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ぽっちゃり転生は二度美味しい! ~武術と料理で異世界無双~  作者: 西山暁之亮
第六章 死闘? 何それ美味しいの!?
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第64話 万年反抗期は遅れてやってくる

 いきなり声が響いた。

 男の声だ。

「!? また新手!?」

 ノアがそう叫んだ、その時。

 ドッ! と。

 僕たちを囲む背後隊列の一部が、いきなり吹っ飛んだ。

「何だ!? 何が――ぎゃ!」

 ブゥン! という鈍い音。

 その度に儀典局の兵士たちの体の一部が吹き飛んでいる。

「さ、散開! 防陣を――」

「遅え」

 三度振り抜かれたのは分厚い鉄板。

 いや、剣だ。

 ビックリするほどに大きい剣が、固まった兵士たちを次から次へと薙ぎ倒している。

「何だ!? 貴様何者だ!?」

「うるせえ。まとめてとっとと死ね」

 またしてもブゥンという音。

 舞い上がる砂埃を影にして、数人の胴から上が飛んだ。

 ものすごい攻撃だ。

 でもこの攻撃、僕はよく知っている。

 儀典局の連中が恐れをなして離れてゆく。

 たった四振り。

 それだけで陣形を崩して、形成を逆転させた。

 兵士が慌てふためき引いてゆくその中を、悠々と歩み寄ってきたのは大柄な男。

 肩に担いでいるのは、「こいつならドラゴンも一撃だ!」と言わんばかりの大剣。

 そいつはツンツン頭でいつも不機嫌そうにしている、万年反抗期の男――



「ギル!」

「意外とピンピンしてやがんな。割って入らない方がよかったか?」



 助けに来てくれたのはなんとギルだった。

 ここ数日顔を見せず、見せても部屋に篭って寝ていたのに!

 あ、でもちょっとだけ顔がやつれてる。

 君確か腹痛じゃなかったっけ? 大丈夫なのか?

「ギル。君が来てくれるだなんて」

「俺だって来たくなかった。腹痛かったからな。だがモカがミタマを部屋に連れてきてよ。腹にビタビタ札貼りやがった」

 そう言って捲り上げる腹には、やたらめったら貼られたミタマの札。

 確かに彼女の札は効くけど、それって腹痛に効くの?

「モカのヤツ、寝てる俺に向かって今回仕事してないんだから少しは役に立てとかぬかしやがる。嫌ならカーラのババアとエステル呼ぶぞとか言われたからたまらねえ。仕方なく……そう、仕方なく来たんだ」

「モカが」

「これでも病人だぞ。あいつ兄貴を何だと思ってやがるんだ」

 何だかその光景、目に浮かぶようだ。

 いっつもツンツンしてカーラさんにも僕にも反抗するくせに……存外、ギルドメンバーの言う事は素直に聞くんだ。

 ……そういえば。思い出したぞ。

 僕と最初戦った時も「()()()()()()()」とか言ってた。

 あんまり帰ってこない上に、帰ってきたら帰ってきたで誰とも話さず皆を眺めていただけだったけど――彼も家族を大切にしていたってことか。

 それにしても見事な奇襲だった。

 彼のような超重武器は元々、こうやって使うのが正しいんだろう。

 雑兵をまとめてぶっ飛ばす、ただそれだけに特化したもの。

 言わば彼は、()()()()()()()()()()

 そりゃ僕に勝てないわけだけど、数に強いと言うのは凄まじいアドバンテージだ。

 敵が固まっていればいるほど、背後からであればあるほど効力が増す。

 つまりこのシチュエーション、奇しくもギルの独壇場というわけだ。

「高みの見物で終わるかと思いきや、変なところでピンチになりやがって。ああくそ、腹痛え。俺はちゃんと助けたからな。貸しだぞ先生」

「それはいいけどギル、君――」

「あ?」

「僕のこと初めて先生って呼んでくれた。嬉しいかも」

「ケッ! 何呑気なこと言ってやがる。まだあのイカれたオッサン、ピンピンしてんだぞ!」

 プイ、とそっぽを向くけど――顔をちょっと頬が赤かったのは見逃さなかったからな。

 何だこいつ。

 やっぱりツンデレの類か。

「助かりましたギル。貴方が助けに来てくれるなんて」

「……別にいい。アンタも『灰狼』のギルド章持ってるんだ。しゃんとしろ。剣を持て。怖いなら俺の後ろに隠れてろ」

 おーい。

 なんだそれ。

 僕と対応がえらい違うじゃないか。

 なんでぶっきらぼうだけど優しい兄貴ヅラしてんの?

 ……なんだか、ようやくギルって男がわかってきたぞ。

 ギルは家族思いというか、弟妹思いなんだ。

 ノアの事は多分妹だ何だと思い込んでるんだと思う。

 それが証拠に、大剣の刃を彼女には向けないように担いでいる。

 僕にはおもっくそ切っ先向いてるんですけどね!

 で、保護者枠のカーラさんと僕には反発すると。

 ……ガチの反抗期かよ!

 なんて言うとまた臍を曲げそうだから黙っておいた。

 それよりもあのファビオだ。

 これで詰みかと思ったらひっくり返されて、顔がヒクヒクしてやがんの。

 たった四振りの奇襲だったけど、儀典局の兵士たちは三分の一も減っていた。

 いい気味だ。

 ざまぁみろ。

「おいオッサン。黙って聞いてりゃ俺たちをゴミだの何だの勝手なこと言いやがって。テメエらは全員なます斬りにしてやるから覚悟しろよ」

「また下品な奴が出てきたか。野蛮で粗野な奴だ。貴様のような横槍を入れる奴が一番腹立たしい!」

 本気で怒ったのか、ファビオの背に魔力の混じった怒りのオーラのようなものが揺らいでいた。

 僕たちにゆっくり近づいてくるその中で、近くの部下の首を掴み、その生命力を吸ってさらに力が増している。

 その顔は怒り狂って、もう人の作る表情じゃなかった。

 目はギラギラと赤く輝き、口からは瘴気のようなものが吐き出される。

 完全にモンスターと化したファビオ。

 盾にしていた部下達の生命力を次々と吸い取って、少しずつだけど体が肥大化している。

「貴様らは皆殺しダ、このクズドモメ! 国の汚点ハ、全テ潰ス!!」

「……異世界にもあまのじゃくって言葉あるのかな」

「何か言ったか先生」

「いーや何も(無いみたい。良かった)」


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[一言] ごめんギル。俺、実は君が鎧の中身だと思ってたんだ(汗)
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