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第七話 箒と空

「どうや? 空を飛ぶ気分は?」


 俺達はあの後箒の扱い方を教わった。

 どうやらあれは念を通じて箒に魔力を送っているらしい。魔力量によってスピードを制御する。初めは難しかったが慣れれば簡単なものだ。


「ああ悪くないな」


「気取りやがって顔がにやけてるぞ」


「私はまだ景色にまで気が行きませんよ」


「まあまあ使ってれば慣れてくるから。それに魔法だってただ撃てばいいんやない、その場の状況に応じてスピード、数、威力。全部に魔力の操作がかかわってくるどちらにせよ習得せなあかんことやから」


「そういえばこんな地上から見えるように飛んでていいのか?」


「「あ」」


 俺が何気なくそう言うと二人は急いで仮面をかぶった。


「何やってんや自分らもはよかぶれ!」


「え? ああ」


 俺達は戸惑いながらも鍵峰さんか受け取った仮面をかぶった。


「やっぱり仮面をかぶってるのに視界が変わらないのはなんというか違和感があるな」


「魔道具なんて大体そんなもんや」


「そもそもこの仮面付ける意味ってあるのか?」


「この仮面にはな、認識阻害の効果があるんや」


「そういうことか、変に飛ばれてるとこ見られてもあれだしな」


「そーゆーこっちゃ」


 仮面......そういえば大事なことを一つ忘れていた。


「なあ将雅たちは俺たちの学校を襲撃したテロリストについて何か知らないか?」


「もしかして魔女教の事か?」


「魔女教?」


「始祖の魔女アブニールを崇拝するやからの事や。オレらはそいつらのことをそう呼んどる」


「アブニール......か」


「始祖の魔女アブニール。最初の魔女といわれているすべての元凶や」


「私も名前だけですが聞いたことあります。でもまだ生きてるんですか?」


「さあな魔女が生まれたのは今から千年以上前の事や。普通の寿命なら死んどるとこやが」


 そんな話をしていると真弥が下を指さした。


「見えたで。今回の目標ターゲット


「どこどこ?」


「あれや、金髪の」


「あーあれね了解」


「んじゃいきまっか」


 俺達は地上へと帰還するとすぐに物陰に潜んだ。


「良ーく見ときいや」


 魔女が一人になると将雅は道に出て何かを唱えた。


「一撃で仕留める。――銃雷ガンライ


 将雅の前に雷の矢の様なものが現れた。そして将雅はそれを右手でまるでそこに弓があるかの様に引く。


 あれが将雅の魔法。


 俺が感心していると真弥が小さく呟いた。


「気づかれた」


 それと同時に目標が将雅の方を向いた。


「やべっ!」


 将雅はとっさに矢を放ったが目標の防御魔法に防がれた。それだけでなく目標は将雅に向け反撃の魔法を放った。将雅に魔法が当たりそうになったその瞬間、真弥が魔法を唱えた。


「アスターロ」


 魔法が将雅を襲う。将雅はそれに屈せず、微動だにしなかった。いや正確には動けない状態にあった。真弥が魔法を唱えた瞬間から将雅の体は灰色に染まり、まるで石像のようになっていた。


「解除」


 真耶がそう言うと将雅は元の体に戻った。


 何とか窮地は脱したが問題はほかにもあった目標の魔女だ。直線が長い道ということもあり姿は見えるが距離は離されてしまっている。そして魔女の目の前には分かれ道、ここで逃すのは致命的だ。


「しゃーない、やるか」


 将雅が宙に手をかざすと宙に一瞬ゆがみのようなものが現れそれが消えると先ほどまではなかった。”槍”が将雅の手に握られていた。

 膝を曲げ腰を低くし構えをとり一言。


「――隼雷しゅんらい!」


 その瞬間俺の目の前を一本の光が横切った。


 残っているのは風と焼かれたような地面の跡。何が起こったのかわからなかった。


「さ、終わったことやし行こか」


 俺たちが将雅のとこへと向かうとそこには魔女が両足から血を流しながら倒れていた。恋那はすでに少し目を細めている。

 真弥は手早く手錠をかけると魔法で魔女を治療をした。


「ちょっとだけ大人しくしててくれ」


 将雅が目標を無理やり立たせると目標は必死に魔法をと思われるものを唱えているが何も起こらない。おそらくあの手錠は魔道具なのだろう。


「離してよ!」


 目標が暴れ始めるが将雅が何事もないように抑えている。


「なんで魔女ってだけで捕まらないといけないのよ!」


 目標のその急な言葉に俺と恋那は固まってしまった。


「......すまない、これも仕事なんや。悪いようにはしないそれは約束する」


 必死に抵抗していた魔女ももうどうしようもないことを悟ったのだろう、あきらめたのか暴れるのをやめた。


「そろそろ来る時間よね......」


 真耶が腕の時計を確認して言った。


「来たぞ」


 将雅と同じ方向に目を向けると一台の車が止まっていてそこから一人の男が下りてきた。

 白髪頭に少し伸びた髭、死んだ魚のように生気のない目、よろよろのコートに緩みきったネクタイ。年齢はおそらく40から50と言ったところだろう。


「遅い」


「何言ってんだ時間ピッタしじゃねーか」


「それは魔女を引き渡す予定時間だろ! 任務開始は一時間前だ!」


「どうせお前らがいれば十分だろ。......それに新入りもいるみたいだしな」


「ど、どうも」


床沼とこぬま銀次ぎんじだ。大体こういう捕縛した魔女を本部まで送る役割をしている」


「黒神来叉です。でこっちが薔草恋那」


「知ってるよ、領から聞いた。まあ自己紹介はこんぐらいにして......ほらよ」


 そういうと床沼さんはコートのポケットから4つの封筒を取り出した。


「毎度あり~」


 将雅はそう言って封筒を受け取った。そして全員に分配した。


「なんだこれ?」


「にっひっひ。今日の報酬」


「俺らなんもしてないのに」


「もらえるもんは貰っとけ」


「ま、そういうことだ。どうせ本部の金だ。気にするな」


 俺はそーっと封筒を開けると中身を見た。中には1枚の札があった。


 まさかこれは!?


「万札!? 本当に存在していたとは・・・」


「お前今までどんな生活送ってきてたんだよ」


「その先輩はちょっと特殊な家庭事情で」


「本当に貰っていいんだよな!」


「だからそう言ってるだろ!」


「まあ何でもいいが俺はもう行くぞ」


 そう言うと床沼さんは魔女を車に乗せた。


「これでうまいもんでも食え」


 床沼さんは今度は懐から財布を取り出すと一枚の札を将雅に渡した。


「俺からの初任務達成祝いだよ」


 それだけ言うと車に乗り込み去っていってしまった。

 将雅と真弥は床沼さんから受け取った札を見て驚愕の表情をしていた。


「あの金にがめつい銀さんが・・・一万円も!?」


「また万札!?」


「先輩はそろそろ慣れてください」


「まあまあ今日は奮発してどっかで食べて帰ろか」


「それじゃ焼肉にでも行くか!」


「一万円で足りますかね?」


「なーに足りん分は出してやるよ!」


「よっ! 将雅太っ腹!」


 この後、四人で焼き肉を食べてマンションへと帰った。



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