エピローグあるいはプロローグ
岬の、一等良い場所に、ぽつんと墓石が立っている。
なんとも侘しい風景だ。
花束の一つでもあれば、もう少し華やかに見えるはずなのだが。
花――それは、マリーの一番好きなものの一つだった。
私が、かつて最も愛していた女性、マリー。その女性が好きだったものをここに手向けたのならば、墓の下の彼女はきっと、呆れて私を笑うだろう。
だから私は、この想いだけを、手向けることにした。
否、これはこれで、呆れられているのかもしれない。
本当に気の利かない男ね、と。
だが、これでも、ようやく真人間になれた男なのだ。
――何度生まれ変わっても、最悪の人生しか待っていなかった。
会えなくても地獄。会えても地獄。
そう思いながら、気が遠くなるような生を、馬鹿みたいに生きてきた。
――本当に、馬鹿だった。
今の生を終えた後、私はどうなるのだろうか。
全てを忘れて、真っさらな幸せを求めて生きるのだろうか。
それとも、彼女の記憶を胸に抱えたまま、彼女を忘れる旅に出るのだろうか。
――いいや、違うだろうな。
今度こそ、文字通り、地獄に落ちるのかもしれない。
もう二度と彼女に会えぬ場所で、それでも彼女のことを忘れられずに、業火に焼かれる。
焼かれても焼かれても記憶は消せず、一生自分の罪に苛まれる。
そうだ、それが一番良いのかもしれない。
そうすれば、彼女の隣にいられた時間が、どれほど貴重で幸せなものだったか、馬鹿な私にもよくわかるだろう。
それから、彼女にもう二度と会わずにすむ。
彼女はもう二度と私に会うことなく、どこか遠い場所で幸せに暮らすだろう。
物書きリハビリです。
そういうわけで、短めです(プロローグ? エピローグ? のみ、という……)。
ここまで読んでいただき、深謝致します。