2話 おす猫と匍匐前進
これまでのあらすじですにゃ~。
坂森家のペットとして僕は現代で暮らしていましたにゃ。
坂森家の長兄「照焼」の趣味<ダンス>を見ていた僕は照焼の放つ光に包みこまれましたねぇ。目を覚ますとそこは見たこともない草原が広がっていましたにゃー。
2月10日 PM 10:00 Field ハイウィンド平原
まー君
「・・・いやーん」
大きなあくびをするおす猫がいた。
まー君
「よく寝ましたねぇ、気分がいいですにゃ~」
おす猫はそう話した後、毛づくろいを始めた。
寝てる間についた寝ぐせを整える。おす猫のエチケットだ。
まー君
「それにしてもここはどこですかぁ?ドッキリにしては壮大ですねぇ~」
おす猫は首を振って、辺りを見渡した。
日はすっかり落ちていて、真っ暗な空には月が浮かんでいる。
まー君
「照焼~!鯵之開~!どこですか~!」
おす猫は飼い主の名前を叫んだが、返事が返ってくることは無かった。
まー君
「パパ上~!ママ上~どこにいるんですか~!っていうかここどこですかぁ~!!!」
草原に響き渡るおす猫の甲高い声。返事がない事に不安を抱き始めたおす猫は
まー君
「ワオーン!ワオーン!!」
と雄たけびをあげ始めた。
すると今度は返事が返ってきた。
漆黒の巨鳥
「クアアアアアアア!!!!!!!!」
まー君
「いやぁーーーーん!!!!」
おす猫の声に反応したのはハイウィンド平原<夜の王鳥>クローデスだったようだ。
縄張りを荒らすおす猫はどこかと空を飛びまわっていた。
まー君
「やってられないですにゃー!見つからないように逃げるにゃー!」
クローデスの視界に入らないように匍匐前進のように草原を進むまー君であった。
2月11日 AM 5:00 Field ハイウィンド平原外れの小道
まー君
「死ぬかと思いましたにゃー」
とぼとぼと小道を歩くおす猫がいた。
這いながら逃げることおよそ6時間なんとかクローデスの縄張りから抜け出したのである。
まー君
「というかここはどこですかねぇ~。夢なら早く覚めてほしいですにゃ~」
小道を歩きながらおす猫は現状に文句を言い始めた。
まー君
「っていうかここどこですにゃー!なんで照焼のダンスが光ったのか未だに意味不明ですにゃー!その照焼はどこですにゃー!餌がほしいですにゃー!高いのじゃないと食いませんにゃー!!」
愚痴が止まらないおす猫は肩を張って歩いていく。
おす猫がぷりぷりと怒りながら歩いていると、道先から話し声が聞こえた。
どうやらこちらに向かって来ているようだ。
警戒心強めなおす猫はサッと草の陰に身を潜めた。
・・・話し声が聞こえる。
明るい男の声
「これからよろしくなミコト!お前がパーティーに来てくれて助かった!」
大人しそうな女の声
「うん・・・!皆の役に立てるよう、私頑張るね・・・!」
軽い口調の男
「まぁそんな緊張しなくてもいいぜ、心配せずとも手取り足取り教えてやるからよ!」
明るい男の声
「まったくお前ってやつは・・・!」
軽い口調の男
「冗談だよ、冗談・・・。これだから堅物タンクは・・・ねぇ?ミコトちゃん」
3人は、おす猫が歩いてきた道へ去っていった。
人影がない事確認したおす猫は草陰から飛び出した。
まー君
「・・・興味深いですにゃ~」
おす猫は先ほどの会話内容について思考を巡らせた。
まずパーティーという単語。
これは照焼がやっていたRPGゲームに出てきた単語で意味は冒険を共にする仲間だったはず。
そして堅物タンク。
堅物はよくわからないが「タンク」もゲームで聞いたことのある単語だ。
意味は仲間を守る盾役だったはず。
( ゜д゜)ハッ!
おす猫の考えは一つの答えを導いた。
まー君
「いや~ん!ここ異世界ですにゃ~~!!!」
いかにもめんどくさそうなおす猫の叫び声が木々を揺らした・・・気がした。