もふもふたちと、初雪を見る。
────マ……お……て……くださ……
遠くから、くまくまの声が聞こえてくる気がする。するとその声は、だんだん大きく聞こえてきて。他のぬいぐるみたちが私のことを呼ぶ声も聞こえてくる。
そして。
「ママー!おちて(起きて)くだしゃい!」
「ママン!ママン!大至急起きて外見てみてぇ!」
「マ……おほんっ!とにかく起きてみてください!」
「母上!母上!起きるのにゃ!!」
「マ、ママさん。お疲れのところ早くに起こして申し訳ございませんが、外を見てほしいです」
と、ぬいぐるみたちは布団に潜っている私の上で、ぴょんこぴょんこと跳ねながら私を起こす。
「う”ー……なぁに~?……って、まだ朝の6時前じゃない!まだ起きる時間じゃないじゃ~……ん……」
寝ぼけ眼でスマホを手に取り、時間を見ながら私はそう言うと、また布団に潜ろうとした。けど、ぬいぐるみたちが私の布団を思いきりひっぺがした。
「も~なに~!?てか、さっ、寒すぎ!!この寒さ、もしかして雪降ってるんじゃない!?」
と、私が言うと、ぬいぐるみたちは顔を見合わせそして「せいかーい!」と声を合わせて言った。
「そうなんでしゅよ!その『雪』が降ってるんでしゅよ!それを見せたくてちょっとお仕事に行く時間より早いでしゅが、声をかけたのでしゅ」
と、くまくまが私のお腹の上で座りながら言った。
「ええ~……たしかに、そろそろ雪降るかも~……って、ニュースで言ってたけども……」
。.:*:・'°☆
「ママン、はやくはやくぅ~!」
「ぐぅおおおお!さっさむううっ!!」
私はベッド傍に投げてあった半纏を羽織りながらリビングに行き、ベランダに出ようと掃き出し窓をカラリと開くと、猛烈な冷風がびゅおおおっ!と私を襲った。
ぬいぐるみたちは嬉しそうにぴょんこぴょんこと跳ねながらベランダに出る。私は身を縮めガタガタと体を震わせながら、ぬいぐるみたちの後ろからベランダに出る。そこには。
「うっ……わああああ……初雪だ~……」
ふぁらふぁらと、雨粒のような雪が降り注いでいた。
「雪にゃー!雪触るのにゃー!」
「ちょ、ちゃとにゃんさん!そんなに身を乗り出したら落ちますよ!!」
と、ちゃとにゃんは大興奮しながらベランダの手すりから身を乗り出し、雪に触れようとしていた。柴田さんがキャンキャン吠えながら、ちゃとにゃんの背中を掴む。他のぬいぐるみたちは、手すりにぶら下がりながらふぁらふぁらと降る雪をのほほんと見ていた。
私の住んでいるところは、あまり雪の降らないところで。降るといっても、毎年少しの期間しか降らない。滅多に降らないから、毎年雪が降る度ぬいぐるみたちは雪を見てはしゃぐ。
私も子供の頃は初雪を見ては『積もるかな~?』ってはしゃいだけど……今は───
「こっ、これから仕事なんですけど!?寒くて行きたくねーーー!!」
初雪を見てはしゃぐぬいぐるみたちを尻目に、私は声を震わせながら思わずそう叫んだのでした。