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ぽっちゃり転生は二度美味しい! ~武術と料理で異世界無双~  作者: 西山暁之亮
第六章 死闘? 何それ美味しいの!?
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第58話 怒涛のラッシュフルコース

「!?」

「この家宝の剣はミスリル合金で出来ている! 魔法も切り裂く特別製だ!」

 もらった、とばかりにノアが切り返しを上段に構える。

 真っ向両断を狙うつもりだろうか。

 絶好のタイミング。

 けど、僕は知っている。

 あの黒い鎧の狙いは『掴む』こと。

 鎧の力で作り出す魔法の武器も矢も投げやりも最後はそこに集結する。

 これは相対した僕だからわかること。

 ノアは分かっていても経験が無いから、咄嗟の反応はできないはず。

 だから絶対に虚を突かれる!

 そうしているうちに、ノアの鋭い剣気のようなものが一瞬ブレた。

 何故なら鎧が大剣をパッと離して放棄したからだ。

 次の瞬間、鎧の男の手にはいつの間にか魔法でできたショートソードが握られていた。

 ヒュッという音のすぐ後で、ギギギ、ジジジ! という音がする。

 ノアの真っ向両断の一撃を、鎧のショートソードが受けた。

「これも王国騎士の流儀!? 何者だ!? 名を名乗れ!」

 ノアがそう誰何した瞬間。

 彼女の剣を受けていた魔法のショートソードが、僅かに受け流す方へ傾き、パッと消えた。

「しまっ――!」

 ノアの体が崩れる。

 僅かに前のめりになって、踏ん張る。

 その刹那の隙が致命的。

 鎧の右手が紫の光を帯びて怪しく光る。

 このまま手を伸ばせば、すぐノアの胸元に――



「このスケベ野郎!」



 剣士の戦いに水を刺すのは悪いとは思った。

 けれど、今は黙って見てる場合じゃない。

 呼びかけて意識が逸れたのか。鎧の男はハッとなって僕の方を見た。

 でも、既に遅い。

 僕の中段回し蹴りは既に発射体制になっている。



 パァン!



 ガラ空きの胴に、体重を乗せた右の蹴りが入る。

 足の甲とはいえ、僕の足はスキルによって鋼のようになっている。

 棍棒で振り抜かれたような衝撃が入るはず。

「グウウウ!」

 くぐもった声が聞こえた。

 タイミングバッチリ。

 纏めたバットを数本へし折るくらいのダメージは与えた……かと思ったけど、奴はタフだった。

 ズザザザ、と衝撃で下がるだけで何ともなさそう。

 ムエタイのように肘を上げて構えたまま、お腹の衝撃を堪えている。

「まだまだぁ!!」

 足を素早く引いて、右足が地面に触れた瞬間力を入れる。

 左足を軸足に、追い突きを発射する。

 一歩踏み込んだこの突きは、遠間の敵にもしっかりヒットする。

 鎧が後退りする――その前に、拳を顎へと伸ばす。



 ゴガン!



 クリーンヒットした。

 けど、こんなんでくたばらないのは知っている。

 右足に力を入れる。

 ノアの逆袈裟斬りのように、下から斜め上へと蹴り上げる『威』を見せる。

 当然鎧の男もそれは察知。

 左腕に何かを顕現させる。

 現れたのは小盾だった。

 こいつ、武器だけじゃなくて盾も作れるのか。

 確かに打撃に対して盾は有効な防具。

 相手の攻撃を巻き込んで横倒しにすれば、相手は無防備になる。俗に言うパリィというやつだ。

 けど、それじゃあ僕には足りない。

 自分の中に修めた武術はその程度では止まらない!

「ちぇりああああああああ!!」

 股関節の筋肉を締めて、膝の軌道を変える。

 折り畳まれた脚は伸びることなく、小盾の前を通過した。

「!?」

「ひっかかったな!」

 軸足に力を込める。

 振り抜く方向とは逆方向に体をひねる。

 右足は鎧の男の正中に対してS字カーブを描く。

 やがて足は真っ直ぐ天へ伸び上がって、ピタリと止まった。

 ここから放つのは――渾身のかかと落とし!



 バキリ!

 メキョッ!



 僕の踵は兜の鼻っ面に思いっきり突き刺さった。

「ぐがぁっ!」

 男が前のめりになる。

 オイシイ位置だ。

 膝を突き刺してもいいけど、僕は――

「思いっきり! ブン殴る!」

 足の着地と同時に腰を回す。

 左腰あたりから、右上に。

 居合い抜きのような裏拳。



 ガァァァァン!



 ひしゃげた兜の右頬に、クリーンヒット。確かな手応えがあった。

 さしもの鎧もこれには堪えたようで、仰け反って吹っ飛んだ。

 兜も外れて、闘技場の砂場にドシャァ! と落ちる。

 鎧の男は大の字になってピクピクしていた。

「ケント!」

 走り寄ってきたノアが剣を構えたまま横に立った。

「ありがとう。貴方には助けられてばかりです」

「気にしないで。あの鎧相手なら二人がかりでも全然卑怯じゃないからね」

「……それにしてもケントの体術は凄まじい。あの蹴り技は?」

「かかと落とし。そのまんまだけど、強い技だよ」

 かかと落としは有名だから、誰でも知っているだろう。

 空高く上げたカカトを、相手の脳天に叩きつける技。

 大分前に亡くなってしまったけど、アンディ・フグというK-1の選手がこれを多様していた。

 僕も動画サイトで彼の戦う姿を見て、何度も真似てみては背中から転んでいた。

 因みにテコンドーだとネリチャギという同じ挙動のケリがあるけど、あれは足の裏で蹴るものだからね。

 話戻して、このかかと落とし。

 ロマン技ではないかと言われるけど、これはこれで実用性がある。

 威力もそうだけど、一番の利点は()()()()()()()()()()()()()蹴り技であること。

 相手から見ると、突然内側から伸び上がった足が顔を打つ――かと思いきや脳天に突き刺さる。

 蹴り上がる足を防御しようとしたら、全く違う場所から打たれるのだからある意味防御無視だ。

 さらにこの技はコンビネーションの最後の技ではなく、ここからすぐに次の攻撃に移せるのも特徴の一つ。

 故アンディ・フグはここから右のローキックを打ち込み、数々の勝利を掴み取ってきた。

 僕は殴った。

 体を捻って、全体重を回転に乗せた裏拳。

 怒涛の連続技に、鎧も大の字に寝転んで――


 ――はい?

 おいおい。

 おいおいおいおいおい!

 何で!?

 冗談じゃないぞ!?


「け、ケント! 鎧の男が!」

「うっそだろ! これで起き上がるのか!」

「かかと落としはエクササイズにもいいんだよ。一日30回でふくらはぎの血行も良くなる」

「……姿を見られたらメイド達が止めに入りそうです」


「面白かった!」「続きが気になる!」「ナイスカロリー!」などありましたら、ブクマや★★★★★などで応援いただけると嬉しいです。

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