海面が突然10数メートル上昇して終わりじゃなかったんだ。
上昇した海面は下がること無く、寧ろ1日過ぎる毎に約1メートルずつ海面が上昇して行き、急激に海面が上昇したあの日から40日程経った今、60メートル近くまで上昇している。
60メートル近くまで海面が上昇した所為で、うちの玄関先まで波が押し寄せているんだけど、なんか救助が後回しにされているっていうより、忘れ去られているように感じている今日この頃なんだよ。