もふもふたちが…おっきくなっちゃった!?②
『くっ、くまくま!?何でおおきくなってるの…って、え!?みんなも!?』
くまくまだけじゃなかった。私の周りを囲んでいた、高くそびえ立つ壁は、巨大化したぬいぐるみたちだった。
『なっ…何であなた、縮んじゃってるんですか!?』
『キャー、ミニミニママンかわゆす~♡』
『母上ちびにゃー!』
『マ、ママさん、なにか悪いものでも食べたんですか!?』
大きくなったぬいぐるみたちが、私のことを見下ろしながら言う。
『ええ?何で私小さくなってるの?それとも、あんたたちが大きくなってるの?』
『わかりましぇんね、きづいたらこうなってたんでしゅ…』
くまくまは体を屈めて、大きくてもふもふとした顔を私のそばに寄せた。…くまくまには悪いけど、正直このサイズのくまくまは、可愛いと言うより怖い。
『ど、どうしましょう!?ずっとこのままだったら!?』
柴田さんが眼をグルグルと回しながらパニクる。
『だ、大丈夫だよ。すぐに戻るって』
『そうでしゅよ!そうだ!こういう時こそ、みんなで〝もふもふぎゅっぎゅ〞しましょう!』
くまくまがそう言うと、ぬいぐるみたちは私のことを囲んだ。5つの巨大なぬいぐるみたちが、私のことを見下ろす。
…普段なら、こうして私の周りに集まってくるぬいぐるみたちに物凄く癒される…けど。今は、なんか怖い。
すると。
『ママ』
『ママン』
『マ、ママ!』
『母上』
『ママさん』
『ちょっ、まっ……?!』
『『『『『もふもふぎゅっぎゅ♪』』』』』
そびえ立つ壁のようにおおきなぬいぐるみたちが、一斉に私のところに向かってきて、私にむぎゅうううっっ!!と抱きついた。というか、押し潰されていく。
『おぶぉおおおお!!!?』
もふもふふあふあなぬいぐるみたちに思いきり抱きつかれると、柔らかい体に私の全身が沈む。鼻も口も、塞がれる。
ぐふっ…息が…苦しい……
息ができなくて、意識が遠くな…─────
「うっ…ううっ~…むぶっ……!!ぶはぁっ!」
顔を覆う息苦しいものを掴み、それを思いきりひっぺがすと、私は上半身を勢いよく起こした。
「はーっはーっはーっ……あれ?」
気づくとそこは布団の上。私の右手には、爆睡するうさろんが握りしめられていた。
…どうやら私は、夢を見ていたようで。息苦しくなったのは、うさろんが時々する、寝てる時に寝ぼけながら私の顔面に謎に貼り付くやつだった。
「はぁ~…なんだ夢か~…」
と、私が溜め息を吐いていると、ぬいぐるみたちが目を擦りながら起きてきた。
「ど~かしましたかぁ、ママ~…」
と、くまくまが言った。いつものサイズの、もふもふで可愛いくまくまだ。
私はぬいぐるみたちを抱きしめ、いつもの『もふもふぎゅっぎゅ』をした。ふあふあでやわわかい、ぬいぐるみたち。
「はぁ~…これよこれ。壁みたいに大きいぬいぐるみは、もうこりごりだわ~…」
「ん?壁…が、なんでしゅか?」
「うんん、何でもなーい」
ぬいぐるみは、ほどよい大きさがいいなと私は思いながら、ぬいぐるみたちをぎゅーっと抱きしめたのだった。