もふもふぎゅっぎゅ、いってきます。
「ねえ~……」
「「「「「…………」」」」」
「いい加減、みんな私の鞄から出てくれないかなぁ?」
「「「「「…………」」」」」
「もぉ~……」
私の仕事用の鞄に、ぎゅうぎゅうに入るぬいぐるみたち。
私が仕事に行こうとすると、こうして時々ぬいぐるみたちは私の鞄の中に入り、ぬいぐるみのフリをする。いや、フリっていうか、ぬいぐるみなんだけども。
「いつも言ってるけど、あんたたちを会社に連れていくわけにはいかないのよ。ごめんね」
そう言いながら、私はぬいぐるみたちをひとつひとつ鞄から出す。
「一回くらい連れてってくれてもいいじゃないでしゅか~!」
頬を膨らませ、ぷんすこ怒るくまくま。
「お仕事してるママンを見てみた~い♡」
長い耳と、まあるくてちいさなしっぽをぴこぴこさせながら、うさろんは言う。
「僕は、あなたがちゃんと仕事しているのか心配なだけであって、べ、別に寂しいからついていきたいとかではないので」
腕を組み、何故か頬を少し赤くさせながら言う柴田さん。
「我輩も母上と共に仕事したいにゃー!」
私の足にしがみつきながら、にゃーにゃーと言うちゃとにゃん。
「あ……その、わたしはただ……ママさんと一緒に……」
私の足元で、もじもじしながら言うスネービー。
「私だって、あんたたちのこと会社に連れていきたいわよ。でも、ダメなの。ごめんね」
私がそう言うと、しゅん……とするぬいぐるみたち。
すると、私は。
ぎゅう~っ。
ぬいぐるみたちを、まとめて抱きしめた。
「はい、もふもふぎゅっぎゅ~!」
ぎゅ~っと抱きしめると、ぬいぐるみたちはきゃいきゃいと嬉しそうにはしゃぐ。
「じゃ、あんたたちと早く会いたいし、なるだけ早く仕事終わらせて帰ってくるから。お留守番の方よろしくね」
「わかりました、ママ!留守はしっかりまもりましゅので、頑張ってきてくだしゃいね。あ、でも、あんまり無理しちゃダメでしゅからね」
と、両腕をいっぱいいっぱいに上げ、パタパタとさせながら言う、くまくま。
「うん、ありがと。じゃあ、いってきます」
「「「「「いってらっしゃい」」」」」
かわいいぬいぐるみたちに見送られなからが、私は会社へと急いだ。