廃墟の夢
AIイラストを趣味で作成しています。意外と面白いイラストができますので、イラスト由来の妄想を小説化しています。ですから挿し絵がメインです。
普段はR18ノクターンへ投稿させていただいていますが、エログロなしで纏められそうな話だったんで、こちらに投稿させていただきました。
「ここはどこ?」
見知らぬ場所。大きな遺跡のような建物が集まっていて、その建物のほとんどが崩れかかっているようだ。
「なぜ、こんなところに・・・」
大昔には繁栄していただろう廃墟の街中に、私はひとり立ち尽くしていた。
「え、何の音?」
突然、どこか遠くから地鳴りのような音が聞こえてきた。
振り返ると、砂嵐が押し寄せていてあたりが砂一色に染まっていく。風も強い。
「きゃっ、どこかに逃げなきゃ。」
私は全身に砂を浴びながら、崩れていない近くの建物に飛び込んだ。
目の中に砂が入ってしまい、痛くて目が開けていられなくなる。泣きながら建物の奥に避難する。
砂嵐は激しさを増し建物の中にも容赦なく砂が押し寄せてくる。
私は地下へと続く階段を見つけた。
背後から聞こえる砂嵐の音に急かされるように、私は暗い階段をどんどん下りて行った。
突然、足元の階段が消えた。おそらく崩れていたのだろう。あわてていた私には影と穴の区別ができなかった。
私は暗闇の中に落下してしまった。
「きゃああ。」
私は真っ暗闇の中、立った姿勢のまま落ちていった。
「ああああ。」
次の瞬間足が地面に着き、私は思わず膝をついた。膝頭から激痛が走った。
「痛い。」
私は膝の痛みのせいで、しばらく闇の中でうずくまっていた。
「いたたた・・・。」
しばらくすると、頭上から光が射してきて、目が慣れたのかあたりの様子が見えてきた。
洞窟が奥へと続いている。
痛む足を引きずるように洞窟を進む。
洞窟の高さはいろいろで四つん這いで進まなければならないところもあった。
また、洞窟の中はひどく蒸し暑い。汗が出てきた。
身体中が汗と砂で汚れていく。
なおも進んで行くと、爽やかな水音が聞こえてきた。
「うわー、綺麗。」
洞窟の中に 滾々と水が湧き出る泉が現れた。
あたりを見回して人の気配を感じなかったので、私は服を脱いで泉に滑り込む。
「ああ、気持ちいい。」
火照った体に冷たい泉の水が心地いい。
砂だらけの髪を解いて泉の水で洗う。
「あああ、さっぱりする。」
身体と髪に着いた汚れを洗い流して満足していると、洞窟の上の方から人の気配が感じられた。
「え」
上を見上げると、そこに半裸の男が槍を構えて立っていた。投げる槍だ。
私と目が合うと、その男が言った。
「ここで何をしている。すぐに上がってこい。」
私は両手を上げて降参の意思表示をしながら言った。
「服を着るので、少し待ってください。」と
男は「はやくしろ。」とだけ言った。
身体や髪を濡らしたまま服を着て男の待っている方へ歩いていくと、そこには同じような風体の男たちが4、5人いた。みな同じような槍を持っている。
男たちは両側から私の腕をつかみ、最初に私に声をかけた男がこう言った。
「罰当たりが。こっちへこい。」
男たちは私を広場のようなところに連れていき、そこに座らせた。
男たちの長にあたるのか、老いた男がやってきて、私にこう告げた。
「お前は聖なる泉を穢した。罪を贖わなければならない。」と。
私は必死に弁明をした。
「知らなかったんです。あそこが聖なるところだとは。お許しください。助けて下さい。」
「なんでもしますから、どうか。」
後に立っていた男の一人が私の髪の毛を器用にお団子に束ねた。
「え、なに」
驚いた私が振り向くと、そこには大斧を構えた男が正に私の首筋に狙いを定め、横に凪ごうとしていた。
「きゃああああ。いやああああ。」
私は悲鳴を上げるしか術はなかった。
そこで目が覚めた。
「ハア、ハア、ハアア。嫌な夢だった。こんなの初めてだ。」
私の身体は汗まみれになっていた。
早くシャワーを浴びて学校に行こう。今日は転校初日なんだから遅刻するわけにはいかない。
( 了 )
この短話は、連載小説の一部分を切り出したものですが、短編としてまとめさせていただきました。
なお、同じ話のR18版を近日中にノクターンへ投稿しようかと思っています。