もふもふたちと、秋の遠足。③
大家さんと別れた後、色んな人たちがぬいぐるみたちに声をかける。ギャルっぽい女子高生たちやおばあちゃん、疲れたサラリーマンっぽいおじさんも足を止め、ぬいぐるみたちと話しそして、触れて幸せそうにしていた。
ぬいぐるみたちを連れて散歩するたびこうなる。まあ、しゃべったり動いたりするぬいぐるみは珍しいからね。しかも、可愛いし。
「バイバーイ!ぬいぐるみさんたち!」
ぬいぐるみたちを撫で、ランドセルを揺らしながらにこにこ笑顔で駆けていく女の子の背中をみんなで手を振りながら見送り、ぬいぐるみの乗ったベビーカーをカラカラカラ…と動かす。
体に当たる風が少し肌寒い。ああ、もう秋なんだなぁ…って、肌で感じる。
「ここでいいかな?」
ベビーカーを押してると、落ち葉のたくさん落ちている公園に着いた。その公園に入ると、奥にあった六角形の屋根の東屋のベンチに座った。するとぬいぐるみたちもベビーカーから出てきて、ベンチに座る。
「さぁて、ここでごはん食べよ♪」
と、背負っていたリュックを膝に置き、中から弁当箱と水筒を取り出した。弁当箱を開けると、少し形の崩れたサンドウィッチが入っていた。
「ありゃりゃ、移動中に崩れちゃったか。まあでも、味はかわらないからね。いただきます」
と、私がサンドウィッチを手に持ち言うと。
「「「「「いただきます!」」」」」
と、ぬいぐるみたちは私の両サイドに並んで座り、手にサンドウィッチを持つ私の真似をする。
「う~ん、おいふぃ!」
と、私がもぐもぐとサンドウィッチを食べてると、ぬいぐるみたちはもぐもぐと、食べてるところもまねっこする。
「それにしてもイイナァ~。なんだかいつもよりおいしそうにたべるネ」
と、うさろんが私の食べてるところを見ながら、羨ましそうに言う。
「おいしいよ。なんだろ、おうちで食べるご飯もおいしいけど、外で食べるごはんはもっとおいしく感じるんだ~♪」
「そんなことで美味しさがかわるものなんですか?」
と、柴田さんが聞く。
「かわるね~。まあ、気持ち的なものなんだろうけど、不思議だよね~」
私はもふもふとサンドウィッチを食べ、持ってきたお菓子も食べる。ぬいぐるみたちは私のまねっこにあきると、公園の落ち葉を拾ったり、積もった落ち葉に飛び込んだりする。
「あんまり汚れることはしないでね~!汚れたら洗濯だからね!」
ぬいぐるみたちがきゃっきゃとはしゃいでいるところを、東屋の下で見守る。
「はぁ~…もう11月かぁ。気づいたら、今年も残りわずかかぁ~…」
お腹いっぱいで眠くなってくる。ぬいぐるみたちのはしゃぐ楽しそうな声を聴きながら…うとうと…する。
秋の中から冬の気配を感じる…気がした。
。.:*:・'°☆
「さぁて、帰ろっか」
「「「「「はーい!」」」」」
ランドセルを揺らしながらおうちに向かって小走りしていると。ベビーカーにぬいぐるみたちを乗せた女の人とすれ違った。よく見るとぬいぐるみたちは、みんな動いて話していた。
すると、その中に…
「え?柴田…さん?」
私が前に大事にしていたぬいぐるみさんが…柴犬のぬいぐるみの柴田さんによく似たぬいぐるみさんがいた─…