プラモデル起動
主人公は、捨てられたプラモデル。そんなプラモデルはある時意志を持つ。心を持つ。機能を持つ。そして、誓う―――こんな自分にしたヒトに復讐してやると………
プラモデル視点で描くヒトは………
壱
気付いた時には自分は様々な色形のプラスチックを組み合わせて出来た言わば合成体だった。ごみ捨て場に置いてあった、ひびの入った、綺麗に磨かれた銀メッキで自分を見て深く失望した。銀メッキはカガミと言うらしいが、カガミは自分を失望させる物だと知った。
否、カガミはヒトを、映した物を正直に写す物と聴く。偽りでは無いと聴く。自分は自分でも認めたくないくらい悲しい物なのだ。こんな無様で醜くて、作ったヒトですら捨てたくなるような。プラモデルはヒトを自分勝手で我儘な者と、ヒトを自分より醜い者だと思った。
そして、意思が出来てから何回も何回もタイヨウという眩しく光る球が宙に円弧を描いて出て来たり、いなくなったりを繰り返し見ているうちに、自分にまた新たな変化が起きた。気になってタイヨウの行き先を追いかけているうちに自分はごみ捨て場にはいなかった。何故か見たこともない、何も置いていない何も無い場所にいた。そこは一面灰色で、プラスチックを少しずつ侵食して行く。暑かった。
自分が溶けそうになり、自分が無くなると思うと何故か怖くなった。更に歩いていると例のヒトが睨んで来たり、足早に自分から離れようとしていた。自分をヒトが避けていた。理由が分からない。が、ヒトは自分を冷たく睨み付けて来る。
それは自分を改造する時のヒトが見せた好奇心に満ちた楽しげな目では無かった。
何故かそんな態度に寂しくなった、悲しくなった。理由は分からない。しかし悲しくなった。
結局プラモデルの歩みは次第に遅く、弱々しくなりいつの間にか、疲れてしゃがみ込んだ。
プラモデルがしゃがみ込んだのは高く高く聳え建つ固くて綺麗な、自分とは違って完璧な物の集合体。一番上を見ようとすると首が軋み動かなくなる、とれそうになる。
そして、プラモデルは完璧と自分の高く大きな違いを実感してしゃがみ込む。そして何故か悔しさ、無念さ、無力さ、虚無感が積もりに積もり、タイヨウの後押しでプラモデルのプラスチックが溶けて液化して、暑い暑い灰色の床に零れ落ちる。