もふもふたちのいない、一人暮らし。
「はぁ~…今日も疲れたな」
会社から帰ってきて、家のドアを開ける。
「ただいま~…」
しん…と静か。パタンと閉じたドアの音が室内によく響く。
私はすぐにお風呂に入ると、コンビニで買ってきた弁当を電子レンジで温める。今日はなんだかお肉が食べたかったから唐揚げ弁当にした。
「ははは!おもろ」
チンした唐揚げ弁当を食べながら、テレビを見る。
「終わっちゃった。う~ん…面白いテレビないな~…」
テレビのリモコンをピッピッと変えるけど、どこも面白い番組がない。
「ふぁ~…眠たいし、寝るかぁ」
ふあぁ~…と私は大きなあくびをすると、空になったコンビニ弁当のゴミをゴミ箱に捨て、洗面所に行って歯磨きをした。
歯を磨き終えると、私は寝室へと行く。
「ふぁ~…今日も疲れたなぁ~…」
大きなあくびをしながら、私はベッドに横になった。夏用の薄いタオルケットを被り、眠ろうとする─けど。
「…何だろう、何か足りない気がする。ていうか、何か忘れてるような…寂しい感じがする…」
帰ってきた時、いつも誰かが…いや、みんなが「おかえり~!」って言って抱きついてきたような気がする。
私がご飯を食べてたら、みんなわーわー騒いで私の膝の上を奪い合ってた気がする。
ベッドに入ったら、みんながごそごそとベッドに入ってきて、みんな私にくっついてきた気がする。
みんな…
みんな?
「みんな…?みんなって誰?私誰かと居たの?家族でも居たの?何でだろ?分からない…思い、出せない」
ベッド上で何度も寝返りを打つ。誰かを…何かを忘れてる─…そんな気がして、モヤモヤして眠れない。
忘れちゃいけない誰か…みんなのこと。忘れちゃいけないはずなのに…思い出せない。
「何だろう…気のせいかな?明日も早いから早く寝なくちゃ…」
瞼をぎゅっと瞑り、眠ろうとした…時。
『ママ!』
『ママン♡』
『マ…おほんっ!』
『母上ー!』
『ママさん』
そんな微かな声がすると。
『もふもふぎゅっぎゅ!』
ふわふわでやわわかなものたちに、抱きしめそして抱きしめられる感覚が、した。
「そうだ…私────」
「────はっ」
ぱちっと、瞼が開く。けど、辺りが真っ暗で何も見えない。
私は体を起こして部屋の電気をつける。そこには──…
「みんな…いる」
ぬいぐるみたちが、ベッドで眠っていた。私が電気をつけると、ぬいぐるみたちは目を擦りながら起きてきた。
「ん~…どうしましたか?ママ…」
くまくまがそう言った瞬間、私はぬいぐるみたちをぎゅううっと思いきり抱きしめた。
「うわあぁあ~!みんないる~!」
「へ?え??ど、どうしたんでしゅか!?何か怖い夢でも見ましたか?」
と、くまくまは動揺しながら聞いた。
「ううっ、うんっ!とっても怖い夢見てた~!みんないて良かったよ~!」
私は大泣きしながら、ぬいぐるみたちを抱きしめた。
お化けが出るより怖い夢を、私は初めて見た。