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もふもふもふもふふっ!! ~ ぬいぐるみのいるせいかつ ~  作者: 徳田タクト卍
☆ぬいぐるみたちと、もふもふでふわやかな日常☆
34/64

番外編 episode3 ─ 柴田さん(前編) ─

柴田さんの昔のおはなし。切ない&ちょっとした残酷…?描写あり。

おはなしが長くなりそうだったので、前編後編にしました。



 ────パラッパラパラパラ…ザアアアアア…


 

 雨が降ってきた。日中にしては部屋の中が薄暗いからもしかしたら雨が降るかもしれないと警戒していたけど…やっぱ降ってきた。

 雨が降ってくると僕は窓から離れ、絵本に集中してるフリをする。雨に怖がっているところを他のぬいぐるみたちに気づかれたくない。恥ずかしい。


 僕は雨が苦手だ。それにはワケがある。


 僕は今「主さん」という人に大事にされているが、少し前は違う。「かのんちゃん」っていう女の子に大事にされていた。


 けどある日───




『うわぁ!!柴田さんの首がちぎれちゃった!!』


 かのんちゃんとかのんちゃんのお母さんと公園に遊びに来ていた時のこと。壁から出てる釘の頭が僕の首にひっかかり、ビリビリっと首の部分が破れてしまったのだ。

 破れた時はびっくりしたけど、僕はぬいぐるみだから痛みはない。


『ううっ…どうしよう。ごめんね柴田さん、痛いよね』

『ううん、僕は痛くないから。それより、かのんちゃんは僕のこと直せそう?』

『ごめんなさい、わたし針はまだ使っちゃダメってママに言われてて。そうだ!ママに柴田さんの首、直してもらえるようにお願いするね!』

『そうだね、そうしてくれると助かるな』


 そう言ってかのんちゃんは、公園のベンチのそばでママ友とか言いう人たちと話しているお母さんのもとに急いでくれた。


『ママ!』

『どうしたの?かのん』

『あのね!柴田さんの首のところがね、ひっかけちゃって破れちゃったんだ!ママ直して!』


 そう言いながらかのんちゃんは、僕の首の部分をお母さんに見せた。すると、傍にいたママ友たちが。


『あらあら、ずいぶんくたびれたぬいぐるみさんね』

『私のところでは、こんなにくたびれる前に処分して、新しいぬいぐるみさんを買ってあげてるわよ~』

『私のところもよ~。だってねえ?お友達に『みっともない』って言われていじめられたら大変ですからねぇ~』


 オーッホッホッホとママ友たちは高笑いした。すると。


『そ、そうね、けっこう持たせすぎちゃったわね。ほら、かのん!首もちぎれちゃったことだし、そんなぬいぐるみ早く捨てなさい!』

『へ?ちょ、ママ!!』


 かのんちゃんのお母さんはそう言いながら、かのんちゃんから僕を乱暴に奪うようにして取ると…


 ボスっ!!


『柴田さん!!』


 僕は公園のゴミ箱に投げ入れられた。


『ほら、新しいぬいぐるみさんを今から買ってくるから!』

『嫌だ!柴田さんがいい!柴田さんを助けてあげて!』

『わがまま言わないの!さ、行くわよ!!』

『いやぁー!!柴田さーーん!!』

『かのんちゃん!!』


 僕はゴミ箱の中から必死にかのんちゃんを呼んだ。かのんちゃんも僕のことを泣きながら呼ぶけど、お母さんにずるずると引きずられるようにして連れていかれ─そして、公園から去っていった。




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― 新着の感想 ―
[一言] し、柴田さん!大変です!だ〜れか〜〜!!なんとかしてあげて! …なんと! 来週までこのまま!?えーっ? 柴田さん、闇堕ちの危機!
[良い点] なんか、異世界恋愛ジャンルに通ずるママ友同士の嫌~な感じがリアルで、余計に、かのんちゃんと柴田さんの引き裂かれた悲しい気持ちが、とても伝わります。m(_ _)m
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